折りたたみスマートフォン市場の成長が鈍化している。サムスン電子は「Galaxy Z Flip 6」および「Z Fold 6」の販売不振を受け、2025年に折りたたみモデルの生産目標を39%削減すると発表した。「Galaxy Z Flip 7」と「Galaxy Z Fold 7」の計画台数は500万台とされ、これは前世代の820万台を大きく下回る。
特に韓国内での販売が期待を下回り、次世代モデルへの期待値が低下している現状が影響している。一方で、同社は「Galaxy S」シリーズの生産を増加させており、従来型スマートフォンが依然として主力であることを示している。
この動きは、市場全体の需要変化を反映しており、高価格や革新性の乏しさが普及の障壁となっている折りたたみ型製品の将来像に注目が集まる。
折りたたみスマートフォン市場の拡大停滞とその要因
折りたたみ式スマートフォンは革新的なデザインで注目されてきたが、市場の拡大は限定的なままである。2024年時点で世界市場全体に占める割合は2%未満にとどまっており、高価格と従来型スマートフォンとの差別化が進まない点が普及を妨げている。
消費者の多くは、高価格帯のスマートフォンに対して性能や利便性、耐久性といった実用的な価値を求めており、折りたたみという特徴だけでは購買意欲を大きく刺激できていない。さらに、OnePlusやGoogle、Motorolaといった他ブランドが折りたたみ型市場に参入し競争が激化していることも、サムスンのシェア低下の一因とみられる。
ただし、現時点ではサムスンが市場で優位性を保っているが、各社の技術進化が加速する中でその地位が揺らぐ可能性も否定できない。この状況は、折りたたみ市場がまだ完全に成熟していないことを示唆しており、さらなる革新が必要とされている。
サムスンの「Galaxy S」シリーズ強化戦略の背景
サムスンが折りたたみ型モデルの生産を削減する一方で、フラットデザインの「Galaxy S」シリーズの生産を増加させている理由は、市場ニーズの変化に対応した戦略的な選択と考えられる。同シリーズの次世代モデル「Galaxy S25」の生産目標は3740万台とされ、前世代比で7%増加する見込みである。
この動きは、堅調な需要が見込まれる従来型プレミアムスマートフォンへのリソース集中を意味している。サムスンの選択には、高価格帯市場での競争力を維持しながら、安定的な利益を確保する狙いがうかがえる。
折りたたみ型市場での需要が限定的である一方、フラットデザインは依然として幅広い消費者層に受け入れられており、特に耐久性やコストパフォーマンスを重視する層に訴求力が高い。これにより、同社は成長余地のあるセグメントで収益を強化し、折りたたみ型製品のさらなる進化のための資金を確保しようとしているのだろう。
折りたたみ技術の進化と今後の展望
サムスンは折りたたみ型スマートフォン分野での革新を続ける意向を示しており、二重折りディスプレイなど新たなフォームファクターを模索していると報じられている。この動きは、同社が折りたたみ型市場の可能性を完全に放棄していないことを示している。
しかしながら、技術革新には高い研究開発費が必要であり、市場の限られた需要がその採算性に影響を及ぼす可能性がある。また、アップルが2026年にも折りたたみ型市場に参入する可能性が報じられており、これが市場全体の成長を加速させる可能性もある。
アップルの参入が実現すれば、同市場は新たな競争と革新の波に直面するだろう。ただし、サムスンが主導的なポジションを維持するためには、単なる技術の進化だけでなく、消費者のニーズに即した付加価値の提供が鍵となる。今後も市場の動向と各社の戦略から目が離せない。