2024年10月に登場したIntelの最新デスクトップCPU「Arrow Lake」は、発売直後から期待を下回るパフォーマンスが課題となった。Intelはその後、ファームウェアやWindowsのアップデートを通じて性能向上を図ったが、2025年1月時点でのテスト結果はゲームごとにばらつきが見られる。
例えば、「Cyberpunk 2077」ではフレームレートが改善した一方で、「Baldur’s Gate 3」では一部性能が悪化。「Total War: Warhammer 3」では低フレームレートが著しく低下するなど、依然として競合製品のRyzen 7 9800X3Dに及ばない結果となった。スレッドスケジューリング最適化ソフト「APO」による性能向上も限定的で、価格面でも魅力に乏しい現状が浮き彫りとなっている。
Arrow LakeのBIOSとWindows更新がもたらした具体的な改善点
Arrow Lakeシリーズは発売直後、特定のゲームにおいてパフォーマンスの低迷が明らかとなった。Intelはこれを受け、BIOSとWindowsのアップデートを通じて性能改善を試みた。例えば、「Cyberpunk 2077」では平均フレームレートが15%向上し、低フレームレートも12%の増加が見られた。
また、「Metro Exodus Enhanced」でも9%のフレームレート向上を記録し、Core i9 14900Kを上回る結果を示した。しかし、こうした改善は限定的で、全てのゲームで均等な結果が得られたわけではない。一方で、「Baldur’s Gate 3」や「Total War: Warhammer 3」では、1%低フレームレートが大幅に低下するなど、依然として課題が残る。
特に「Total War: Warhammer 3」では、AMDのRyzen 7 9800X3Dが低フレームレートで97%も上回る結果を示しており、Intelが掲げた性能向上の目標には届いていない。これらの事例は、ハードウェア更新だけでは克服できないソフトウェア的な問題が存在することを示唆している。
Intel Application Optimizerの影響と限界
Intelが新たに導入したスレッドスケジューリング最適化ソフト「Intel Application Optimizer(APO)」は、一部のゲームでパフォーマンス向上を図る目的で設計された。しかし、APOは「Cyberpunk 2077」や「Metro Exodus Enhanced」など、特定のタイトルでしか効果を発揮しない点が明らかになった。
その結果、パフォーマンス向上が全体の使用感に与える影響は限定的であると言える。APOが真価を発揮するには、より広範なゲームタイトルへの対応が求められる。また、現状では性能向上幅が大きくなく、競合製品との差を埋めるには至っていない。
この点において、AMDが採用している3D V-Cache技術は、ゲーム向けの一貫した性能向上を実現しており、APOのような部分的なアプローチとの差を浮き彫りにしている。Intelの次なる課題は、APOの適用範囲と効果をいかに拡大するかにある。
高価格帯CPU市場での競争激化とArrow Lakeの立ち位置
Arrow LakeシリーズのCore Ultra 9 285Kは、発売時の価格設定が高めに設定されており、性能のばらつきがある現状では競争力に欠ける。特にRyzen 7 9800X3Dがパフォーマンスと価格の両面で優位性を持つ中で、Arrow Lakeはハイエンド市場での明確なポジショニングを確立できていない。価格性能比の観点では、Ryzen 7 9800X3Dがゲーマーの第一選択肢となることは避けられない。
さらに、Intelは新しい世代のプロセッサを支持するための強力なエコシステム構築が求められる。例えば、BIOSやソフトウェアの更新だけでなく、ゲーミング体験を包括的に向上させる戦略的な施策が必要だ。これらの要素を改善しない限り、Arrow Lakeが市場で持続的な支持を得るのは難しいだろう。
Source:PC Gamer