Windowsの定番アプリ「メモ帳」と「ペイント」にAI機能が追加された。基本的な機能は引き続き無料だが、AIを活用した高度な機能を利用するにはMicrosoft 365のサブスクリプションが必要となる。例えば、メモ帳ではテキストの自動リライト、ペイントでは画像の生成や背景変更が可能になるが、無料で利用できるのは背景除去機能のみ。

Microsoft 365の個人プランは月額10ドル、ファミリープランは月額13ドルで提供されるが、家族全員がAIを使えるわけではない点にも注意が必要だ。また、AI機能には使用制限があり、月60クレジットの上限を超えると翌月まで待つ必要がある。さらに高度なAI機能を求める場合、月額20ドルのCopilot Proプランへのアップグレードが推奨される。

AI技術の発展により、これまで無料だったデスクトップアプリもフリーミアムモデルへと移行しつつある。今後、Microsoftの他のアプリにも同様の有料AI機能が導入される可能性が高く、ユーザーは利便性とコストのバランスを考慮した選択を迫られることになる。

AI搭載のメモ帳とペイントは本当に必要か 利用シーンを考える

Windows 11の「メモ帳」と「ペイント」にAI機能が追加されたが、これらのアプリでAIがどれほどの価値を発揮するのかは利用者の用途による。メモ帳のAIは文章のリライトに特化しており、文体の変更や短縮、長文化などを簡単に行える。

これにより、素早くメモをまとめたり、異なるトーンの文章を試すことができるが、既に高度なテキスト編集が可能な他のAIツールと比較すると、用途が限られる可能性がある。一方、ペイントのAI機能は、画像の生成や背景の変更が可能であり、これまでシンプルな描画ツールだったペイントに新たな可能性をもたらす。

しかし、AIによる画像生成は高度なグラフィックソフトにも搭載されており、ペイントのような軽量アプリでどれだけ実用的に使えるかは未知数だ。特に、クリエイターやデザイナーにとっては、ペイントの機能では物足りないと感じる場面もあるだろう。

これらのAI機能が最も活躍しそうなのは、簡単な文章作成や画像編集を手軽に済ませたいユーザー層だ。例えば、メールの文章を整えたり、プレゼン資料用のシンプルな画像を作る際には便利だろう。しかし、これらの機能を利用するためにMicrosoft 365のサブスクリプションを契約する価値があるかは、個々のニーズ次第と言える。

AI機能は無料で提供できないのか Microsoftの狙いとは

Microsoftは、これらのAI機能を無料ではなく、Microsoft 365のサブスクリプションを通じて提供する方針を取っている。その背景には、AIの開発コストやクラウドの運用費用が関係していると考えられる。AIを活用するためには大量のデータ処理と計算能力が必要となるため、継続的なコストが発生する。

そのため、無料で提供するのではなく、月額料金を支払う形でユーザーに負担を求めているのだろう。また、MicrosoftはCopilot AIの利用制限として、Microsoft 365の個人プランとファミリープランにおいて、それぞれ月60クレジットまでという上限を設けている。

この制限により、頻繁にAI機能を利用するユーザーは、さらに上位のCopilot Proプラン(月額20ドル)へのアップグレードを検討せざるを得なくなる。この仕組みは、AI機能を積極的に使うユーザーをサブスクリプションのより高額なプランへ誘導する戦略の一環と言える。

しかし、AI技術が普及するにつれて、同様の機能を提供する無料または低コストの代替サービスが登場する可能性もある。例えば、オープンソースのAIツールや、無料で利用できるオンラインのテキストリライトツールなどがすでに存在する。これらと比較したときに、MicrosoftのAI機能がどれだけの差別化を図れるかが今後の鍵となるだろう。

Windows標準アプリの未来 無料のままでいられるのか

今回のAI機能有料化は、Windowsの標準アプリにおける新たな収益モデルの第一歩と考えられる。これまで、メモ帳やペイントのようなWindows標準アプリは、OSの一部として無料で提供されるのが当たり前だった。しかし、AI機能が追加されたことで、それらのアプリが「基本機能は無料だが、高度な機能は有料」というフリーミアムモデルへと移行し始めている。

この流れが続けば、今後他のWindows標準アプリにも有料AI機能が組み込まれる可能性がある。例えば、Microsoft EdgeではすでにCopilotが組み込まれており、AIによるサジェスト機能や文章生成が活用されている。今後、エクスプローラーやメールアプリなどにもAIが導入され、特定の便利機能を利用するにはサブスクリプションが必要になることも考えられる。

ユーザーにとっての課題は、「Windows標準アプリをこれまで通り無料で使えるのか」という点だ。現時点では、基本機能は引き続き無料とされているが、今後のアップデート次第では、無料で利用できる範囲が狭まり、有料機能が増える可能性もある。

特に、AIが今後のソフトウェアの標準機能となれば、「AIを使わないと不便」と感じる場面が増えるかもしれない。そのときに、無料のままでどこまで使えるのかが、ユーザーにとっての大きな関心事となるだろう。

Source:ZDNET