Tecnoが発表した「Pocket Go」は、従来のハンドヘルドゲーミングPCとは一線を画すデバイスである。最大の特徴は、ディスプレイを持たないという大胆な設計だ。このため、使用するには外部ディスプレイやTecnoのAIグラス「Pocket Vision」が必要となる。
Ryzen 7 8840HSを搭載し、他の競合製品と比べても引けを取らない高性能を実現。さらに、交換可能な50Whのバッテリーにより、長時間のゲームプレイも中断せず楽しめる点が注目される。
ディスプレイ非搭載という大胆な設計
Tecnoの「Pocket Go」は、従来のハンドヘルドゲーミングPCとは異なり、ディスプレイを持たないという斬新なデザインを採用している。通常、ゲーミングデバイスは内蔵のディスプレイを前提として設計されるが、Pocket Goはその常識を覆す。このデバイスを使うためには、外部モニターに接続するか、Tecnoの専用ARグラス「Pocket Vision」を使用する必要がある。この点で、Pocket Goはゲーマーに対して新たなプレイスタイルを提案している。
ディスプレイを搭載しないことで、デバイスのサイズを大幅に縮小できることが大きな利点である。実際、Pocket Goは一般的なコンソール用ゲームパッド程度の大きさであり、非常にコンパクトだ。また、ARグラスとの組み合わせにより、従来のディスプレイに依存しないプレイ体験を可能にしている。このようなアプローチは、特に持ち運びやスペースの制約を考慮した設計と言える。
一方で、内蔵ディスプレイがないことで、使用者は必然的に他のディスプレイデバイスを準備しなければならず、利便性に欠ける可能性がある。しかし、この欠点はTecnoの専用グラス「Pocket Vision」によって補完される。これにより、ユーザーは軽量で持ち運びに便利なヘッドセットを利用してゲームをプレイできる。Tecnoは、あえて標準的な機能を排除し、新たなゲーミング体験を提供することに挑戦しているのである。
Ryzen 7 8840HS搭載で強力なパフォーマンスを実現
TecnoのPocket Goは、AMDのRyzen 7 8840HSを搭載している。このプロセッサは、8つのZen 4 CPUコアと12基のRDNA 3グラフィックスユニットを備えており、ポータブルPCとしては異例のパフォーマンスを誇る。同じチップは、ASUS ROG AllyやLenovo Legion Goといった高性能ゲーミングデバイスにも使用されているため、その実力は折り紙付きである。
このチップの性能は、特にグラフィック処理において顕著であり、最新のAAAタイトルからインディーゲームまで、幅広いゲームを快適にプレイできる。さらに、Tecnoは冷却システムにも配慮しており、Ryzen 7 8840HSを30Wの消費電力で運用できるよう設計されている。この点は、同じく30Wで動作するROG Allyと同等であり、ゲームのパフォーマンスが一定水準を保てることを意味している。
一方、Pocket Goのメモリは16GBまたは32GBのLPDDR5が選択でき、6400 MT/sというスピードで動作する。しかし、これは競合製品であるLenovo Legion GoやROG Allyに比べやや遅い点が懸念材料だ。特に高解像度のディスプレイやARグラスを使った場合、若干のパフォーマンス低下が見込まれるものの、ほとんどのゲームにおいて問題なく動作することは確かである。全体として、Pocket Goはコンパクトながらも非常に強力なゲーミングマシンである。
交換可能なバッテリーで途切れないゲーム体験
Tecno Pocket Goの最もユニークな特徴の一つは、交換可能な50Whのバッテリーを採用している点である。これは、通常のハンドヘルドゲーミングPCにおいて見られない機能であり、長時間のゲームプレイを中断せずに続けることができるという大きな利点がある。例えば、バッテリーが切れそうになった場合でも、ゲームを閉じることなく新しいバッテリーに交換できる。このような柔軟性は、ゲーマーにとって非常に魅力的なポイントである。
50Whというバッテリー容量自体は、一般的なモバイルデバイスと比較して特別大きいわけではないが、交換可能であることがその価値を高めている。また、Pocket Goには65WのGaNチャージャーが付属しており、迅速に充電を行うことが可能だ。これにより、長時間の使用に耐えるだけでなく、急速充電にも対応しているため、外出先でも安心してゲームを楽しむことができる。
さらに、バッテリーを交換することで、充電中の待ち時間を最小限に抑え、ゲームプレイを途切れさせることなく続行できる点も優れている。このような設計は、特に外出先でのゲームプレイや長時間のセッションにおいて非常に有用である。Pocket Goのバッテリー交換機能は、まさに携帯型ゲーミングPCにおける新たなスタンダードとなる可能性を秘めている。
ARグラス「Pocket Vision」との連携による新たな視覚体験
Tecnoは、Pocket Goをディスプレイ非搭載にする代わりに、専用のARグラス「Pocket Vision」との連携を強化している。このARグラスは、デュアル1080p Micro-OLEDスクリーンを備えており、頭部に装着することで、ゲーム画面を目の前に広げることができる。まさに未来的な視覚体験を実現するデバイスである。
Pocket Visionは、軽量かつコンパクトな設計で、長時間装着しても疲れにくい。また、ジャイロスコープによるモーショントラッキング機能を搭載しているが、リフレッシュレートは60Hzに制限されているため、VRのような高フレームレートが求められる用途には向いていない。それでも、従来のヘッドマウントディスプレイとしては十分な性能を持っており、ゲームプレイにおいても問題なく使用できる。
AR技術を活用することで、Pocket Goは従来のディスプレイを必要としない、まったく新しいゲーム体験を提供する。特に外出先での利用や、スペースに制約のある環境でのプレイに最適である。このような設計は、従来のゲーミングデバイスの枠を超え、新たな可能性を示している。Tecnoは、Pocket GoとPocket Visionの組み合わせで、ゲーミングの未来を切り開こうとしている。