最新のスマートフォン向けチップセットとして、MediaTekのDimensity 8400 UltraとQualcommのSnapdragon 8s Gen 3が注目を集めている。両者はTSMCの4nmプロセスで製造され、先進的なCPUアーキテクチャと高性能GPUを備えている。

ベンチマークテストでは、AnTuTuにおいてDimensity 8400 Ultraが179万9330ポイントを記録し、Snapdragon 8s Gen 3の165万4675ポイントを上回った。Geekbench 6のシングルコアテストではSnapdragon 8s Gen 3が優位性を示す一方、マルチコアテストではDimensity 8400 Ultraが6500ポイントを獲得し、対するSnapdragon 8s Gen 3の5684ポイントを凌駕した。

また、3DMark Wild Life Extremeテストでは、Dimensity 8400 Ultraが4086ポイント、Snapdragon 8s Gen 3が3161ポイントと、グラフィックス性能においてもDimensity 8400 Ultraが優勢である。これらの結果から、Dimensity 8400 Ultraは総合的なパフォーマンスでSnapdragon 8s Gen 3を上回る可能性が示唆される。

ただし、実際の使用感やエネルギー効率など、ベンチマークスコアだけでは測れない要素も考慮する必要がある。ユーザーのニーズや使用状況に応じて、最適なチップセットを選択することが重要である。

▼関連記事▼
MediaTek Dimensity 8400、新型Immortalis GPUとA725コアで性能向上の次世代SoC

CPUの設計とパフォーマンスの違いがもたらす影響

Dimensity 8400 UltraとSnapdragon 8s Gen 3は、どちらもTSMCの4nmプロセスで製造されているが、そのCPU設計には大きな違いがある。Dimensity 8400 UltraはCortex-A725コアを中心とした構成を採用し、特にマルチコア性能に強みを持つ。一方で、Snapdragon 8s Gen 3はCortex-X4コアを搭載し、シングルスレッド処理において優れた性能を発揮する。

この違いは、日常の使用シナリオにおいてどのような影響を及ぼすのかを詳しく見ていく。まず、マルチコア性能が求められる場面ではDimensity 8400 Ultraが有利に働く。例えば、高負荷なゲーム、動画編集、AI処理など、多くのコアを並列に動作させるタスクでは、Cortex-A725を複数搭載することで効率的な処理が可能になる。

実際、Geekbench 6のマルチコアスコアでもDimensity 8400 Ultraは6,500ポイントと、Snapdragon 8s Gen 3の5,684ポイントを上回っている。一方、シングルコア性能が求められるタスクではSnapdragon 8s Gen 3のCortex-X4が優位に立つ。システムのレスポンス速度やアプリの起動時間など、単一スレッドの処理速度が重要となるシーンでは、Cortex-X4の高い処理能力が生かされる。

Geekbench 6のシングルコアテストでは、Snapdragon 8s Gen 3が2,048ポイントを記録し、Dimensity 8400 Ultraの1,639ポイントを大きく上回っている。このように、どちらのチップも得意とする分野が異なるため、どの用途を重視するかによって選択肢が変わってくる。

特に、ゲームやクリエイティブ用途を重視する場合はDimensity 8400 Ultraの高いマルチコア性能が有利に働く。一方で、システムのキビキビとした動作や軽量なアプリの動作を重視するならば、Snapdragon 8s Gen 3の方が適していると言えるだろう。


グラフィック性能とゲーム体験の違い

CPUと同様に、GPUの違いもユーザー体験に大きな影響を与える。Dimensity 8400 UltraにはMali-G720 MP7が、Snapdragon 8s Gen 3にはAdreno 735が搭載されており、両者の性能差がベンチマークスコアにも反映されている。特に3DMark Wild Life Extremeテストでは、Dimensity 8400 Ultraが4,086ポイントを記録し、Snapdragon 8s Gen 3の3,161ポイントを上回っている。

この結果からも分かるように、Dimensity 8400 UltraのGPUはより高いグラフィック性能を発揮する傾向にある。これは、特にハイエンドなゲームやVR・ARコンテンツを快適に楽しむ上で重要なポイントだ。

高解像度での安定したフレームレートや、リアルタイムレンダリングの処理能力が求められる場面では、Dimensity 8400 UltraのMali-G720 MP7の優れたパフォーマンスが活きてくる。一方で、Snapdragon 8s Gen 3のAdreno 735も決して劣っているわけではない。

SnapdragonシリーズのAdreno GPUは、ドライバの最適化が優れており、特定のゲームタイトルにおいてはDimensity 8400 Ultraを上回る可能性もある。特に、Snapdragon Elite Gamingの機能を活用することで、よりスムーズなフレームレートや、特定のゲームに最適化されたグラフィックス設定が利用できる点は強みと言える。

また、発熱と消費電力の面でも違いがある。一般的にMali系GPUは高性能な分だけ発熱が大きくなる傾向があるため、ゲーム中の温度管理が課題になることもある。Snapdragon 8s Gen 3は発熱の抑制が比較的優れており、長時間のゲームプレイでも安定した動作を維持しやすい。この点も、ゲーム用途での選択を考える際には重要な要素となる。

総合的に見れば、Dimensity 8400 UltraのGPUは純粋なグラフィック処理能力で優勢だが、Snapdragon 8s Gen 3は最適化の面で優れた部分がある。それぞれの特徴を理解し、自分のプレイスタイルに合った選択をすることが重要だ。


AI処理や通信性能の違いがもたらす実用面での影響

スマートフォンのチップセットにおいて、AI処理能力や通信性能も重要な要素となる。Dimensity 8400 UltraはNPU 980を、Snapdragon 8s Gen 3はHexagon NPUを搭載しており、AI関連の処理能力が異なる。具体的な数値としては公開されていないが、AIによる画像処理やリアルタイム翻訳、カメラ機能の強化など、多くの場面で影響を与える。

例えば、AIによるカメラ最適化では、Dimensity 8400 Ultraは最大320MPのカメラをサポートし、Snapdragon 8s Gen 3は最大200MPに対応している。この差は、超高解像度カメラを搭載したスマートフォンにおいて重要な要素となる。一方で、AIによる画像処理の最適化や、被写体認識の精度など、ソフトウェアの調整によってはSnapdragon 8s Gen 3が優れる場合もある。

通信性能の面では、Snapdragon 8s Gen 3がWi-Fi 7に対応している点が強みとなる。より高速な無線通信が可能であり、特に大容量データのダウンロードや、クラウドゲームのプレイ時に有利に働く。対して、Dimensity 8400 UltraはWi-Fi 6対応にとどまるものの、ピークダウンロード速度は5.1Gbpsと十分に高速であり、一般的な使用において大きな差を感じることは少ないだろう。

また、Bluetoothのバージョンにも違いがある。Dimensity 8400 UltraはBluetooth 6に対応しており、より安定した接続性や低遅延のオーディオストリーミングが可能となる。対するSnapdragon 8s Gen 3はBluetooth 5に対応しているが、最新のSnapdragon Sound技術による高品質なオーディオ体験を提供できる点が強みとなる。

このように、AI処理や通信性能の違いは、日常のスマートフォンの使い勝手にも影響を与える。写真撮影やワイヤレス接続を重視する場合は、どちらのチップが自分の用途に適しているかを見極めることが重要だ。

Source:TechnoSports