AMDは、Ryzen AIおよびRadeon GPUでDeepSeek R1 AIモデルをローカル実行するための手順を発表した。これにより、ユーザーは強力な「チェイン・オブ・ソート」モデルをPC上で簡単に動作させることが可能となる。対応するRyzen CPUやRX 7000シリーズGPUを搭載したマシンで動作し、最適化されたワンクリックインストーラー「LM Studio」が提供されている。
DeepSeek R1は、小型化と高効率化が進められたAIモデルで、従来の大規模モデルと比較して11倍の低コストで運用できる点が特徴だ。特定のAMD GPUでは最大「DeepSeek-R1-Distill-Qwen-32B」までの大規模言語モデルを処理可能で、Ryzen AI Max+ 395では最大70Bパラメータまで対応する構成も存在する。
さらに、この新AIモデルの登場により、競争が激化。Nvidiaの株価が大幅に下落する事態も発生した。DeepSeek R1は、NvidiaやAMDだけでなくHuaweiのAscend AI GPUにも対応し、中国製ハードウェアでも高性能な推論を実行可能としている。
DeepSeek R1をAMDハードウェアで動作させるための具体的な手順
AMDは、Ryzen AIおよびRadeon GPUでDeepSeek R1 AIモデルを実行するための詳細な手順を発表した。まず、このAIモデルをローカル環境で活用するためには、AMDのオプションドライバー「Adrenalin 25.1.1」のインストールが推奨されている。
特に、RX 7000シリーズのデスクトップGPUやXDNA NPUを搭載したRyzen CPUを利用する場合、これらのドライバーが動作の安定性を高める要因となる。DeepSeek R1の導入には「LM Studio」が最適化されており、AMD向けのワンクリックインストーラーが提供されている。
これにより、従来の手作業によるセットアップと比較して、よりスムーズにAIモデルをPC上で実行できる。特に、LLM(大規模言語モデル)の実行環境を構築するためには、適切なメモリ容量の確保が重要となる。
例えば、RX 7600 XTでは「DeepSeek-R1-Distill-Qwen-14B」までのモデルがサポートされるが、RX 7900 XTXでは「DeepSeek-R1-Distill-Qwen-32B」まで対応可能となっている。また、モバイル向けのRyzen 8040および7040シリーズAPUは最大32GBのRAMを搭載し、Ryzen AI Max+ 395では「DeepSeek-R1-Distill-Llama-70B」のようなさらに大規模なモデルも扱える。
ただし、より高度なAIモデルを動作させるためには、64GB以上のRAMが求められるケースもある。AMDが今回示した詳細な実行手順は、より多くのユーザーがローカル環境でAIモデルを活用するための大きな一歩となるだろう。
DeepSeek R1の特徴と計算効率の向上がもたらす影響
DeepSeek R1は、従来の大規模AIモデルと比較して11倍の低コストで計算を実行できる点が際立つ。この効率の向上は、GPUの最適化技術によるものであり、特にAMDやNvidiaの最新ハードウェアでその恩恵を受けられる。
この技術の進化により、個人のPC環境でも高性能なAI処理が可能となり、これまでクラウドベースでしか実行できなかったような大規模なAI推論がローカルで完結するケースも増えてくるだろう。従来のAIモデルは、高性能なデータセンター向けGPUを必要とし、その運用コストが膨大だった。
しかし、DeepSeek R1の登場により、一般的なコンシューマー向けハードウェアでも実用的な性能を発揮できるようになった。特に、NvidiaのPTX(Parallel Thread Execution)プログラミングの活用によって、計算負荷を効率的に分散し、最適なリソース管理を実現している。
この進化は、AIモデルの普及を加速させるだけでなく、ハードウェアメーカー間の競争をより一層激化させる要因にもなっている。実際、DeepSeek R1の登場後、Nvidiaの株価が大幅に下落し、時価総額が5890億ドル減少するという影響も見られた。この変化は、単なるAI技術の進化にとどまらず、市場全体の動向にも大きな影響を及ぼしていることを示している。
AMDとNvidiaの競争が生む新たなAIエコシステムの可能性
DeepSeek R1は、AMDのRyzen AIやRadeon GPUだけでなく、NvidiaのハードウェアやHuaweiのAscend AI GPUでも動作する。これにより、特定のプラットフォームに依存しない柔軟なAIモデルの運用が可能となり、より多くのユーザーがその恩恵を受けられるようになった。特に、中国国内でのAI開発が活発化する中、HuaweiのAscend GPUへの対応は戦略的な意味合いも持つ。
AMDにとって、この動きはNvidiaとの競争において重要な位置を占める。従来、AI分野ではNvidiaが圧倒的なシェアを持っていたが、Ryzen AIやRadeon GPUの最適化が進むことで、より多くの開発者やエンドユーザーがAMD製品を選択する可能性が高まっている。
特に、XDNA NPUを搭載したRyzenプロセッサは、消費電力を抑えつつ高いAI処理能力を発揮できる点で注目されている。一方で、DeepSeek R1のようなモデルがさらに進化すれば、より軽量かつ高性能なAIシステムの開発が進む可能性がある。
特に、個人のPC環境でAIモデルを自由に動作させられるようになれば、クリエイティブ用途や開発分野だけでなく、日常的なアプリケーションにもAIが浸透していくことになるだろう。今後、AMDとNvidiaの競争がさらに激化することで、AI技術の進化がどのような形で実現していくのかが注目される。
Source:Tom’s Hardware