サムスンは次世代のHBM4メモリ市場に向けて、最新の「1c DRAM」プロセスを再設計し、歩留まり(良品率)の向上を図ると報じられている。これまで1c DRAMの歩留まりの低さが量産の障壁となっていたが、チップサイズの拡大を含む新たなアプローチを採用し、2025年半ばの安定生産を目指す。HBM4の競争力を高め、主要顧客獲得につなげる狙いだ。
サムスンの1c DRAMプロセスが抱える課題とは
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サムスンの1c DRAMプロセスは、高密度化とコスト削減を目的として設計されたが、現在の歩留まり率の低迷が量産を妨げる要因となっている。特に、従来の1α DRAMプロセスと比較すると、1c DRAMでは製造プロセスの難易度が高まり、不良率が増加する傾向にある。歩留まりの低下は、単なる製造上の問題にとどまらず、サムスンのメモリ市場における競争力にも影響を及ぼす可能性がある。
さらに、サムスンは1c DRAMの開発においてEUV(極端紫外線)リソグラフィ技術を導入しているが、この技術の最適化には時間を要する。EUVを活用することで回路線幅を微細化し、高集積のメモリセルを実現できるが、安定した製造プロセスを確立するまでには技術的なハードルが多い。特に、露光プロセスのばらつきがチップの品質に大きく影響を与えるため、サムスンはプロセスの微調整を重ねながら歩留まりの向上を目指している。
これに加え、競争相手となるSK hynixやMicronも、それぞれの次世代DRAMプロセスの改良を進めている。SK hynixの1β DRAMプロセスは比較的安定した生産が可能であり、HBM3市場ではNVIDIAの採用を獲得する結果となった。一方で、サムスンの1c DRAMは未だに量産体制が確立できておらず、この差がHBM4市場での競争に影響を及ぼす可能性がある。
HBM4市場におけるサムスンの戦略と今後の展望
サムスンは、HBM4市場での巻き返しを図るため、1c DRAMプロセスの再設計に取り組んでいる。従来の設計ではチップサイズの縮小が優先されていたが、これが歩留まりの低下を引き起こす要因となった。そのため、新たな設計ではチップサイズを拡大し、製造プロセスの安定性を確保する方向へシフトしている。このアプローチは、単純な性能向上だけでなく、歩留まりの向上による生産コストの最適化にもつながる可能性がある。
HBM4は、AIやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向けに開発が進められているが、メモリの性能だけでなく、安定供給が求められる市場でもある。サムスンが1c DRAMの歩留まりを改善できなければ、HBM4市場においても競争相手であるSK hynixやMicronに遅れを取ることになりかねない。特に、SK hynixはすでにHBM3Eの量産計画を進めており、次世代メモリ市場での存在感を確立しつつある。この状況の中で、サムスンが1c DRAMの設計変更により安定供給の目処を立てられるかが、HBM4市場における同社のポジションを決定づける要因となるだろう。
また、HBM4の市場拡大に伴い、主要顧客の要求も変化しつつある。特にNVIDIAやAMDなどのGPUメーカーは、次世代メモリの消費電力や熱管理にも注目しており、サムスンがこれらの要件を満たす製品を提供できるかが問われる。HBM3世代ではNVIDIAの採用を逃したが、HBM4での巻き返しを実現するには、単なる歩留まり向上だけでなく、消費電力や発熱特性の最適化も重要な要素となる。
サムスンが計画している設計変更が成功すれば、HBM4市場でのシェアを確保する道が開ける。しかし、それまでに競争相手がどこまで技術を進化させるかも鍵を握る。HBM4時代に向けた競争はすでに始まっており、サムスンの動向が今後のメモリ業界に大きな影響を与えることは間違いない。
Source:TweakTown