Thermal Grizzlyが、IHS(ヒートスプレッダー)を取り外したプリデリッド版のAMD Ryzen 7 9800X3Dを提供開始した。通常、デリッドはユーザーが自己責任で行うものだが、同社は高精度な専用ツールを用いた処理を施し、2年間の保証を付与。

価格は712.95ドルで、標準版より約233ドル高いが、安全性と性能向上を求めるユーザーにとって魅力的な選択肢となる。さらに、デリッド後のCPUは専用の冷却ソリューションとの組み合わせが推奨されており、購入者には検証データやテスト結果も提供される。

Thermal Grizzlyが提供するデリッド済みRyzen 7 9800X3Dとは

Thermal Grizzlyは、高性能冷却を求めるユーザー向けに、デリッド済み(IHS取り外し済み)のAMD Ryzen 7 9800X3Dを発売した。通常、デリッドは自己責任で行う必要があり、失敗するとCPUが故障するリスクがある。しかし、同社はこの作業を専門の技術で行い、さらに2年間の保証を付与している点が特徴だ。

このデリッド済みRyzen 7 9800X3Dには、取り外されたIHSや検証データ、ベンチマーク結果などが同梱される。特に、Cinebench R23での動作確認が行われ、安定したパフォーマンスが保証される形となっている。価格は712.95ドルで、標準版(MSRP 479ドル)よりも高価だが、精密なデリッド作業と保証の安心感が加わることで、一定の需要が見込まれる。

Thermal Grizzlyは、今後Ryzen 9 9950X3Dのデリッド版も展開する予定だ。これにより、AMDの3D V-Cache搭載モデルにおいて、冷却性能を向上させたいユーザーにとって、より選択肢が広がることになる。

デリッドのメリットとリスク 既製品と何が違うのか

デリッドを施す最大の理由は、CPUの発熱を抑え、より高いクロックでの動作を安定させるためだ。AMDの3D V-Cache搭載モデルは、高密度なキャッシュ構造の影響で発熱が大きくなる傾向がある。これに対し、IHSを取り外しダイレクトダイ冷却を適用することで、熱伝導効率を向上させ、オーバークロックや高負荷時の安定性を向上させる効果が期待できる。

一方で、デリッドにはリスクも伴う。IHSを取り外す際にダイや周辺コンポーネントを傷つける可能性があり、失敗するとCPUが使用不能になる。また、保証対象外となるため、失敗時の交換や修理は困難となる。そのため、デリッドを行う際は高い技術と適切なツールが求められる。

Thermal Grizzlyのデリッド済みRyzen 7 9800X3Dは、これらのリスクを回避しつつ、デリッドのメリットを享受できる点が強みだ。さらに、専用ツールで精密な作業が行われ、デリッド後の検証結果も提供されるため、安全性が向上している。追加コストはかかるが、CPUの熱問題に悩むユーザーにとっては、合理的な選択肢となるだろう。

推奨される冷却ソリューションとコストの課題

デリッド済みRyzen 7 9800X3Dを最大限活かすためには、適切な冷却ソリューションが不可欠だ。Thermal Grizzlyは、ダイレクトダイ冷却に最適化された「Mycro Direct-Die」や「Mycro Direct-Die Pro」の使用を推奨している。これらは、IHSを介さずに直接ダイと冷却プレートを接触させることで、効率的に熱を放散できる設計となっている。

ただし、高性能な冷却パーツは価格も高く、追加コストが発生する点が課題となる。デリッド済みのRyzen 7 9800X3D自体が700ドルを超える価格であるため、冷却ソリューションを含めるとさらにコストが膨らむ可能性がある。また、一般的なCPUクーラーとの互換性も考慮する必要があり、セットアップの難易度が上がる点も注意が必要だ。

それでも、デリッドによる冷却効果を最大限発揮すれば、長時間の高負荷作業やオーバークロック環境での安定性が大幅に向上する。特に、発熱が問題となりやすい3D V-Cache搭載モデルでは、冷却性能の強化がパフォーマンス向上に直結する可能性がある。追加コストやセットアップの手間を考慮しても、発熱対策を重視するユーザーにとっては十分に魅力的な選択肢となるだろう。

Source:Wccftech