サムスンは次期フラッグシップスマートフォン「Galaxy S25」シリーズの戦略を今週中に最終決定する。発表は来月を予定しており、2日間の幹部会議でグローバル展開の方向性が議論される見通しだ。議題にはGalaxy Z Flip 7やZ Fold 7といった折りたたみスマホも含まれ、停滞する売上改善への新たな取り組みが注目される。

一方、半導体部門ではHBMメモリ市場や受託生産事業での遅れが課題となっており、これらの巻き返しが急務だ。同会議は年2回実施され、JH Han副会長らが主導するが、サムスン電子会長JY Lee氏は今回出席しない見込みだ。

また、拡張現実デバイス「Project Moohan」も取り上げられる可能性があり、Galaxy S25と共に新技術を披露する機会となるだろう。

Galaxy S25の発表戦略と新たなグローバル展開の背景

サムスンがGalaxy S25シリーズに向けた戦略を固める背景には、スマートフォン市場の競争激化がある。ここ数年、競合の台頭によってフラッグシップ市場は飽和状態に近づいている一方で、同社のGalaxy Sシリーズは確実にシェアを維持してきた。

しかし、その維持の裏には、綿密なグローバル戦略とマーケティング強化が不可欠である。今回の会議では、主に北米や欧州など成熟市場向けの施策と、成長著しい新興国市場でのアプローチが議論されるだろう。

また、Galaxy Z FlipやZ Foldといった折りたたみ型モデルが市場で苦戦している事実も見逃せない。最新世代の技術革新やユーザー体験の向上をアピールしつつ、価格帯や製品ラインナップの再調整が検討されると考えられる。サムスンにとって、今回のGalaxy S25の発表は、停滞する折りたたみスマホ市場の突破口としても重要な位置づけとなる。これらの戦略は、企業の今後数年間の成長を占う一大方針となるのは間違いない。

拡張現実「Project Moohan」への期待と技術の現状

サムスン初の拡張現実(XR)デバイス「Project Moohan」がGalaxy S25発表イベントで披露される可能性が取り沙汰されている。同デバイスは現在プロトタイプ段階にあるが、Android XR搭載という新たな技術的試みが大きな注目を集めている。拡張現実分野では、Appleの「Vision Pro」やMetaの「Quest」シリーズが市場を先行しており、サムスンにとっては後発参入となる。

そのため、同社がProject Moohanをどのように差別化し、具体的な用途を示せるかが今後のカギとなる。特にGalaxy S25シリーズとの連携や統合が示されれば、スマートフォンとXRデバイスの相乗効果を狙った新たなエコシステムが構築される可能性が高い。サムスンは、これまで培ったディスプレイ技術や半導体製造の強みを活かし、競合との差別化を目指すだろう。

サムスンがXR市場においてどれだけ早期に製品化し、マーケティング戦略を浸透させられるかが、今後の技術革新を牽引する重要な一手となることは間違いない。

半導体市場の苦境とサムスンの巻き返し戦略

サムスンにとって最大の課題は半導体分野における競争力低下だ。特に、AIチップに不可欠なHBMメモリ市場では、SK hynixを筆頭とする競合に後れを取っている。さらに、受託生産(ファウンドリ)事業では、TSMCが圧倒的なシェアを誇っており、サムスンの市場シェアは過去最低水準にまで落ち込んでいる。

今回の会議では、HBMの生産技術改善や供給拡大に向けた戦略が中心に議論される見込みだ。高性能メモリ市場において需要が急増する中で、量産技術の確立とコスト削減が急務となる。ファウンドリ部門でも、次世代プロセス技術の強化と受注拡大が求められており、これらの巻き返し戦略がサムスンの将来的な業績回復のカギとなるだろう。

また、AIやデータセンター向けの需要増加に伴い、サムスンの半導体技術が再び注目される可能性も高い。同社がこの危機を乗り越え、半導体業界のリーダーとしての地位を取り戻せるかどうかは、今回の戦略次第である。