販売が禁止されているにもかかわらず、約1万2千台のiPhone 16がインドネシアに流入していることが明らかになった。同国の中央機器識別登録システム(CEIR)によると、これらは個人の手荷物や外交郵送を経由して持ち込まれたとされる。
Appleは国内部品使用率(TKDN)基準を満たせず販売認可を取得できていないが、AirTag製造施設への10億ドルの投資が報じられている。しかし、この投資はiPhone販売の条件とは認められておらず、国内市場への正式参入は引き続き課題となっている。
iPhone 16流入の背景にある規制と輸入方法の実態
インドネシア政府は、国内市場保護を目的に国内部品使用率(TKDN)基準を課し、Apple製品を含む特定の電子機器の販売を厳しく制限している。この基準を満たすためには、製品の部品構成の半数以上が国内調達である必要があるが、iPhone 16はこの要件をクリアしていない。
一方で、中央機器識別登録システム(CEIR)には、2024年11月までに1万2千台以上のiPhone 16が記録されている。これらは個人による手荷物や外交郵送という合法的な輸入経路を経ているが、財務省のデータでは実際に記録された数は5,448台にとどまっており、データの差異が生じている。
このズレは制度上の隙間や不正流入の可能性も示唆しているが、詳細な調査結果は示されていない。規制強化の背景には国内産業保護があるが、需要の高さがこうした動きを生み出している現状が浮き彫りとなった。
AirTag製造施設の投資が示すAppleの戦略的意図
Appleはバタム島に設立予定のAirTag製造施設に10億ドルを投資すると発表し、世界供給量の65%を生産する体制を構築しようとしている。しかし、アグス・グミワン・カルタサスミタ産業大臣は、AirTagはスマートフォンやタブレットではなくアクセサリーに分類されるため、国内部品使用率(TKDN)基準を満たす証明として認められないと断言している。
この投資には、インドネシア市場でのさらなる存在感を高める意図があると考えられる。すでにAppleはアプリ開発者向けアカデミーを運営し、同国でのビジネス展開を拡大している。しかし、iPhone販売認可の取得には別途取り組む必要があり、今後は市場参入のために追加の対策が求められるだろう。このような状況から、Appleがどの段階で正式な認可を得るのかが注目されている。
インドネシア市場参入に立ちはだかる国内規制と課題
インドネシアは約2億8,000万人の人口を抱える巨大市場であり、Appleにとって魅力的な成長機会がある。しかし、同国政府は電子機器製造を通じた経済発展を目指し、外資系企業に対して厳格な規制を課している。特に、国内部品比率を満たすためには現地製造や部品調達の拡大が不可欠である。
Appleはこれまでにも10年間にわたり約1,000万ドルの投資を行ってきたが、2024年から2026年に向けた新たな投資契約が必要となっている。バタム島への施設投資が今後の販売認可取得に直結しない状況は、同社にとって試練ともいえる。今後、Appleが国内規制をクリアする新たな戦略を示すか否かは、他の外資系企業にとっても指針となるだろう。
これらの動きは、同国の電子機器市場全体にも大きな影響を与える可能性があり、引き続き動向が注目されている。