Huaweiが新たに取得したスマートウォッチ向けの指紋認証技術の特許が注目を集めている。この特許では、ディスプレイに埋め込まれた高度な光学式指紋センサーを活用し、ユーザー認証だけでなく、ジェスチャー操作も可能にする仕組みが説明されている。

指をひねることで音量調整や画面の明るさ変更を行う機能や、複数の指紋を登録し、それぞれに異なるアクションを割り当てる仕組みも盛り込まれている。AppleやSamsungも過去に類似の特許を取得していたが、いずれも実際の製品には採用されていない。Huaweiの技術がどこまで実用化されるのか、今後の動向が注目される。

Huaweiの指紋認証スマートウォッチは何が新しいのか?従来技術との違い

Huaweiの特許技術が他の指紋認証システムと異なるのは、単なるセキュリティ機能ではなく、操作性の向上も視野に入れている点だ。従来の指紋認証技術は、スマートフォンやノートPCでのロック解除や決済認証が主な用途であり、スマートウォッチに組み込まれる場合も、非接触決済時の認証強化が目的とされてきた。しかし、Huaweiの特許では、指紋認証とジェスチャー操作を組み合わせ、より直感的なインターフェースを実現しようとしている。

この技術のポイントは、AMOLEDディスプレイ内に埋め込まれた光学式センサーが、単に指紋を認識するだけでなく、指のひねりや長押しといった動作も検知できる点だ。例えば、特定の指でディスプレイを押すとアプリが起動し、指をひねると音量調整ができる。これは、物理ボタンを減らしつつ、ユーザーがよりスムーズに操作できる新しいアプローチと言える。

また、指紋登録のカスタマイズ性も特筆すべき要素だ。親指、人差し指、中指など、それぞれの指に異なる機能を割り当てることで、ワンタッチで特定の動作を実行可能になる。これまでのスマートウォッチはタッチジェスチャーや回転式クラウンで操作するのが一般的だったが、Huaweiの技術が実用化されれば、より自由度の高いインターフェースが実現するかもしれない。

AppleやSamsungが指紋認証をスマートウォッチに搭載しなかった理由

AppleやSamsungも過去にスマートウォッチ向けの指紋認証技術の特許を取得していたが、実際の製品には採用しなかった。その背景には、技術的な課題や市場ニーズの変化が影響していると考えられる。

まず、スマートウォッチのディスプレイサイズは小さく、指紋センサーを組み込むスペースの確保が難しいという課題がある。特に、Apple Watchはデジタルクラウンやサイドボタンといった操作系を重視しており、指紋認証を搭載するにはデザインの変更が必要になる。Samsungも2018年にディスプレイ内指紋センサーの特許を取得していたが、Galaxy Watchシリーズでは代わりに生体認証を利用しないPINコードによる決済認証が主流となっている。

また、指紋認証の必要性自体がスマートウォッチにおいて低かったことも要因の一つだ。スマートフォンでは、ロック解除やアプリ認証のために指紋認証が便利だが、スマートウォッチは主にスマートフォンと連携して使われるため、PINコードやスマートフォンの認証機能で十分と考えられてきた。特にApple Watchでは、iPhoneと連携することでロック解除やApple Pay決済をスムーズに行えるため、Touch IDの搭載は優先度が低かったのかもしれない。

しかし、Huaweiの技術は指紋認証をセキュリティだけでなく操作インターフェースとして活用するため、これまでのスマートウォッチとは異なる方向性を持っている。もしこの技術が実装されれば、AppleやSamsungが再び指紋認証の導入を検討する可能性もあるだろう。

Huaweiの特許が実用化された場合の影響とは?

Huaweiの指紋認証技術が実際の製品に搭載された場合、スマートウォッチの操作性やセキュリティに大きな変化をもたらす可能性がある。特に、非接触決済においてPINコードを不要にすることで、利便性が向上すると考えられる。

現在、多くのスマートウォッチは決済時にPINコードの入力が求められるが、Huaweiの指紋認証技術を搭載すれば、指を画面に触れるだけで認証が完了する。これは、支払い時の手間を省くだけでなく、セキュリティの強化にもつながる。スマートフォンと違い、スマートウォッチは装着したまま紛失する可能性が低いため、指紋認証が導入されればPINコードよりも安全性の高い決済が実現するかもしれない。

さらに、操作性の面でも影響は大きい。スマートウォッチは画面が小さいため、タップやスワイプといった操作が難しい場面も多い。しかし、Huaweiの技術を活用すれば、指のひねりや長押しといった新しいジェスチャーで直感的に操作できるようになる。これは、特に運動中や手袋を着用している状況など、従来のタッチ操作が難しい場面での利便性向上につながるだろう。

ただし、実際にこの技術が普及するかどうかは、消費者の反応や他メーカーの動向に左右される。過去にはAppleやSamsungが類似の技術を特許化しながらも製品化に至らなかった例があるため、Huaweiの特許も市場のニーズ次第では活用されない可能性もある。とはいえ、指紋認証とジェスチャー操作の融合はスマートウォッチの新たな方向性を示すものであり、今後の展開が注目される。

Source:Android Central