AMDの次世代APU「Strix Halo」ことRyzen AI Max+のグラフィック性能に関するリーク情報が話題となっている。中国の掲示板Baiduに投稿された3DMarkのスコアによると、このAPUに搭載されるRadeon 8060SがNVIDIAのRTX 4060ラップトップ版と同等のパフォーマンスを記録したという。

さらに、このGPUは現行のRadeon 890Mを約3倍上回るスコアを記録しており、統合GPUとしては異例の高性能を誇る。ただし、今回のベンチマーク結果は初期のエンジニアリングサンプルによるもののため、最終仕様での変動は避けられない。

また、CPUのOPNコードとGPUの型番が一致しないなどの不確定要素もあり、慎重に受け止める必要がある。AMDはこの「Strix Halo」APUをハイエンドのラップトップやワークステーション向けに設計しており、2025年には市場投入が予定されている。今後の正式な発表と独立した検証が待たれる。

AMD Strix Haloの技術的特徴と革新性

Ryzen AI Max+の中核を担うStrix Haloは、AMDが新たに開発した高性能APUアーキテクチャであり、これまでの統合グラフィックスの常識を覆す仕様を備えている。最大16コアのZen 5 CPUと、40基のRDNA 3.5コンピュートユニット(CU)を搭載し、統合GPUでありながら、NVIDIAのRTX 4060ラップトップ版に匹敵するグラフィックス性能を誇る。

特筆すべきは、これらのスペックを1つのチップに統合しながら、専用GPUに迫るパフォーマンスを実現している点だ。また、Strix Haloの設計には、2つのCCD(Core Complex Die)と大型のI/Oダイが採用されており、最大128GBのLPDDR5-8532メモリを統合GPU向けに割り当てられる。

特に、iGPUのために96GBものVRAMを使用可能とする仕様は、これまでのAPUでは見られなかった大容量メモリ管理機能といえる。これにより、GPU負荷の高いレンダリングやAI推論処理においても、スムーズな動作が期待できる。一方で、この新しいアーキテクチャの消費電力と熱設計にも注目すべきだ。

Strix Haloは、従来のAPUよりも大幅に向上したパフォーマンスを発揮するが、その分、消費電力も増加すると考えられる。特に、ラップトップ向けの省電力設計とどのようにバランスを取るのかが課題となるだろう。AMDは、TSMCの4nmプロセスを採用することで電力効率の向上を図っているが、最終的な性能とバッテリー持続時間の関係は、実機のレビューを待つ必要がある。


3DMarkスコアが示す統合GPUの新時代

今回リークされた3DMarkのスコアは、統合GPUがこれまでの専用GPUの領域に足を踏み入れたことを示唆している。Strix Haloに搭載されるRadeon 8060Sは、10,106ポイントというスコアを記録し、NVIDIAの**RTX 4060ラップトップ版(10,549ポイント)やAMDのRadeon RX 7700S(10,218ポイント)**とほぼ同等の性能を持つことが分かった。

これは、専用GPUなしでこのレベルのグラフィックス性能が得られることを意味し、特に省スペースなミニPCや軽量ノートPCにおいて大きなメリットとなる。さらに、このスコアはAMDの現行iGPUであるRadeon 890M(3,705ポイント)を約3倍上回る。

従来、統合GPUは軽めのゲームや動画編集向けという位置付けだったが、この結果から、Strix HaloはAAAタイトルの高設定でも快適に動作する可能性がある。しかし、同時にRTX 4070ラップトップ版(12,517ポイント)と比較すると、約20%の性能差がある点も無視できない。

最新のレイトレーシング対応ゲームや4K解像度での快適なゲームプレイを求める場合、専用GPUの選択肢を検討する必要があるだろう。また、これらのベンチマークスコアはエンジニアリングサンプルによるものであり、最終的な製品版ではさらなる最適化が行われる可能性がある。

特に、ドライバのチューニングや電力管理の改善によって、実際のゲームプレイ時のフレームレートや安定性が向上することが期待される。


Strix Haloがもたらす未来のデバイスと可能性

Strix Haloを搭載したデバイスは、2025年初頭から市場に登場する予定だ。既にHPの「ZBook Ultra G1a」ワークステーションラップトップや、「HP Z2 Mini G1a」ミニPCの存在が明らかになっており、特にクリエイター向けのモバイルワークステーション市場での展開が注目される。

また、AsusのROG Flow Z13のようなゲーミング2-in-1デバイスにも搭載される可能性があり、Strix Haloはゲーム用途にも本格的に対応する製品になるだろう。このような高性能APUの登場は、ゲーミングノートPCやワークステーション市場に大きな影響を与えると考えられる。

特に、専用GPUを搭載せずに高いパフォーマンスを発揮できるため、軽量かつバッテリー持ちの良いラップトップの開発が進む可能性がある。これにより、モバイル環境での高性能なクリエイティブワークや、クラウドゲーム環境の向上が期待される。

一方で、NVIDIAやIntelの次世代GPUがどのような対抗策を打ち出すのかも気になるところだ。特に、NVIDIAは今後のモバイル向けAda Lovelace RefreshやRTX 5000シリーズでさらなるパフォーマンス向上を図ると見られ、競争は一層激しくなるだろう。AMDがこのStrix Haloで新たな市場を切り拓くのか、それとも専用GPUの需要が依然として高いままなのか、2025年の動向が注目される。

Source:Tom’s Hardware