Adobeは、生成AIプラットフォーム「Firefly」に新たに動画生成機能を追加した「Firefly Video Model」の公開ベータ版をリリースした。このモデルは、テキストプロンプトや画像入力を基に、ユーザーが望む動画クリップを生成することが可能で、カメラアングルの指定や視点の選択、さらには大気効果やカスタムモーショングラフィックスの作成など、多彩な機能を備えている。

現時点で1080pの解像度に対応しており、今後は4Kモデルの導入も予定されている。また、FireflyアプリはAdobe Creative Cloudと統合されており、PhotoshopやPremiere Pro、Adobe Expressとの連携が可能である。さらに、新機能として「音声と動画の翻訳」機能が追加され、動画や音声のセリフを20以上の言語に翻訳しつつ、元の声の特徴を保持することができる。

Adobeは、Fireflyアプリとともに、新しいサブスクリプションプラン「Firefly Standard」と「Firefly Pro」を発表しており、ユーザーのニーズに応じて選択が可能である。この新たなAI動画生成ツールの登場により、コンテンツ制作の可能性がさらに広がることが期待されている。

Firefly Video Modelの特徴と他のAI動画生成ツールとの違い

Firefly Video Modelは、テキストプロンプトや画像入力をもとに動画を生成するAIモデルである。これまでのFireflyは画像生成に特化していたが、今回のアップデートにより動画生成も可能になった点が大きな変化だ。特に、商業的に安全なコンテンツを作成できる点を強調しており、著作権や倫理的な問題に配慮された設計になっている。

他のAI動画生成ツールと比較すると、Adobeはクリエイター向けのツールとしての統合性を重視している。例えば、OpenAIの「Sora」やRunwayの「Gen-2」もAIによる映像生成技術を提供しているが、これらは主にAI主導のコンテンツ生成を目指している。

一方で、Firefly Video ModelはAdobe Premiere ProやPhotoshopとシームレスに連携し、既存のクリエイティブワークフローを活用しながらAIを補助的に使える点が特徴的だ。また、Firefly Video Modelは、Adobeの「Generative Extend」機能を活用することで、既存の動画に自然に映像を追加したり、ショットの継続性を向上させたりすることができる。

これにより、映像の編集工程を大幅に簡略化できると考えられる。将来的には、より高解像度な4Kモデルの提供も予定されており、プロフェッショナルな映像制作にも適用範囲が広がる可能性がある。

クリエイターにとっての利便性と新機能の活用法

Firefly Video Modelが提供する「Generate Video(ベータ)」は、クリエイターにとって新たな表現の可能性を広げる機能となる。特に、カメラアングルの指定やモーショングラフィックスの作成機能は、手間のかかる映像制作の一部をAIが補助することで、作業効率を大幅に向上させる。

例えば、ショットごとの視点を変更したり、細かいモーションエフェクトを加えたりする作業は、従来であれば複数のツールや高度な編集技術が必要だったが、Firefly Video Modelではシンプルなプロンプト入力でこれらが可能になる。

また、新たに追加された「音声と動画の翻訳」機能は、グローバル市場を意識したコンテンツ制作において有用である。動画のセリフを20以上の言語に翻訳できるだけでなく、元の話者の声の特徴を保持しながら音声を再生できるため、視聴者に違和感を与えにくい。特に、YouTubeやSNSでの発信を考えているクリエイターにとって、言語の壁を取り払う強力なツールとなるだろう。

さらに、FireflyアプリがCreative Cloudと統合されていることで、既存のAdobeユーザーはスムーズに新機能を導入できる。Photoshopで作成した画像素材をFirefly Video Modelで動かし、Premiere Proで細かい編集を加えるといったワークフローが容易になる。この統合性は、単体のAIツールにはない強みであり、クリエイティブな作業を一元化する手助けとなる。

Fireflyのサブスクリプションモデルと利用制限の影響

Firefly Video Modelの導入に伴い、Adobeは新たなサブスクリプションプランを発表した。「Firefly Standard」と「Firefly Pro」の2種類が用意されており、利用できる動画・音声クレジットの上限が異なる。

Standardプランでは月額9.99ドルで2,000クレジットが提供され、最大20本の5秒間の1080p動画を生成可能。一方、Proプランでは月額29.99ドルで7,000クレジットが付与され、最大70本の5秒動画を生成できる。

このようなクレジット制の導入は、AI生成コンテンツのコスト管理に関わる重要な要素である。特に、頻繁に動画を作成するクリエイターにとって、クレジットの消費量は制作スケジュールにも影響を与える可能性がある。

現時点では1080p解像度のみの対応だが、今後4K対応のプランが登場した場合、より多くのクレジットが必要になることが予想される。一方で、Adobeのクレジット制は、ユーザーにとって適切なコストパフォーマンスを提供する仕組みとも言える。

例えば、単発で短い動画を作成する場合はStandardプランで十分対応可能であり、大規模なプロジェクトや継続的な制作を行うユーザーはProプランを選ぶことで、ニーズに応じた利用ができる。また、AIを活用したコンテンツ制作が本格化するにつれて、今後クレジット制度の改定や新たなプランが登場する可能性もあるだろう。

Source:Neowin