Appleは、12月に量産が開始される見込みの新モデル「iPhone SE 4」で、初の自社製5Gモデムを搭載する予定といわれている。この自社製モデムの導入により、Qualcommへの依存度を低減し、製造コストの削減が見込まれる。また、Appleのハードウェアとソフトウェアの制御がより強化され、バッテリー寿命の向上も期待される。

今回のモデルには非フラッグシップとしては異例の新技術が搭載され、Appleのチップ自社化戦略の重要な一歩となる可能性がある。Appleが長年取り組んできた「完全自社設計」を具現化し、将来的なさらなるコスト効率と技術的優位性が狙われている。

Appleが挑む5Gモデムの自社開発とその狙い

Appleは、iPhone SE 4に搭載する初の自社製5Gモデムで、長年依存してきたQualcommからの独立を試みている。この戦略は、通信技術の重要性が増す中で、同社の自社開発チップがデバイスの性能やユーザー体験に直接影響を与えると考えられているためである。Appleは、こうした取り組みによりハードウェアとソフトウェアを統合しやすくし、バッテリー寿命の向上や、全体的な端末のパフォーマンス最適化を図る。

特に、5G通信において高い品質が求められる現代、Appleの独自モデムが提供するシームレスな体験は、既存のQualcommモデムに依存した構造を超えた、次世代の体験を提示するものと期待されている。ただし、Wccftechが報じたように、Qualcommが2027年までのサプライ契約を維持しているため、Appleが完全に脱却するには一定の時間がかかる可能性がある。したがって、SEシリーズへの試験導入は、今後の全機種搭載に向けた準備段階であると考えられる。

コスト削減と競争力強化の両立を目指すAppleのモデム戦略

iPhone SE 4に自社製5Gモデムを導入することで、AppleはQualcommに支払うコストを大幅に削減できる見込みである。TD Cowenの推計によれば、1ユニットあたりのQualcomm製モデムのコストは28ドルであり、AppleがiPhone 16シリーズを9000万台出荷した場合、Qualcommの収益は25億2000万ドルに達する。Appleが自社製モデムを導入することで、この莫大なコストを抑えつつ、価格競争力を高められる可能性がある。

iPhone SE 4は、価格を抑えた製品ラインとして位置づけられ、消費者にとって手頃な選択肢であると同時に、Appleの収益性向上に寄与する。Appleがコスト削減に成功すれば、次世代の製品でも同様の戦略が活用され、低価格帯モデルだけでなくフラッグシップモデルにも影響を与える可能性がある。Appleが自社製モデムによって持続的なコスト競争力を確保し、収益のさらなる増加を目指す一環である。

技術革新の加速とAppleの将来展望

Appleが5Gモデムの自社開発に踏み切った背景には、技術的優位性を確保し、製品競争力を強化する狙いがある。Appleのハードウェア技術担当役員であるJohny Srouji氏は、かねてより自社製セルラーチップ開発の重要性を強調してきた。これは単に性能向上を目指すだけでなく、Appleが独自に技術革新を進め、他のメーカーとの差別化を図る戦略でもある。

また、Appleが自社モデムを通じてハードウェアとソフトウェアの最適化を一層進めることで、将来的な製品開発においても一貫した体験を提供できると予測される。iPhone SE 4はその第一歩に過ぎず、これが成功を収めれば、Appleのチップ戦略はさらに加速するであろう。