Appleの「バッテリーゲート」問題を巡る集団訴訟が、英国で新たな局面を迎えた。英控訴院は、消費者権利活動家ジャスティン・グットマン氏が提起した訴訟を正式に進めることを許可し、Appleは裁判で弁護を求められる立場となった。
問題の発端は、iPhone 6シリーズやiPhone 7シリーズなどのモデルで、Appleがバッテリーの劣化に伴い意図的に性能を抑制していたとされる件だ。同社は2017年にこの件を認め、バッテリー交換費用の値下げ措置を講じたものの、英国の消費者団体はこれを不十分と主張している。
現在、Appleは約1,100億円の支払いを迫られる可能性があり、影響を受けたとされる2,400万人の英国ユーザーが訴訟に参加できる状況だ。今後の裁判の行方が注目される。
iPhoneバッテリーゲート訴訟の経緯と影響を受けたユーザー

iPhoneバッテリーゲート問題は、Appleが2017年に一部のiPhoneモデルで意図的に性能を制限していたことを認めたことから始まった。バッテリーの劣化が進むと、システムが予期せぬシャットダウンを防ぐために処理速度を落とす設計となっていたが、この仕様についてAppleは十分な説明を行っていなかった。この問題が発覚した後、同社は謝罪し、バッテリー交換費用を期間限定で値下げする対応を取った。
今回の英国における訴訟では、iPhone 6シリーズやiPhone 7シリーズなどを使用していた約2,400万人の消費者が影響を受けたとされる。集団訴訟の提起者であるジャスティン・グットマン氏は、Appleがバッテリーの劣化を理由に意図的な性能抑制を行ったことを「不当な行為」と主張し、約1,100億円の損害賠償を求めている。一方、Appleはこの訴えを退けようとしたが、英国控訴院は訴訟の継続を認める判断を下した。
バッテリーゲート問題を受け、AppleはiOSのアップデートでバッテリー状態を可視化する機能を追加し、ユーザーがパフォーマンス管理を選択できるようにした。しかし、一部の消費者は、根本的な問題への対処が不十分であるとし、今回の訴訟がAppleの責任を問う重要な機会になると見ている。今後の裁判の進展次第では、英国のユーザーに大きな影響を与える可能性がある。
Appleの対応とその限界 バッテリー劣化を巡る課題
Appleはバッテリーの劣化がデバイスの動作に影響を及ぼすことを認めたうえで、バッテリー管理機能の強化や交換費用の値下げといった対策を講じた。具体的には、iOSのアップデートで「バッテリーの状態」機能を追加し、ユーザーがバッテリーの劣化具合を確認できるようにした。また、iPhoneの最大パフォーマンスを維持するか、バッテリーの寿命を優先するかを選択できるようになった。
しかし、これらの対応にも限界がある。特に、バッテリー交換プログラムは一時的なものであり、現在では通常価格に戻っている。また、バッテリーの劣化を根本的に防ぐ方法はなく、ユーザーがデバイスのパフォーマンスを維持するにはバッテリー交換が不可避となる。これに対し、一部のユーザーは「新品のiPhoneを購入させるための戦略ではないか」との疑念を抱いている。
現在のAppleのバッテリー管理機能は、確かに以前よりも透明性が増しているが、それでも完全にユーザーの不満を解消するには至っていない。特に、古いiPhoneモデルを長期間使用するユーザーにとっては、性能低下を避けるための選択肢が限られている点が問題視されている。今回の訴訟がどのような決着を迎えるかによって、Appleの今後のバッテリー管理戦略にも影響を与える可能性がある。
今後の裁判の行方とAppleの対応が与える影響
英国控訴院が訴訟の継続を認めたことで、Appleは今後、法廷での弁護を余儀なくされる。訴訟の結果によっては、Appleが英国の消費者に対し1,100億円の支払いを求められる可能性がある。この金額は、同社にとって大きな負担とはならないものの、他国で同様の訴訟が続く可能性を示唆するものでもある。
米国ではすでに和解金の支払いが行われており、Appleは過去に同様のケースで最大5億ドルの支払いを余儀なくされた。今回の英国での訴訟の行方次第では、他国でも集団訴訟が相次ぐ可能性がある。消費者の間では、Appleの対応が十分であったのか、それともさらなる補償が必要なのかについて議論が続いている。
Appleはこの問題に対し、新たなiPhoneではスマート充電機能を導入するなど、バッテリーの劣化を最小限に抑える工夫を行っている。しかし、今回の訴訟が企業としての信頼性に影響を与える可能性も否定できない。Appleがこの問題にどのように対応し、消費者の信頼を回復できるのかが今後の焦点となるだろう。
Source:BGR