Nvidiaの新しいミドルレンジGPUであるRTX 5060 TiRTX 5060が、3月に発表される可能性が浮上している。台湾のハードウェアメーカーChaintechが公開したスライドによれば、これらのモデルはRTX 5070 TiやRTX 5070に続いて登場する見込みだ。

ただし、NvidiaがCES 2025で発表を見送ったことから、情報の正確性には注意が必要である。また、ChaintechはNvidiaが新しいRTX 50シリーズの平均販売価格(ASP)を引き上げる計画があると示唆している。

この価格上昇がRTX 5060シリーズにも適用されるのか、それともハイエンドモデル限定なのかは定かではない。さらに、ユーラシア経済委員会(EEC)の申請情報によれば、RTX 5060 Tiには8GB版と16GB版の2種類が存在する可能性がある

価格設定によっては、競争が激化するAMDのRDNA 4シリーズに対し、市場での立ち位置が大きく左右されることになるだろう。

RTX 5060 TiとRTX 5060のVRAM仕様がもたらす影響とは

RTX 5060 Tiには8GB版と16GB版の2種類が存在すると報じられている。これは過去のRTX 4060 Ti 16GBの評価と密接に関連しており、前世代の16GBモデルは価格が499ドルと高額だったにもかかわらず、性能向上が期待外れであったため、多くの批判を受けた。この経験を踏まえると、RTX 5060 Tiの16GB版が成功するためには、単なるVRAM増加だけでなく、メモリ帯域やアーキテクチャの最適化が重要なポイントになる。

さらに、VRAMの容量だけでなく、バス幅がどの程度確保されるかも大きな要因となる。現時点で予測されている128ビットメモリインターフェースでは、特に高解像度環境では帯域幅の制約が問題となる可能性がある。RTX 4060 Tiも同様の128ビット構成だったが、競合のAMD製GPUと比較して広帯域が確保されていなかったため、特定のゲームタイトルではパフォーマンスが伸び悩んだ経緯がある。

仮にRTX 5060 Tiの16GB版が適切なメモリ帯域を持たず、消費電力の最適化も不十分であれば、前世代の4060 Ti 16GBと同様の評価になりかねない。一方で、RTX 4060 Tiの価格設定が499ドルだったことを踏まえると、RTX 5060 Ti 16GBが400ドル程度で投入される場合、前世代よりも評価は改善される可能性がある。対するAMDも、Radeon RX 9060/9050シリーズのVRAM仕様次第で優位性を持つ可能性があるため、メモリ容量が競争のポイントとなるだろう。

RTX 5060シリーズのチップ構成とRTX 5070との関係性

RTX 5060 TiとRTX 5060の具体的なチップ構成については正式な発表はないものの、GB206やGB207といったAda Lovelace Refreshのダイが使用される可能性があるとされている。GB206は36基のSM(4,608基のCUDAコア)を搭載する可能性があり、メモリインターフェースは128ビットとなる見込みだ。一方、RTX 5060に関しては、GB207が適用されるかどうかが議論の的となっている。

問題は、RTX 5060にGB207を使用した場合、CUDAコアが2,560基に抑えられることだ。これでは、RTX 4060からの大幅な性能向上が見込めない可能性がある。RTX 4060のVRAMが8GBであることを考慮すると、同じ8GB仕様では競争力が不足するかもしれない。一方で、RTX 5070にはGB205のフルスペック版が採用されており、RTX 5060 Tiがそのカットダウン版である場合、RTX 5070との差別化が鍵となる。

また、RTX 5070とRTX 5060 Tiの間に性能差が大きすぎると、RTX 5060 Tiが市場で中途半端なポジションになる可能性がある。前世代のRTX 4060 TiとRTX 4070の関係に似た状況になれば、RTX 5060 Tiの価格と性能のバランスが問われることになるだろう。特にRTX 5070が12GBのVRAMを持ち、メモリバス幅も広い場合、RTX 5060 Tiの16GB版がどのようなポジションを取るかが注目される。

AMDのRDNA 4シリーズがもたらす市場競争の変化

NvidiaがRTX 5060シリーズの価格戦略をどのように決定するかは、AMDの次世代RDNA 4シリーズの動向とも密接に関連している。AMDは2025年3月に新GPUを発表するとされており、特にRadeon RX 9060/9050シリーズがRTX 5060 TiおよびRTX 5060と競合することになる。RDNA 4の詳細な仕様は明らかになっていないが、前世代のRX 7600シリーズと比較して、エネルギー効率やレイトレーシング性能の向上が予想されている。

AMDの戦略として、RDNA 4世代ではNvidiaに対して価格面で優位に立つことが期待される。過去の傾向を考えると、NvidiaのRTX 4060シリーズが競争力のある価格を維持できたのは、AMDのRX 7600が299ドルという低価格で投入されたことが影響している。同様に、AMDがRDNA 4シリーズでRTX 5060シリーズよりも低価格かつVRAM容量を増やしたモデルを投入すれば、Nvidiaは価格調整を迫られる可能性がある。

一方で、RDNA 4シリーズはAI活用やレイトレーシング性能の向上がどこまで実現されるかが課題となる。NvidiaはDLSSを進化させ、RTX 50シリーズではAI処理をさらに強化すると見られている。AMDが従来のFSR技術を強化し、DLSSとの差を縮められれば、RDNA 4シリーズの競争力は大きく向上するだろう。

価格競争と性能競争の両面で、RTX 5060シリーズとRDNA 4シリーズの戦いは市場の注目を集めることになりそうだ。Computex 2025のタイミングで両社の動きがさらに明らかになる可能性があるため、今後の展開に期待したい。

Source:Tom’s Hardware