アップルのOLED iPad Proは、画期的なディスプレイ技術と超薄型デザインで大いに期待されたものの、販売は大きく期待を下回っている。2024年第3四半期時点で、出荷台数は当初の予測を大きく下回り、さらに年末までにさらなる減少が見込まれている。

特に13インチモデルは、90%近い出荷減少が予測されており、価格設定が販売不振の一因とされている。この結果、消費者にとって高価格帯のタブレットは魅力を欠く存在となっている。

画期的な技術とデザインにも関わらず販売低迷

2024年に登場したOLED iPad Proは、薄さ0.2mmという市場で最も薄いディスプレイパネルを採用し、圧倒的なビジュアル品質を誇る。しかし、その技術的優位性にもかかわらず、消費者の興味を引くことはできなかった。

5月の発売当初は大きな期待を集めていたが、実際の販売は予想を大幅に下回り、アップルのマーケティング戦略にも疑問が投げかけられている。特に第3四半期に入ってからの出荷台数の減少は顕著で、さらに年末に向けて販売が40%落ち込む見通しだ。

大きな技術的進化をもたらしたこの製品が、なぜ市場で失敗したのか。価格と機能のバランスが消費者にとって納得のいくものでなかった可能性がある。加えて、前モデルのiPad Proも依然として高い性能を維持しており、ユーザーがアップグレードする動機を見出せなかったのも一因である。

高価格がユーザーに敬遠される主な要因

OLED iPad Proの価格は、11.1インチモデルが999ドル、13インチモデルが1,299ドルと、タブレットとしては高価格帯に位置する。特に、タブレットはスマートフォンやノートパソコンの補完的なデバイスとして見られることが多く、必需品ではないため、この価格設定が消費者にとって大きなハードルとなった。

家計に圧力がかかる昨今、消費者は価格に敏感になっており、OLEDディスプレイや高速なM4プロセッサを搭載しているとはいえ、これに1,000ドル以上を費やすことは難しいと感じるユーザーが多い。また、既存のiPad Proシリーズでも十分な機能が提供されているため、価格差に見合う価値を感じられない点が、販売不振の原因となっている。高価格が新規購入者だけでなく、既存のユーザーにも敬遠される結果を生んだ。

タブレットの長寿命とアップグレード需要の乏しさ

iPadシリーズの長寿命が、今回のOLED iPad Proの販売不振に大きく影響を与えている。タブレットはスマートフォンと異なり、頻繁に買い替える必要がなく、性能的にも数年間使用できることから、ユーザーが新しいモデルにアップグレードする動機は少ない。

特に、前モデルのiPad ProがM2プロセッサとMiniLEDディスプレイを搭載しており、現時点での使用感に不満を感じるユーザーは少ない。OLEDディスプレイへの切り替えが、日常使用において劇的な変化をもたらすものではないことから、ユーザーにとっては高額な新型モデルを購入する理由が見つからない。技術の進化が求められる中、実際の使用環境での違いが見えにくいことが、販売の停滞に繋がっている。

OLEDディスプレイの必要性を疑問視する声も

OLEDディスプレイは確かに鮮明な色彩と優れたコントラストを提供するが、iPad Proのターゲットユーザーにとって、その必要性を感じるかは疑問視されている。特に、前世代のMiniLEDディスプレイでも十分に高品質な表示が可能であり、OLEDディスプレイへのアップグレードは視覚的な改善があっても、実質的な価値をユーザーに訴求できていない。

また、OLED技術は主にテレビやスマートフォンでの使用が一般的であり、タブレット市場での需要は限定的である。多くのユーザーにとって、OLEDの高画質はあまりにも過剰であり、日常の使用においてその恩恵を感じる場面が少ない。結果として、よりコストパフォーマンスの高いモデルに目が向けられ、OLED iPad Proの需要が減少していると言える。