Appleが約20インチの折りたたみ式iPadの試作品を進めていると報じられた。2028年の市場投入が目標とされており、Vision Proと同様に高額でニッチな製品になる見込みだが、Appleにとってそれは次世代MacBookへの布石と位置付けられる可能性が高い。
折りたたみ式デバイスはソフトキーボードを搭載するMacBookの実現に向けた試金石となり、技術的な課題の解決が必要だ。具体的には触覚フィードバックや仮想キーの押下感再現、エッジ感知の改善が求められている。
AppleはまずタッチベースのiPadで試験的導入を図り、その技術を磨いた上でMacBookへ展開する狙いとみられる。
Appleが進める折りたたみ式iPadの技術とデザインの進化
Appleが開発中の折りたたみ式iPadは、約20インチの巨大なディスプレイを搭載する可能性が高い。この画面サイズは、従来のiPad Proを2台並べた大きさに相当し、折りたたむことで持ち運びが容易になる。カリフォルニア州クパチーノを拠点とするAppleは、数年間にわたりこの新技術の実用化に取り組んでおり、その完成度は年々向上していると報じられている。
特筆すべきは、ディスプレイ技術の革新だ。Appleは柔軟性の高い有機ELディスプレイを採用する可能性があり、折り曲げる際の耐久性やシワの軽減を目指している。サムスンやLGディスプレイといった大手サプライヤーも、Apple向けの折りたたみディスプレイ技術を開発中であり、今後の進化に注目が集まる。
また、外部ディスプレイのような広大な作業空間を提供することで、折りたたみ式iPadはプロフェッショナル向けツールとしての需要が見込まれている。動画編集やデザイン作業、データ解析など、従来のタブレットでは実現できなかった用途への対応が期待される。一方で、価格が2,000ドルを超えるとの予想から、大衆市場での普及は限定的になる可能性も否定できない。
折りたたみiPadが次世代MacBookの布石となる理由
Appleが折りたたみ式iPadを試験的に市場へ投入する理由のひとつに、将来的なMacBookへの技術転用が挙げられる。Vision Proの例が示す通り、Appleは新技術をまずニッチな製品で試し、その後より広範な市場へ展開する戦略を得意とする。ティム・クックCEOもアーリーアダプター向け製品の重要性を強調しており、折りたたみ式iPadもその一環といえるだろう。
MacBookへの展開において注目すべきは、ソフトキーボード技術の進化である。Appleは従来の物理キーボードを排除し、ディスプレイ上に仮想キーボードを表示する技術を模索している。しかし、従来のガラス製キーボードでは指の疲労や打鍵感の欠如が課題となっている。Appleはすでに柔軟素材のキーボードや、触覚フィードバックを通じたキー感覚の再現に関する特許を取得しており、今後の実用化が期待される。
加えて、折りたたみディスプレイをMacBookに導入すれば、画面とキーボードが一体化した新たな形態のデバイスが誕生する可能性がある。これにより、ノートPCとタブレットの境界がさらに曖昧になり、シームレスなデバイス体験が実現するだろう。折りたたみ式iPadはその技術的な布石であり、Appleの未来戦略を見据えた重要な一歩といえる。
高額な折りたたみiPadはプロ市場での価値が問われる
折りたたみ式iPadの価格は2,000ドルを大幅に超えると見られており、その高額さから一般消費者層には手が届きにくい製品になるだろう。これはVision Proがアーリーアダプター向けのニッチ製品であるのと同様の位置付けであり、Appleもその点を理解した上で市場投入を計画していると考えられる。
そのため、このデバイスの価値が問われるのはプロフェッショナル市場だ。動画クリエイターやデザイナー、エンジニアといった高性能デバイスを必要とするユーザーにとって、20インチ級の折りたたみディスプレイは魅力的な選択肢になるだろう。デュアルディスプレイを一体化し、作業の効率化を図ることで、従来のデバイスとは一線を画する体験を提供できる可能性がある。
一方で、高価格と新技術の不安定さはリスク要因でもある。ディスプレイの耐久性や折り曲げによる画質劣化、バッテリー消耗の問題など、折りたたみデバイス特有の課題をAppleがどう克服するかが鍵となる。出典元のBloombergや専門家も、折りたたみ式iPadが市場に受け入れられるためには、技術的な完成度が不可欠であると指摘している。
Appleがこの新技術をプロ向け市場で磨き上げた先には、完全なスクリーン型MacBookという革新的な製品が待っているかもしれない。折りたたみ式iPadは単なるニッチデバイスにとどまらず、Appleの未来戦略を支える試金石としての役割を果たすだろう。