iPhone 16eにはMagSafeが搭載されていないが、その理由として「Apple製C1モデムとの干渉」が疑われていた。しかし、AppleInsiderの分析によれば、物理的にその可能性は極めて低い。
磁場の強さは距離の2乗に反比例する「逆二乗の法則」に従い、MagSafeの磁力はC1モデムに影響を与えるには弱すぎる。また、過去のQualcomm製モデムでは干渉が問題にならなかった点も考慮すると、この説は根拠に乏しい。
むしろ、MagSafe省略の本当の理由はコスト削減だと考えられる。高価なMagSafeマグネットを排除することで、iPhone 16eの生産コストを抑えた可能性が高い。
iPhone 16eのC1モデムとMagSafe干渉説の根拠は薄い
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MagSafeがC1モデムに影響を及ぼすという説は一部で広まっていたが、物理的にその可能性は極めて低い。AppleInsiderによれば、MagSafeの磁場強度は110.36ガウス(1mm距離)から15.44ガウス(11mm距離)まで急速に低下する。携帯通信に影響を与えるには最低でも500ガウス以上が必要とされ、これを大幅に下回るMagSafeの磁力では、C1モデムに干渉するとは考えにくい。
また、電波や磁場の影響を評価する際には「逆二乗の法則」が適用される。距離が2倍になると磁場強度は1/4になるため、MagSafeの磁力は本体内部のモデムに到達する頃には無視できるほど弱まっている。これまでQualcomm製のモデムで問題がなかったことを考えると、Apple独自のC1モデムにのみ干渉するという主張には説得力がない。
さらに、MagSafeの磁場が影響を与えるなら、他の電子部品やアンテナにも同様の干渉が発生するはずだ。しかし、iPhone 12以降のモデルではそのような報告はなく、Appleがそれを理由にMagSafeを省いたとは考えにくい。つまり、MagSafe非搭載の理由をモデム干渉に求めるのは論理的ではなく、より実際的な要因が関係している可能性が高い。
MagSafe省略の本当の理由はコスト削減か
iPhone 16eにMagSafeが搭載されなかった最大の理由は、Appleのコスト削減戦略にあると考えられる。MagSafeは単なる磁石ではなく、強力なネオジム磁石を均一に配置し、ワイヤレス充電と精密に連携するよう設計されている。Appleが採用する高品質なマグネットは製造コストが高く、1台あたり約2ドルと見積もられている。数百万台規模で生産されると、このコストが大きな影響を及ぼすことになる。
また、MagSafeを搭載するためには本体内部に専用のスペースを確保しなければならず、設計の自由度が制限される。AppleがiPhone 16eをコストパフォーマンス重視のモデルとして開発しているとすれば、MagSafeを省略して生産コストを抑えるのは合理的な判断だといえる。
さらに、AppleはMagSafe対応アクセサリーのエコシステムを拡大させてきたが、それをすべてのモデルに搭載する必要があるわけではない。過去のiPhone SEシリーズもMagSafe非対応だったことを考えると、iPhone 16eはMagSafeなしでも十分な市場価値があると判断された可能性が高い。結果として、MagSafe省略はモデム干渉とは無関係であり、コスト削減と製品差別化の一環と見るのが妥当だろう。
今後MagSafe対応ケースが登場する可能性
MagSafe非対応のiPhone 16eだが、今後サードパーティ製のMagSafe対応ケースが登場する可能性がある。過去にも、MagSafe非搭載のiPhone用に磁石を埋め込んだケースが販売されており、MagSafeアクセサリーを活用できるよう工夫された製品が市場に投入されてきた。
特に、MagSafe充電に対応したケースは需要が高く、ユーザーにとっては選択肢の一つとなるだろう。Apple自身がMagSafe対応のバッテリーパックやスタンドを販売しているため、iPhone 16eでもそれらを活用できるよう設計されたケースが登場するのは自然な流れだ。
ただし、ケースを通じてMagSafeを利用する場合、磁力が弱まる可能性があるため、充電効率が純正のMagSafe搭載機種よりも低下することは避けられない。それでも、MagSafeアクセサリーを活用したいユーザーにとっては十分な価値があるはずだ。今後、ケースメーカー各社の動向にも注目したい。
Source:AppleInsider