AMDが最新のAM5プラットフォームを発表してから約3年が経過したが、同社のクライアントチャネル事業部門責任者であるデビッド・マカフィー氏によれば、現在のCPU販売比率はAM4とAM5でほぼ50/50となっている。特に米国や西ヨーロッパではAM5の採用が進んでいるものの、AM4は依然として多くのユーザーに支持されている。

AM4は2016年9月に登場し、当初2020年までとされていたサポート期間は人気の高さから2022年まで延長され、さらに2025年までの継続が発表されている。この長期的なサポートと信頼性が、AM4の根強い人気の要因と考えられる。

一方、AM5はDDR5メモリやPCIe 5.0など最新技術に対応しており、ハイエンドユーザーを中心に採用が進んでいる。AMDは今後もAM5プラットフォームの長期的なサポートを検討しており、ユーザーの期待に応える姿勢を示している。

AM4の長寿命が生んだ信頼性と市場での優位性

AM4プラットフォームは2016年の登場以来、長期間にわたるサポートが提供されてきた。AMDは当初、2020年までのサポートを予定していたが、ユーザーの需要の高さから2022年まで延長し、さらに2025年までの対応を決定している。このような長寿命のサポートは、CPUのアップグレードを容易にし、既存ユーザーにとって非常に魅力的な要素となった。

特に、BIOSアップデートによる最新CPUへの対応は、長くPCを使いたいユーザーにとって大きな利点となっている。この戦略は、Intelの短期間でのソケット変更とは対照的であり、AM4ユーザーは比較的低コストで性能向上を図ることができる。

例えば、2017年に発売されたRyzen 1000シリーズを使用しているユーザーが、最新のRyzen 5000シリーズにアップグレードできるケースもあり、これがAM4の普及を支えている。また、AM4は数多くのマザーボードメーカーから様々な価格帯の製品がリリースされており、幅広い選択肢を提供している点も人気の理由の一つだ。

加えて、AM4はDDR4メモリを使用するため、コストパフォーマンスが優れている。DDR5メモリを採用するAM5と比較すると、メモリの価格が低く抑えられるため、コストを意識するユーザーにとっては依然として魅力的な選択肢となっている。こうした要素が相まって、AMDの最新プラットフォームであるAM5と販売比率が拮抗する結果につながっていると考えられる。

AM5が提供する最新技術と市場の動向

AM5は、AMDの最新CPUであるRyzen 7000シリーズのために設計され、DDR5メモリやPCIe 5.0に対応している。これにより、メモリ帯域幅の向上やストレージの高速化が期待でき、特にゲーミングやクリエイティブ用途では大きなメリットとなる。

また、AM5は新たにLGA1718ソケットを採用し、ピンをCPU側ではなくマザーボード側に配置することで、CPUの取り扱いやすさを向上させている。しかし、AM5にはいくつかの課題も存在する。最大のハードルは、DDR5メモリのコストだ。

DDR4と比較して価格が高く、現在の市場では依然として普及が進んでいるとは言い難い。また、AM5対応マザーボードはX670やB650といったチップセットを搭載しているが、特にX670系は高価であり、エントリーユーザーが手を出しにくい価格帯となっている。そのため、価格を抑えたいユーザーは、依然としてAM4を選択するケースが多い。

それでも、ハイエンド市場ではAM5が徐々に浸透している。特に、米国や西ヨーロッパでは最新の技術を求めるユーザー層がAM5を選択する傾向にあり、今後も市場の変化によって普及が進む可能性がある。

AMDは、AM5の長期的なサポートを検討していることを明言しており、AM4と同様の長期間にわたるアップグレードパスを提供することで、ユーザーの移行を促す狙いがあると考えられる。

AM4とAM5の共存が示すPC市場の変化

AM4とAM5が現在50/50の販売比率となっている背景には、PC市場全体の変化が影響している。かつては新しいプラットフォームが登場すると、ユーザーの多くが速やかに移行する傾向があった。しかし、最近ではコストパフォーマンスを重視する動きが強まり、既存のプラットフォームを長く使う傾向が見られる。

これは、CPUの性能向上が鈍化し、数世代前のモデルでも十分なパフォーマンスを発揮できることが要因の一つとなっている。加えて、半導体不足やインフレの影響も、ユーザーが慎重に購入を判断する要因となっている。

特に、AM4は中古市場でも豊富な選択肢があり、コストを抑えながら高性能なシステムを構築する手段として依然として魅力的だ。一方で、最新技術を求めるユーザーはAM5へと移行し、特にゲーマーやクリエイター向けの需要が高まっている。この二極化が、AM4とAM5の共存を可能にしていると考えられる。

今後、AM5が本格的に普及するには、DDR5メモリの価格低下や、より手頃な価格帯のマザーボードの登場がカギを握るだろう。また、AMDがどのような形でAM5を長期的にサポートしていくかも、ユーザーの選択に大きく影響すると予想される。現在の50/50の販売比率が今後どのように変化するのか、引き続き注目していきたい。

Source:TechSpot