Intelは、消費電力に配慮した新シリーズ「Arrow Lake」の投入を2025年1月に計画している。この新シリーズは、Raptor Lakeのような高消費電力モデルとは異なり、エネルギー効率を重視して設計されている。特に「Core Ultra 200S」シリーズには、65Wおよび35Wの低消費電力モデルが追加され、埋め込みコンピュータ向けやコストを抑えたシステムに適した選択肢となる見込みだ。

一方で、ゲームパフォーマンスには目立った向上が見込まれておらず、PCゲーム愛好者にとっての魅力は低いとされる。専門家は、これらの低消費電力モデルがエネルギー効率を重視する市場での競争力を持つ一方、ゲーミング用には他の選択肢が優位に立つ可能性が高いと指摘している。

CES 2025での発表が予定されており、IntelがAMDのZen 5シリーズとどのように競争するかも注目されるところである。

IntelのArrow Lakeシリーズが注目される背景と低消費電力の意義

Intelは、Raptor Lakeシリーズに続く新世代「Arrow Lake」プロセッサを2025年1月に発表予定であり、同シリーズの低消費電力性能に焦点が当てられている。従来のRaptor Lakeは性能重視の高消費電力モデルで、主にハイパフォーマンスを求めるユーザー層に支持されてきた。

一方、Arrow Lakeは電力制限を大幅に抑えた設計となり、省エネを重視するシステムに適している。特に「Core Ultra 200S」シリーズでは、125Wの高性能モデルに加え、65Wの非Kモデルや35WのTモデルがラインナップされ、埋め込み機器や低コストのPC向けに応用されることが期待される。

Arrow Lakeがエネルギー効率に優れる背景には、Intelの製造技術の向上があるとされる。これにより、クロック速度を抑えつつ、基本的な処理性能を確保できることから、電力を大量に消費しないエコシステムの構築を目指す分野において競争力を発揮する可能性がある。

ただし、これらのモデルがゲーム用PCに最適な選択肢であるかは疑問視されており、PC Gamerもその点を指摘している。ゲーム性能に対する期待は低いため、Arrow Lakeは家庭用ゲームPCの標準構成にはならないだろうが、省エネ性能の観点からは注目に値する。

低消費電力が必要とされる用途とPCゲーマーに不向きな理由

低消費電力のArrow Lakeプロセッサは、従来の高性能プロセッサが必要とされない用途で価値を発揮する。埋め込みコンピュータやオフィス向けデスクトップ、さらには静音性が求められる家庭用PCなど、長時間の連続稼働が前提となるシステムにおいて、低消費電力は重要な利点となる。

特に、Tバリアントのプロセッサは35Wの電力消費に抑えられており、発熱やファンノイズを最小限に抑えることが可能であるため、限られたスペースに設置する小型PCや産業用機器などでも需要が見込まれる。

しかし、PCゲーマーにとっては、この低消費電力設計が逆に不利に働く可能性が高い。ゲームパフォーマンスにはクロック速度と瞬発的な処理能力が重要であり、Arrow Lakeの低クロック設定では、最新のAAAタイトルを滑らかにプレイするには力不足と見られる。

例えば、Momomo_usが明かしたデータによれば、Core Ultra 9 285TのPコアのベースクロックは1.2GHzとされており、従来の高クロックプロセッサと比べ大幅に低い。このため、PCゲーマーが求める瞬時の応答性能を十分に提供できるかは疑わしいといえる。

価格帯や消費電力に関わらず、パフォーマンスが最重視されるゲーム向け用途では、依然としてRaptor Lakeや競合他社の高性能チップが優位に立つだろう。

AMDとの競争と新型B860マザーボードの投入が意味するもの

Arrow Lakeシリーズの投入は、IntelがAMDのZen 5プロセッサと直接対抗する一手ともいえる。Intelは、PCゲーム市場ではなく、エネルギー効率が求められる産業やオフィス市場をターゲットにすることで、異なる領域で競争力を高める狙いがあると考えられる。

さらに、CES 2025での発表が予定される新型B860マザーボードチップセットは、低価格帯のユーザーにもArrow Lakeの普及を狙った戦略の一環とみられ、システムインテグレーター向けに大きなアピールとなるだろう。

AMDのZen 5シリーズ、特にRyzen 7 9800X3Dなどは、高いゲーミング性能が特徴であり、PCゲーマー向け市場において確固たる支持を得ている。これに対してIntelは、コストパフォーマンスを意識した価格設定で応戦する可能性があり、マザーボードとのセット販売でさらに手頃な価格で提供される見込みである。

ただし、実際の市場での競争力はパフォーマンスだけでなく、ユーザーが何を重視するかによっても左右されるため、低消費電力性能をどう活かすかが鍵となるだろう。