AMDは、Ryzen CPUおよび対応マザーボード向けに最新のチップセットドライバー(バージョン7.02.13.148)をリリースした。今回の更新では、Windows 11およびWindows 10におけるアプリケーション互換性が改善され、新たに「AMD Application Compatibility Database Driver」が追加された。
さらに、Microsoft Plutonセキュリティプロセッサのサポートが強化されており、Pluton未搭載のデバイス向けに「nullドライバー」も提供される。これにより、最新のAMD Copilot+ PCを含む環境でのシステムの安定性とセキュリティ強化が期待される。
一方で、既知の問題として、チップセットインストーラーのバージョンダウングレードが困難になるケースや、非英語OSでのドライバー名表示の不具合などが報告されている。これらの改善を含め、AMDは今後も互換性向上を進める方針だ。
AMDの新チップセットドライバーがもたらすアプリ互換性向上の仕組み

AMDが新たに追加した「AMD Application Compatibility Database Driver」は、Windows 11およびWindows 10環境でのソフトウェアの動作を最適化する役割を果たす。このドライバーは、特定のアプリケーションとシステムの間で互換性問題を解消するために設計されており、AMD製プロセッサを搭載したPCで発生するソフトウェアの誤作動や起動失敗のリスクを軽減する。
特に、旧バージョンのソフトウェアや特定のゲームタイトル、業務アプリケーションにおいて、安定した動作環境を提供することが期待される。Windows OSの進化とともに、ハードウェア側の最適化が求められるケースが増えている。
これまでは、CPUやGPUのドライバー更新がパフォーマンスや互換性の調整を担っていたが、今回のようにアプリケーションの互換性そのものを制御するドライバーが追加されることは、より広範なソフトウェア対応の向上につながる可能性がある。
特に、AMDの新しいディスプレイドライバー管理ツール「AMD Image Inspector」との連携によって、グラフィックス関連のトラブルシューティングが容易になることも注目すべきポイントだ。ただし、この新機能がどの程度の影響を与えるかは、ユーザーの利用環境やソフトウェアの種類によって異なる。
現時点では具体的な改善事例は明らかになっていないが、今後のフィードバックやAMDのアップデートによって、さらに機能が強化される可能性がある。ソフトウェアの互換性問題を抱えているユーザーにとっては、この新ドライバーが解決策となるかもしれない。
Microsoft Plutonのサポート強化が意味するもの
今回のチップセットドライバー更新には、Microsoft Plutonセキュリティプロセッサ向けの新たなドライバーが含まれている。Plutonは、従来のTPM(Trusted Platform Module)よりも深いレベルでセキュリティを確保する技術であり、特にクラウド認証やデータ保護機能の強化に寄与する。
この新ドライバーによって、AMD Copilot+ PCのPluton対応が拡充され、より安全なシステム環境が提供されることが期待される。Plutonは、IntelのPTT(Platform Trust Technology)と同様に、ハードウェアレベルでセキュリティを管理する仕組みだが、Microsoftが主導して設計している点が特徴的だ。
AMDの新ドライバーは、このPlutonの機能を最適化し、セキュリティ強化を図る目的で追加された。特に、Pluton非対応のデバイス向けに「nullドライバー」も用意されており、非対応機種でのエラー回避や互換性確保が可能になっている。
一方で、Plutonの普及は賛否両論がある。セキュリティの向上は歓迎されるものの、一部のユーザーはハードウェアレベルでの管理が厳格化されることで、カスタマイズ性が制限される可能性を懸念している。
特に、独自のファームウェアやカスタムOSを利用する層にとっては、Plutonの影響がどの程度及ぶのかが気になるポイントだ。とはいえ、Windowsのセキュリティ要件が年々厳しくなる中で、Plutonのサポートが強化される流れは避けられない。今後、より多くのPCがこの技術を活用することになるだろう。
既知の問題とアップデート後の注意点
新しいチップセットドライバーにはいくつかの改善が施されているが、同時に既知の問題も報告されている。その一つが、チップセットインストーラーのバージョンダウングレードが制限される点だ。現在のバージョン「7.xx.xx.xx」をインストールすると、旧バージョン「6.xx.xx.xx」以前へのロールバックができなくなるため、古いドライバーを利用する必要がある場合には注意が必要だ。
回避策としては、最新のインストーラーをアンインストールした後、特定のフォルダを削除してから旧バージョンを再インストールする方法が推奨されている。また、非英語OS環境において、一部のドライバー名が英語のまま表示されるという問題も発生している。これは操作上の影響は少ないものの、システム設定を変更する際に混乱を招く可能性がある。
さらに、Ryzen PPKGのインストールやアップグレードが正常に行えないケースも報告されており、特定の環境では注意が必要だ。新しいドライバーを導入することで、システムの安定性やパフォーマンスが向上する可能性がある一方で、これらの問題が発生するリスクも伴う。
そのため、アップデートを行う前には、システムのバックアップを取るなどの対策を講じることが望ましい。特に、業務用途や重要なデータを扱う環境では、不測の事態に備えて慎重な対応が求められる。今後のアップデートでこうした問題が修正されることが期待されるが、現時点ではユーザー側の注意が必要だ。
Source:Neowin