Intelのサーバープロセッサ出荷量が過去14年間で最低水準に落ち込んだ。2021年のピーク以降、出荷量は50%以上減少し、データセンター市場での苦戦が鮮明となっている。2024年に入ってもこの傾向は続き、競争力のある製品を十分に供給できていない状況が浮き彫りになった。
一方、AMDはサーバー市場でも存在感を高め、特に「3D V-Cache」技術がコンシューマー向け市場で成功を収めたことで、Intelとの差をさらに広げつつある。Intelは次世代の「Clearwater Forest」などの新製品で巻き返しを図るが、市場の期待に応えられるかは不透明だ。
さらに、Intelの半導体製造事業も厳しい状況に直面している。自社製造能力を強化する一方で、TSMCへの依存が続く見通しだ。CEO交代や買収の噂も浮上する中、同社がどのように立て直しを図るのかが注目されている。
Intelのサーバー向けCPU市場が急落した背景とは
![](https://tech-gadget.reinforz.co.jp/wp-content/uploads/2024/06/27275955_m-1024x683.jpg)
Intelのサーバー向けCPU出荷量は、2021年のピーク時から50%以上減少し、2024年に入ってもその勢いは止まらない。この急激な落ち込みの背景には、いくつかの要因が重なっている。まず、サーバー市場全体が大きく変化している点が挙げられる。
かつてIntelは、データセンター向けプロセッサ市場で圧倒的なシェアを誇っていたが、AMDが「EPYC」シリーズで競争力を高めたことで、顧客の選択肢が増えた。特にクラウド事業者は、AMDの高効率なプロセッサを採用するケースが増えており、Intelのシェアを奪う要因となっている。
加えて、Armベースのサーバーチップの台頭も無視できない。AWSの「Graviton」シリーズやAmpereの「Altra」など、Armベースのチップは電力効率が高く、特定のワークロードにおいて優位性を持つ。そのため、データセンターの運営企業がArmアーキテクチャの採用を進めた結果、Intelの従来のx86アーキテクチャの需要が減少している。
さらに、Intel自身の製品戦略にも課題がある。次世代サーバー向けプロセッサ「Granite Rapids」や「Clearwater Forest」の投入は予定されているものの、競争力のある製品を迅速に供給できていない。技術革新のスピードが遅れたことで、市場のシェアを奪われる結果となった。
AMDの「3D V-Cache」が市場を席巻する理由
Intelが苦戦する一方で、AMDはサーバー向けだけでなくコンシューマー向け市場でもシェアを伸ばしている。その中でも「3D V-Cache」技術の成功は、Intelとの差を大きく広げる要因となった。
3D V-Cacheは、プロセッサのキャッシュメモリを3D積層技術によって大容量化することで、処理速度を向上させる技術だ。特にゲーム用途において、キャッシュ容量の増加はフレームレートの向上につながりやすいため、AMDのRyzenシリーズは高性能ゲーミングPC市場で圧倒的な支持を得ている。
サーバー市場でも、AMDはこの技術を活用して高性能な「EPYC」プロセッサを展開しており、クラウドサービス事業者やデータセンター運営企業が積極的に採用している。これにより、Intelのデータセンター向けCPUのシェアはさらに低下している。
対して、Intelはこの分野で後れを取っており、3D V-Cacheに匹敵する技術を投入できていない。今後、「Clearwater Forest」などで類似の技術を採用する可能性があるものの、現状ではAMDが市場をリードしている状況だ。
Intelの半導体製造事業は存続できるのか
サーバー向けプロセッサ市場での低迷に加え、Intelは自社の半導体製造(ファウンドリ)事業でも厳しい状況に置かれている。同社は「18Aノード」プロセスの開発を進めており、TSMCの3nmや2nmプロセスと競争する意向を示している。しかし、現状ではTSMCに対する依存度が高まりつつある。
例えば、Intelが発表したノートPC向け「Lunar Lake」プロセッサは、TSMCの製造プロセスを採用しており、自社製造ではなく外部委託が進んでいる。2026年に予定されているデスクトップ向け「Nova Lake」でも、IntelのプロセスとTSMCのプロセスを併用する方針とされている。
こうした動向は、Intelの製造能力に対する疑念を生む要因となっている。同社は2024年にファウンドリ部門を独立した事業体として分離し、TSMCやSamsungと同じように外部からの受注を増やす方針を打ち出している。しかし、競争力のあるプロセス技術を早期に確立しなければ、半導体業界における影響力を失う可能性がある。
加えて、CEOの交代や買収の噂もあり、Intelが今後どのような経営戦略を取るのか不透明な部分が多い。もしファウンドリ事業が振るわなければ、Intelは今後ますます設計部門に特化し、TSMCなどの外部製造を前提とした企業へと変化していく可能性もある。
Source:TechSpot