Valveが開発するゲーム向けOS「SteamOS」が、サードパーティ製の携帯ゲーム機にも搭載されることが明らかになった。LenovoはCES 2025でSteamOS搭載の「Legion Go S」を発表し、これを皮切りに他のメーカーもSteamOSを活用したデバイスを展開する可能性が高まっている。

Steam Deck専用だったこのOSが、より多くのハードウェアで利用できるようになれば、携帯PCゲーム機市場に新たな変化が訪れることになる。

この動きには大きなメリットがある一方で、いくつかの懸念点もある。より高性能なハードウェアでSteamOSを動かせるという利点がある反面、Steam Deckの今後の展開に影響を与える可能性も指摘されている。以下では、SteamOSの開放がもたらす利点と課題を整理してみる。

SteamOS搭載の新型携帯ゲーム機は何が変わるのか

SteamOSがSteam Deck以外の携帯ゲーム機に搭載されることで、PCゲームのプレイ環境は大きく変わる可能性がある。すでにLenovoのLegion Go SがSteamOS搭載機として発表されており、今後、ASUSやMSIなど他のメーカーからも類似のデバイスが登場することが予想される。では、具体的にどのような変化が起こるのか。

まず、Steam Deckでは十分なパフォーマンスを発揮できなかったゲームも、より高性能なハードウェアを搭載したデバイスなら快適にプレイできるようになる可能性がある。これまでSteam Deckは、AMDのカスタムAPUを採用し、コストパフォーマンスを重視した設計だった。

しかし、サードパーティ製のデバイスでは、より強力なGPUや最新のプロセッサが搭載されることで、パフォーマンスの大幅な向上が期待できる。また、SteamOSが複数のメーカーに採用されることで、OS自体の最適化が進む可能性もある。SteamOSはLinuxベースのOSであり、Windowsに比べるとゲームとの互換性に課題がある。

しかし、多くのメーカーがSteamOSを採用することで、ドライバの最適化や互換性の向上が進み、Steam Deck以外のハードウェアでもスムーズに動作するようになるかもしれない。この変化によって、従来のWindows搭載携帯ゲーム機との差別化が進むことになる。Windows機は豊富なソフトウェアの互換性を持つが、バッテリー消費や操作の最適化に課題があった。

一方、SteamOSはゲームプレイに特化したシンプルなUIと軽量な動作が魅力だ。今後、SteamOS搭載の携帯ゲーム機が増えることで、「Windows機」か「SteamOS機」かという新たな選択肢が生まれることになるだろう。


Steam Deckの役割は終わるのか?次世代機の行方

SteamOSがサードパーティのデバイスに搭載されることで、Steam Deckの存在意義が問われる状況になってきた。特に、Valveが次世代機「Steam Deck 2」を発表していないことが、その疑問をさらに強めている。では、Steam Deckは今後どうなるのか。

まず、Steam Deckが果たした役割を振り返ると、携帯PCゲーム機市場を確立したことが最大の功績だ。それまでWindowsベースの携帯型PCゲーム機は存在していたが、操作性やゲーム最適化の面で課題が多かった。しかし、Steam DeckはSteamOSを採用し、PCゲームを手軽に遊べる環境を提供したことで、多くのユーザーを獲得した。

一方で、技術の進化は止まらない。2022年に発売されたSteam Deckのハードウェアは、すでに最新のゲーミングPCに比べると性能面で見劣りする部分が出てきた。特に、高解像度やレイトレーシングを活用する最新ゲームでは、Steam Deckのスペックでは快適なプレイが難しくなりつつある。

これが、より高性能なサードパーティ製のSteamOS搭載機の登場を後押ししている要因の一つだ。では、Valveは次世代機を投入するのか。これについては、明確な情報は出ていない。しかし、Valveがハードウェア市場に長く関与しない傾向があることを考えると、Steam Deck 2が登場しない可能性もある。

これまでValveは、Steam MachinesやSteam Linkといったハードウェア製品を投入したが、長期的な展開には至らなかった。今回のSteamOS開放も、ハードウェア事業から距離を置き、ソフトウェアに集中する意図があるのかもしれない。

その一方で、Steam Deckのコミュニティが確立され、多くのユーザーが継続的に利用していることを考えると、Valveが完全にハードウェア開発をやめるとは考えにくい。今後、より高性能なSteam Deck 2が登場するのか、それともSteamOSの進化に任せるのか、Valveの次の動きが注目される。


SteamOSの普及で携帯ゲーム機の標準が変わる?

SteamOSの開放は、単に携帯ゲーム機の選択肢を増やすだけではなく、今後のゲーム機市場全体にも影響を与える可能性がある。特に、現在はWindowsが標準となっている携帯型ゲーミングPC市場において、SteamOSが新たな主流になるかもしれない。

現在、多くの携帯型PCゲーム機はWindowsを搭載しており、PC向けのあらゆるゲームをプレイできることが魅力となっている。しかし、Windowsは本来ゲーム専用のOSではないため、バッテリー消費やUIの使い勝手など、携帯ゲーム機としては最適化されていない部分が多い。SteamOSが普及すれば、こうした課題を解決し、携帯ゲーム機に最適化された環境が標準となる可能性がある。

また、SteamOSが広まることで、ゲーム開発者にとっても影響が出る。これまではPCゲームはWindows環境を前提に開発されることが多かったが、SteamOS搭載デバイスが増えれば、Linux向けの最適化が進む可能性がある。これにより、将来的にはWindowsに依存しないPCゲーム市場が生まれるかもしれない。

ただし、SteamOSがWindowsの地位を完全に奪うとは限らない。現在、Windows搭載の携帯ゲーム機は、エミュレーションやMOD導入などの自由度の高さが強みとなっている。特に、ゲーム以外の用途でも活用できる点はSteamOSにはないメリットだ。ユーザーがどちらの環境を選ぶのか、今後のデバイスの進化によってその流れが決まっていくことになりそうだ。

SteamOSの普及によって、携帯ゲーム機市場のスタンダードが変わるのか、それともWindows機との共存が続くのか。新たな競争が始まった今、その動向が注目される。

Source:Windows Central