イギリス・ロンドンで、iPhoneを狙った窃盗事件が急増している。最新の統計によると、平均6分に1台のスマートフォンが盗まれており、年間約64,000台が被害に遭っているという。犯行手口は電動自転車を使った高速のひったくりが主流で、被害者の安全すら脅かされている。

警察はスマートフォン窃盗に対処するため特別対策部隊を設置し、盗難防止策を発表したものの、発生件数の多さから捜査の手が回らないのが実情だ。iPhoneの「探す(Find My)」機能を使っても、警察が積極的に追跡するケースはほとんどなく、多くの被害は泣き寝入りとなっている。

アップルはアクティベーションロックやパーツペアリングなどのセキュリティ機能を強化してきたが、犯罪組織はこれを回避するため、盗んだスマートフォンを海外に密輸したり、分解してパーツとして売却するなど、新たな手口を編み出している。今後、アップルがどのような対策を打ち出すのか、さらなる議論が必要だ。

ロンドンで続発するiPhone窃盗事件 犯罪組織の新たな手口とは

ロンドンでiPhoneを狙った窃盗事件が急増している背景には、犯罪組織の巧妙な戦略がある。過去の単純なひったくりとは異なり、現在は高性能な電動自転車を活用し、短時間で逃走可能なルートを計算したうえで犯行が行われるケースが増えている。特に、混雑した都市部や夜間の人通りが少ないエリアでは、犯行が成功しやすい環境が整っている。

また、盗まれたiPhoneはそのまま転売されることは少なく、多くは分解されてパーツ単位で売却される。アップルは「パーツペアリング」機能を導入し、部品ごとの識別を強化しているが、それでも闇市場では盗難品のパーツが流通し続けている。特に、バッテリーやディスプレイなどの交換部品は、正規のものと同じ品質であるため、中古市場で高値で取引される。

さらに、一部の犯罪グループは盗んだiPhoneを国外へ運び、アップルの制限を回避する手法を用いて転売しているとみられる。報告によれば、多くの端末がロンドンから東アジア、中でも中国・深センに運ばれるケースが多いという。深センは電子部品の流通拠点として知られ、盗難スマホの部品もこの市場で流通する可能性が高い。

こうした犯罪の増加により、ロンドン警視庁は特別対策部隊を設置したものの、あまりにも頻発する事件に対処しきれていないのが現状だ。警察が「探す(Find My)」機能による追跡を積極的に行わないことも、被害者の不満につながっている。今後、より厳格な法規制やアップル側のさらなる対策が求められるだろう。

アップルの盗難対策は十分なのか iPhoneセキュリティの現状と課題

アップルは長年にわたり、iPhoneの盗難対策を強化してきた。2013年に導入された「アクティベーションロック」は、盗まれたiPhoneを初期化しても元のApple IDとパスワードが必要となる仕組みであり、これによりiPhoneの盗難率は大幅に減少した。しかし、犯罪組織は新たな手法を生み出し、端末ごとのパーツ売却や国外転売などで利益を上げている。

加えて、2018年以降に導入された「パーツペアリング」により、アップル純正の修理部品でなければ正常に動作しない仕組みが確立された。これにより、盗難品を修理・転売するハードルは上がったものの、依然として市場には偽造部品や改造品が流通している。特に非正規の修理業者は、この制限を回避するための手法を編み出し、部品ごとにシリアル番号を改ざんするケースも報告されている。

しかし、このセキュリティ強化は一方で、正規の修理を希望するユーザーにとって不便を生んでいる。オレゴン州とコロラド州では2025年1月1日より「修理する権利(Right to Repair)」法が施行され、アップルの厳格な修理制限が批判の的となった。こうした動きが広がれば、今後アップルのパーツペアリング制度の見直しを求める声がさらに高まる可能性がある。

一方で、盗難防止の観点からは、アップルがさらなる技術的な対策を講じる必要がある。例えば、盗難時に自動でデバイスをロックする機能や、特定の地域ではFace IDやTouch IDなしでは操作できない仕組みなど、新たな防犯機能の導入が期待される。現在のセキュリティ対策だけでは、巧妙化する犯罪手口に対抗するには不十分かもしれない。

iPhone盗難の現状と今後の対策 どのように被害を防ぐべきか

iPhoneの盗難が頻発する中、個人レベルでの防犯対策も重要となる。ロンドン警視庁は、スマートフォンを公共の場で不用意に使用しないことを推奨しており、特に歩行中の操作はひったくりのリスクを高めると警告している。また、盗難防止用のストラップや、物理的なロック機能を持つスマホケースの活用も有効な手段とされている。

さらに、アップルの「探す(Find My)」機能は、盗難時の追跡に有効だが、犯行グループが迅速に端末の電源を切るケースが多く、十分に機能しない場合もある。そのため、あらかじめ「紛失モード」を有効にし、iPhoneの位置情報が即座に更新されるよう設定しておくことが推奨される。また、セキュリティコードやFace IDを必ず有効にし、簡単に解除されないようにすることも重要だ。

加えて、今後の対策として、アップルがより高度な盗難防止機能を導入する可能性も考えられる。例えば、デバイスが急に持ち去られた場合に、一定時間操作がロックされる「盗難検知モード」や、特定の地域ではApple Watchなどのペアデバイスを使用しなければ操作できない仕組みなど、新たな技術の導入が期待される。

iPhoneは高級デバイスであり、犯罪者にとっては格好のターゲットとなる。そのため、ユーザー自身が警戒心を持ち、日常的に盗難対策を意識することが、最も確実な防衛策となる。ロンドンでの状況を他人事とせず、日本国内でもスマートフォンの盗難リスクを十分に認識し、適切な対策を講じることが求められる。

Source:9to5Mac