次世代のApple Watchがバッテリー寿命の大幅な向上を実現する可能性が浮上している。注目されているのは、Samsungが開発を進める全固体電池技術だ。従来のリチウムイオン電池を超えるこの技術は、高いエネルギー密度や充電速度の向上、安全性の向上が期待されており、同社は来年から量産を開始する計画を発表している。

AppleがSamsungの技術を採用すれば、Apple Watchシリーズ12やUltra 4の性能が飛躍的に向上する可能性があり、ウェアラブル市場に新たな潮流を生むだろう。

Samsungが掲げる全固体電池開発の新戦略

Samsung Electro-Mechanicsは、次世代バッテリー市場を見据えた全固体電池技術の開発に注力している。同社は酸化物ベースの固体電解質を活用し、小型バッテリーの試作を進めており、翌年には量産を開始する予定だ。

これにより、Apple Watchのようなウェアラブルデバイスに特化した高性能バッテリーの供給が現実味を帯びてきた。CESでのJang Deok-hyun氏の発言によると、同技術は業界屈指のエネルギー密度を誇り、従来のバッテリーと比較して高い信頼性を示すという。

しかし、全固体電池の開発には製造コストが高く、デバイス重量の増加も課題として存在する。これに対しSamsungは生産体制を強化し、早期の量産体制確立を目指している。同社がAppleの主要サプライヤーとして実績を積んでいることを考えれば、Apple Watchシリーズ12への導入が検討される可能性も高い。この技術は、従来のリチウムイオン電池を刷新し、業界標準を再定義する可能性を秘めている。

ウェアラブル市場における全固体電池の影響

全固体電池は、スマートフォンよりもウェアラブルデバイスへの適用が期待されている。リチウムイオン電池と異なり、固体電解質の採用によって過熱や発火のリスクが低減され、バッテリー寿命が長期間にわたり安定するという利点がある。

この特性は特に健康管理機能を重視するデバイスにおいて重要であり、心拍数や睡眠データを常時記録するApple Watchに適した技術であると言える。一方で、スマートフォンやタブレットなど大型デバイスへの導入には依然課題が多い。

これまでの噂ではiPhoneやGalaxyデバイスへの適用も期待されていたが、Samsung Electro-Mechanicsは現時点でウェアラブル分野に焦点を絞っている。この選択は、競合他社との差別化を図る狙いと見られ、Galaxy Ringのリリースなど同社の新たな市場戦略とも一致している。

次世代Apple Watchへの技術導入の可能性と課題

Apple Watchシリーズ12への全固体電池技術の採用は、さらなるバッテリー性能向上と充電速度の短縮を実現する可能性を秘めている。仮に従来モデルと同等の内部設計を維持しつつバッテリー容量が30%増加すれば、24時間以上の連続使用が標準となるだろう。

さらに、1,000回以上の充電サイクルを達成できれば、ユーザーの利便性は大きく向上する。しかし、製造コストの増加や新素材の安定供給など、技術的な壁も依然として存在する。Samsungが来年の量産を成功させ、Appleが試作バッテリーの採用を決定すれば、2026年以降のApple Watchシリーズは競争優位性を一段と高めるだろう。

だが、技術の導入が見送られた場合でも、他社のウェアラブル製品で同技術が採用されることは、全固体電池が市場標準となる布石となり得る。AppleとSamsungの競争が新たな段階に突入する中、今後の市場動向が注目される。