Appleが開発したC1モデムがiPhone 16eに搭載され、その性能テストが実施された。結果、5G通信速度は従来のQualcomm製モデムと同等ながら、消費電力が最大25%削減されていることが確認された。
AppleはIntelのモデム事業を10億ドルで買収し、独自の5Gモデム開発に5年以上を費やしてきた。当初は開発難航やプロジェクト中止の噂もあったが、C1はApple Siliconの一環として完成した。特に省電力性能は実験室レベルだけでなく、実使用環境でも大きな差を示し、iPhone 16eのバッテリー持続時間向上に貢献している。
C1モデムの実力が証明された消費電力テスト
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AppleのC1モデムは、iPhone 16eに搭載されることで実際の使用環境でのテストが可能になった。中国のYouTubeチャンネル「Geekerwan」が行った検証によると、C1は従来のQualcomm製モデムと同等の5G通信速度を発揮しながらも、電力消費の大幅な削減が確認された。
特に、電波強度の高い環境ではC1の消費電力が0.67ワットで、Qualcomm製モデムを搭載するiPhone 16の0.88ワットより約24%少なかった。また、電波が弱い環境でもC1は0.67ワットの消費に抑えられ、iPhone 16の0.81ワットと比較すると約17%の削減となった。これはAppleが主張していた「25%の省電力化」にほぼ一致する結果となっている。
実際の使用時間にも違いが現れた。5G接続での動画ストリーミングでは、iPhone 16eが7時間53分の再生が可能で、iPhone 16より53分長い駆動時間を記録した。さらに、iPhone 16 Proと比較するとiPhone 16eの方が約1時間長く再生できる結果となった。これにより、C1モデムがバッテリー持続時間の向上に寄与している可能性が高いことが示された。
AppleがmmWave 5Gを切り捨てた理由とは
C1モデムは低消費電力という大きな強みを持つ一方で、mmWave 5Gをサポートしていない。これはAppleの戦略的な判断と考えられる。実際、米国市場においてもmmWaveの普及率は低く、さらにその他の地域ではほとんど利用されていないのが現状である。そのため、AppleはmmWave対応を省くことでチップ設計を簡素化し、消費電力の最適化を優先したと考えられる。
mmWave 5Gは理論上の通信速度が非常に高いが、実際の使用環境では障害物に弱く、建物内や地下ではほとんど恩恵を受けられない。そのため、多くのユーザーにとって重要なのは、Sub-6GHz帯の5Gネットワークにおける安定性とバッテリー持続時間のバランスとなる。この点で、C1モデムは電力効率を向上させながら十分な5G通信速度を維持できる設計となっている。
Appleはこれまでにも、ユーザー体験を重視した独自のアプローチを取ってきた。mmWave 5Gを採用しなかったのも、単に省電力化のためではなく、実際の使用シナリオを考慮した結果と見るべきだろう。結果として、C1モデムを搭載するiPhone 16eは、多くのユーザーにとってバッテリー持続時間というメリットを提供する選択肢となった。
次世代C2モデムはどう進化するのか
Appleはすでに次世代のC2モデムの開発を進めていると報じられている。C1モデムが実証した省電力性能をさらに高めつつ、通信速度や対応周波数の最適化が期待される。特に、mmWave 5G非対応のまま進化するのか、それとも次世代ではmmWaveにも対応するのかが注目されるポイントだ。
また、AppleはこれまでQualcommからモデムを調達してきたが、C1の成功を受けて、完全な独自モデムの開発へと舵を切る可能性もある。Qualcomm製モデムとの比較では、C1は消費電力で優位に立ったものの、今後のチップ開発次第ではAppleがさらなる差別化を進めることも考えられる。
C2モデムが実現することで、Appleはモデム技術の完全内製化を目指すだけでなく、iPhoneの電力効率をさらに向上させる可能性がある。バッテリー持続時間の向上に直結するこの進化は、次世代iPhoneの魅力を大きく左右する要素となるだろう。
Source:AppleInsider