Metaは本日、初代Oculus Questヘッドセットに対するストアアプリのアップデート提供を終了した。これにより、開発者は新たなアプリ更新をQuest 1向けに提供できなくなる。同社は2023年1月に段階的なサポート終了を発表しており、OSの最終アップデートは2023年2月のv50、セキュリティアップデートも2024年8月で終了している。
現在、Quest 2やQuest 3などの後継機種が主流となっており、初代Questの性能やユーザー数の減少から、今回の決定は避けられないものと考えられる。初代Questユーザーは引き続き既存のアプリを利用できるが、セキュリティリスクを考慮すると、新しいヘッドセットへの移行が推奨される。
Metaは下取りプログラムを提供していないため、ユーザーは新機種を購入する際に全額を負担する必要がある。最も手頃な選択肢として、現在約300ドルで販売されているQuest 3Sが挙げられる。
Quest 1がVR業界にもたらした影響とその限界
初代Oculus Questは2019年に登場し、スタンドアロン型VRヘッドセットとして市場に大きなインパクトを与えた。それまでのVRはPCやゲーム機との接続が必須だったが、Questは単体で動作する設計を採用し、手軽にVRを体験できる環境を実現した。これにより、VRの普及が加速し、ゲームだけでなく、フィットネスやソーシャルアプリの分野でも活用されるようになった。
しかし、技術的な制約は大きかった。搭載されたSnapdragon 835は、発売当時すでに2年前のスマートフォン向けチップセットであり、グラフィック処理能力は限られていた。特に、後継機となるQuest 2がSnapdragon XR2を採用したことで、性能の差は顕著になり、多くの開発者がQuest 1のサポートを縮小していった。
さらに、Quest 2以降で採用された高度なレンダリング技術や、ハンドトラッキングの向上など、ハードウェア的な進化もQuest 1には適用されなかった。その結果、Quest 1ユーザーは次第に最新アプリから取り残される形となった。
すでに多くの人気タイトルがQuest 2以降を前提とした開発を進めており、Quest 1向けの最適化は省かれていた。そのため、今回のストアアプリの更新終了も、事実上のサポート終了として受け止められている。
Metaが下取りプログラムを提供しない理由とは
Quest 1のサポート終了を受けて、多くのユーザーが次の選択肢を模索している。しかし、Metaは旧モデルからの乗り換えを支援する下取りプログラムを提供していない。AppleやGoogleなど、他のハードウェアメーカーが新モデルへの移行を促す下取り制度を設けているのとは対照的な動きだ。
その背景には、Metaの製品展開戦略が関係していると考えられる。Questシリーズは競争力のある価格設定を強みとしており、特にQuest 2やQuest 3Sは従来のVRヘッドセットと比べて低価格で提供されている。
下取り制度を導入すれば、企業としての利益率がさらに圧迫される可能性がある。また、Quest 1のチップセットや内部コンポーネントは最新機種と大きく異なるため、リサイクルや再利用のコストが高くつくことも影響しているかもしれない。
一方で、ユーザーにとっては下取り制度がないことによる負担は大きい。Quest 1の中古市場価格は大幅に下落しており、売却益で新機種を購入することも難しい。結果として、Quest 1ユーザーは新機種を定価で購入するしかない状況に置かれている。こうした点を踏まえると、Metaが今後も同様の戦略を続ける場合、既存ユーザーの不満が高まる可能性もある。
Quest 1ユーザーは今後どうするべきか
サポート終了が発表されたとはいえ、Quest 1のハードウェア自体が突然使えなくなるわけではない。現在の所有者は引き続き既存のアプリをプレイできるし、一部の開発者はQuest 1向けの非公式サポートを継続する可能性もある。しかし、セキュリティアップデートが2024年8月で終了するため、長期的な使用はリスクを伴う。
また、Quest 1で利用できるアプリの数は今後さらに減少すると考えられる。すでにMetaの最新SDKではQuest 1のサポートが外されており、新しい機能を活用するアプリは動作しなくなる可能性が高い。特に、Quest 3のミックスリアリティ機能や高度なレンダリング技術を活用したタイトルは、Quest 1では完全に非対応となるだろう。
そうした状況を踏まえると、Quest 1ユーザーにとって最も現実的な選択肢は、新しいヘッドセットへの移行だ。Quest 3は高性能なオプションだが、コストを抑えたい場合はQuest 3Sが手頃な選択肢となる。いずれにせよ、VRを快適に楽しみ続けるためには、新しい技術への適応が求められる。
Source:UploadVR