AppleがM3チップ搭載のiPad Airと、A16チップを採用した新型エントリーiPadを発表した。しかし、驚くべきことにA16搭載iPadはApple Intelligence(AI機能)をサポートしない。
iPhone 16シリーズを含むAppleの最新製品群はAI機能を中心に設計されてきたが、エントリーiPadではAI非搭載を選択。この決定は低価格モデルとしてのコスト重視の結果と考えられるが、同じくコスト面でAI機能が難しかったはずのiPhone SEは販売終了となっている。この矛盾は、Appleの製品戦略に疑問を投げかける。
特に教育市場に適したエントリーiPadこそ、Apple Intelligenceの恩恵を受けるべきではなかったのか。AppleのAI戦略の一貫性が問われる展開となった。
AppleのエントリーiPadがAI非対応で登場 その理由とは?

Appleが発表した新型エントリーiPadは、A16チップを搭載しながらもApple Intelligence(AI機能)をサポートしない仕様となっている。最新のiPhone 16シリーズやMacはAI機能を前提としたアップデートが行われてきたが、このエントリーiPadはその流れに乗らなかった。
その背景には、価格の抑制という明確な理由があると考えられる。Appleのエントリー向けiPadは教育市場や一般消費者向けの廉価モデルとして位置付けられ、最優先されるのはAI機能ではなくコストパフォーマンスである。Apple Intelligenceを活用するには高性能なニューラルエンジンや十分なRAMが必要となるが、それらを省略することで本体価格を349ドルに据え置くことが可能となったのだ。
また、ターゲット層にAI機能の優先度が低いことも影響していると考えられる。iPadを学習用や動画視聴、基本的な作業に使用するユーザーにとっては、最先端のAI機能よりも価格の安さやバッテリーの持ち、長期的なサポートのほうが重要となる。この方針は理解できるが、一方で他の製品ラインナップとの一貫性の欠如を指摘する声もある。
iPhone SEは廃止されたのに なぜエントリーiPadは存続したのか
今回の発表で大きな疑問を生んだのが、AI非対応のエントリーiPadが継続する一方で、同じく低価格帯のiPhone SEが廃止された点である。AppleはiPhone 16シリーズをAI対応へとシフトし、その流れの中でiPhone SEを市場から撤退させた。しかし、AIを重視しない低価格のデバイスが今もiPadのラインナップには残されている。
iPhone SEの廃止は、Appleが「AI非対応のデバイスはこれからの市場に不要」と判断した結果とされていた。しかし、新型iPadがAIを搭載しない仕様で登場したことで、その理由に疑問が生じる。もしAppleが本当にAIをすべての製品に標準装備するつもりだったならば、エントリーiPadも同様にApple Intelligenceに対応するべきだったはずだ。
では、なぜiPhone SEは廃止され、エントリーiPadは存続したのか。その要因のひとつに、価格設定の違いがある。AppleはiPhoneの価格帯を引き上げる方針を取っており、最も安価なiPhone 16eでさえ599ドルからとなっている。一方、iPadはより幅広い価格帯を維持し、エントリーモデルが349ドルで提供され続けている。この価格差が、製品戦略の違いに反映された可能性がある。
もうひとつ考えられるのは、ターゲットユーザーの違いだ。iPhone SEは主にコストを重視する一般ユーザー向けだったが、エントリーiPadは教育市場や家庭用端末としての需要がある。Appleは低価格スマートフォン市場よりも、低価格タブレット市場のほうが依然として価値があると判断したのかもしれない。
AI機能のあるべき姿 Appleの戦略に求められる一貫性
Appleはここ1年間でApple Intelligenceを中心に据えた製品展開を進めてきた。Macには16GB RAMを標準搭載し、AI処理の強化を図り、iPhone 16シリーズもAI機能を全面に押し出している。しかし、今回のエントリーiPadにはAI機能が搭載されていない。この決定には合理的な面もあるが、一方でAppleのAI戦略に対する一貫性が疑われる結果となった。
特に、エントリーiPadは教育市場での利用が想定されるデバイスであり、Apple Intelligenceの「Writing Tools」や「ChatGPT統合」などの機能が有効に活用できるはずだった。学校や教育機関にとって、AI機能を活用した学習支援ツールは今後ますます重要になる。しかし、Appleはその市場に向けたiPadをAI非対応のまま投入した。
さらに、Appleが「AI非搭載のiPhone SEは市場に不要」と判断したのであれば、同じ論理がエントリーiPadにも適用されるべきだった。AIが標準搭載されるべきなのか、それとも選択肢のひとつとして提供されるべきなのか。Appleの製品戦略には、今後さらなる整理が求められる。
結果として、Apple Intelligenceは「どのデバイスに必須で、どのデバイスでは不要なのか」という点が曖昧なままだ。Appleが今後の製品展開でどのようにAI機能の導入を進めていくのか、今後の動向に注目が集まる。
Source:9to5Mac