2024年のスマートフォン市場は前年比4%の出荷増を記録し、成長基調に戻った。主要メーカーの出荷台数は減少したものの、平均販売価格(ASP)の上昇が収益増加を支えた。

特にAppleのiPhoneはASPが900ドルを突破し、新記録を達成。市場全体のASPも前年比1%増の356ドルとなった。収益シェアではAppleが46%を占め、Samsungの15%を大きく上回る結果となった。

この動きの背景にはProシリーズの人気と新興市場への進出があると分析されており、今後もAppleの市場支配力が続く可能性が高い。

iPhoneのASP上昇が示す市場の変化とProシリーズの影響

AppleのiPhoneが平均販売価格(ASP)900ドルを突破した背景には、Proシリーズの販売比率の増加がある。Counterpoint Researchのレポートによると、Appleの製品ラインナップにおいてProモデルの人気が高まり、特にハイエンド機種への需要が強まっているという。

この動きの要因の一つは、ハードウェア性能の向上だ。A17 Proチップの搭載や、カメラ性能の強化、高精細なディスプレイの採用が、ユーザーにとって魅力的なポイントとなっている。さらに、AppleがProモデル向けに差別化を図っていることも影響している。たとえば、iPhone 15 Proシリーズでは、チタニウム素材の採用や、アクションボタンの追加といった独自の仕様が搭載されており、これが価格の上昇と販売台数の減少を補う要因となっている。

また、Appleのエコシステムの強固さもASP上昇の一因と考えられる。iOSの長期サポートや、iCloudをはじめとしたサービスの充実が、ユーザーの機種変更時の選択肢をApple製品に絞る要因になっている。さらに、AirPodsやApple Watchとのシームレスな連携も、Apple製品を継続的に選ぶ理由となっている。

今後もProシリーズの人気は継続する可能性が高い。Appleは、より高度なAI機能や、カメラ性能の向上、バッテリー技術の革新を進めることで、ハイエンド市場での競争力を維持し続けるとみられる。結果として、iPhoneの平均販売価格はさらに上昇する可能性がある。

収益シェアでAppleが圧倒的優位を維持する理由

AppleのiPhoneは市場全体の収益の46%を占め、競合と大きく差をつけている。対照的に、Samsungのシェアは15%にとどまり、その他のメーカーは1桁台にとどまっている。この大きな格差は、単なる販売台数の違いではなく、Appleのブランド力と価格戦略が大きく関係している。

Appleの収益シェアが高い理由の一つに、高価格帯モデルの売上比率の高さが挙げられる。他のメーカーと異なり、Appleはミドルレンジやローエンド市場に本格参入せず、高付加価値なデバイスの提供に特化している。これにより、1台あたりの収益が競合よりも大幅に高い水準となる。また、Appleは値下げ戦略をほとんど採らず、新機種発売後も旧モデルの価格を維持する傾向があるため、販売価格の安定性が高い。

さらに、Appleの収益モデルにはハードウェア以外の要素も含まれている。App Store、iCloud、Apple Musicといったサービス収益が継続的に伸びており、iPhoneの販売を超えてエコシステム全体の利益を生み出している。これにより、ユーザーが他のブランドに移行しにくくなり、結果的にAppleの市場支配力が維持される。

この収益構造は今後もAppleにとって大きな強みとなるだろう。市場全体が成熟する中で、単純な出荷台数ではなく、1台あたりの収益を最大化する戦略がより重要になっている。Appleは引き続きこの方向性を維持し、スマートフォン市場の収益の中心であり続けると考えられる。

スマートフォン市場の成熟と今後の成長要因

世界のスマートフォン市場は、出荷台数が前年比4%増となったものの、成熟化の兆しを見せている。市場全体の成長率は鈍化しつつあり、端末の買い替えサイクルが長期化していることが背景にある。しかし、特定の技術進化が新たな成長要因となる可能性もある。

まず、低価格帯の5Gスマートフォンの普及が市場を押し上げる要素の一つとされている。現在、5G対応機種の価格は徐々に下がりつつあり、より広範なユーザー層にとって手が届きやすくなっている。特に、新興国市場ではこの傾向が顕著で、手頃な価格の5G端末が今後の需要をけん引すると予測されている。

また、生成AI(GenAI)のスマートフォンへの統合も新たなトレンドとして注目されている。AIを活用したカメラ機能の向上、音声アシスタントの進化、リアルタイム翻訳といった機能が搭載されることで、スマートフォンの新たな付加価値が生まれている。Counterpoint ResearchのアナリストであるShilpi Jain氏も、2024年の重要なトレンドとしてAIの進化を挙げており、これが今後の成長要因となる可能性がある。

一方で、ハードウェアの進化だけでなく、エコシステムの強化も重要視されている。AppleやSamsungは、スマートフォン単体ではなく、タブレットやスマートウォッチ、ワイヤレスイヤホンといったデバイスとの連携を強化することで、ユーザーの囲い込みを進めている。この傾向は今後さらに加速し、スマートフォン市場全体の成長にも影響を与えるだろう。

市場が成熟する中でも、新技術や新たな消費者の需要が成長を支える可能性がある。2025年以降の市場動向は、これらの要素がどの程度影響を及ぼすかによって大きく左右されるだろう。

Source:Neowin