2024年のスマートフォン市場は、2年間の低迷を乗り越え回復基調を見せ、世界全体で12億4,000万台の出荷を記録した。国際データコーポレーション(IDC)のデータによると、第4四半期単独では前年同期比2.4%の増加となり、成長の波は6四半期連続で続いている。

この中でAppleのiPhoneは、市場シェアおよび出荷台数の両面で首位を維持し、プレミアム市場における強さを再確認させた。特に中国や新興市場の競争が激化する中、低価格帯デバイスを強化しながら成長を遂げた中国企業の台頭が全体を牽引。一方で折りたたみ型スマートフォン市場は需要が低迷し、AI技術への注力が加速している。

世界スマートフォン市場の成長要因と地域別動向

2024年のスマートフォン市場は、経済環境の影響を受けつつも多様な戦略によって成長を遂げた。IDCの報告によれば、第4四半期の出荷台数は前年同期比2.4%増の3億3,170万台となり、これは消費者の需要回復と更新サイクルの拡大が寄与した結果である。特に、主要市場である中国や新興国の購買力が、スマートフォン需要を支える重要な要素となった。

中国市場ではHuaweiやXiaomiといったブランドがプレミアム機種を含む広範なラインナップを展開し、競争をリードした。一方で、欧州やアフリカ市場では新興勢力がシェアを拡大し、地域ごとの戦略の違いが明確化している。特に、Transsionが手頃な価格のデバイスを提供し、成長を加速させたことが注目に値する。これらの戦略は、スマートフォン市場が従来の先進国主導型モデルから多極化へと進化していることを示唆している。

また、途上国では無利子ファイナンスプランや下取りキャンペーンが消費者心理に影響を与え、購買行動を後押ししている。しかしながら、各地域における経済状況の違いは市場成長に複雑な影響を及ぼしており、インフレや関税政策が今後の課題となるだろう。

AppleとSamsungの市場シェア縮小と競合勢力の台頭

市場のリーダーであるAppleとSamsungは、第4四半期および年間を通じて依然トップ2を維持したものの、出荷台数と市場シェアが前年同期比で減少した。これには、中国企業が低価格帯デバイスや成長戦略を積極展開したことが影響している。特にXiaomiは、トップ5企業の中で最も高い成長率を記録し、第3位を確保した。

IDCのナビラ・ポパル氏によれば、多様な価格帯での製品提供や積極的なプロモーション戦略が功を奏し、新興市場を中心にユーザー層の拡大が見られた。また、HuaweiやOPPOなどが欧州やアジア市場で高い存在感を示しており、これらの企業の国際展開が市場競争を一層激化させている。

一方で、AppleはiPhone 16シリーズでプレミアム層の支持を維持し、特に新素材であるチタンを採用したデザインが消費者の注目を集めた。しかし、新たな技術投入による製造コスト増は価格設定に影響を与えており、市場競争のさらなる激化に備えた新たな戦略が必要となる。

折りたたみスマートフォン市場の低迷とAI搭載機種の台頭

IDCのアンソニー・スカルセラ氏のコメントによると、折りたたみスマートフォンは期待された成長を遂げておらず、需要が伸び悩んでいるという。主要メーカー各社はプロモーション活動を強化したが、依然として消費者の関心は高まっていない。特に価格面のハードルや耐久性に関する不安が普及の足かせとなっている。

その一方で、メーカー各社はジェネレーティブAI(GenAI)を搭載したハイエンドデバイスの開発にシフトしており、特に生成系AI機能の活用による操作性向上が注目されている。これは、ユーザー体験を革新する新たな競争領域として市場の焦点となりつつある。

中長期的には、AI技術の進化が市場競争のあり方を大きく変える可能性が高い。IDCの報告からも示されるように、技術革新と消費者のニーズの変化が新たな成長の鍵となることは明白であり、折りたたみ型デバイスの未来は新たなアプローチに依存するといえる。