AMDが開発中のハイエンドAPU「Strix Halo」シリーズからRyzen AI MAX+ PRO 395が初めてベンチマークデータベースに登場し、その性能が注目されている。このAPUは16コア32スレッドを備え、最大5.1GHzのクロック速度を発揮する。

さらに、RDNA 3.5アーキテクチャに基づくRadeon 8060S iGPUを内蔵しており、64GBのDDR5メモリを搭載可能。特にGeekbenchのVulkan APIテストでは67,004ポイントを記録し、GeForce RTX 3050を上回る結果を示した。CES 2025での正式発表が期待されるこの製品は、今後のハイパフォーマンスコンピューティング市場における新たな基準となる可能性が高い。

Strix Haloの技術革新:RDNA 3.5 iGPUがもたらす可能性

Ryzen AI MAX+ PRO 395に搭載されるRadeon 8060S iGPUは、AMDの最新アーキテクチャ「RDNA 3.5」を採用している。このGPUは、40基のコンピュートユニットと256ビットのLPDDR5X-8000メモリコントローラーを備えており、性能面では従来のモバイルGPUを凌駕する可能性を秘めている。

RDNA 3.5は従来のRDNA 3に比べ、電力効率とAIアクセラレーション性能が大幅に向上しており、特にハンドヘルド機器やラップトップのような省電力を求められるデバイスにおいて顕著な進化を示す。

GeekbenchのVulkan APIテストで記録された67,004ポイントというスコアは、エントリーレベルの独立GPUであるGeForce RTX 3050を上回る。この結果は、Strix Haloが軽量ゲームやAI処理、クリエイティブな作業において十分な能力を発揮することを示唆している。

一方で、現段階ではドライバーの最適化が進行中であり、製品版ではさらに高い性能が期待される。この技術革新により、ラップトップ市場でのGPU統合型APUの競争が激化すると予測される。

RDNA 3.5の登場は、単なるスペック向上に留まらず、次世代デバイスの性能基準を変える可能性がある。特に低消費電力と高性能の両立を求めるモバイル市場において、AMDがリードするための重要な要素となるだろう。


Zen 5チップレット設計がもたらすAPUの新たな可能性

Strix Haloシリーズで採用されるZen 5アーキテクチャは、AMDのチップレット設計技術の最前線に位置している。この技術により、16コアのCPUが効率的に動作し、高いマルチタスク性能を実現している。ベースクロック3.0GHz、最大クロック5.1GHzというスペックは、デスクトップレベルのパフォーマンスをモバイルAPUにもたらす。

チップレット設計の利点は、各コンポーネントを独立して最適化できる点にある。Ryzen AI MAX+ PRO 395では、64MBのL3キャッシュと16MBのL2キャッシュがCPUの高い処理効率を支えている。また、AIアクセラレーション性能を強化する最大60 AI TOPSの処理能力は、動画編集やAI支援のワークロードを高速化するだけでなく、将来的なAI対応アプリケーションの開発も促進する。

こうした設計により、Strix Haloは従来のAPUが持つ制約を超えた新たなカテゴリーを形成する可能性がある。さらに、AMDが公開しているロードマップによれば、これらの製品は2024年下半期から市場に投入される予定であり、今後の展開に大きな期待が寄せられている。


競争激化するハイパフォーマンスモバイル市場における影響

Ryzen AI MAX+ PRO 395の登場は、ハイパフォーマンスモバイル市場における競争を新たな段階へと引き上げると考えられる。特に、IntelのMeteor LakeシリーズやAppleのM3チップといった競合製品が市場に進出する中、AMDの技術的優位性がどこまで維持されるかが注目されるポイントである。

Strix Haloシリーズは、TDP(熱設計電力)を55〜130Wという柔軟な範囲で調整可能であり、幅広いデバイスへの適応が可能である。この特徴は、薄型ノートPCからハイエンドデスクトップリプレースメントまで、あらゆるセグメントに対応する競争力を提供する。

一方で、競合製品が進化を続ける中、AMDが市場シェアを拡大するためには、性能だけでなく価格設定や製品供給体制の強化も求められる。

これに加えて、CES 2025での正式発表が予定されていることから、市場での注目度がさらに高まる可能性がある。特にAMDが掲げる持続可能性や電力効率の向上といった要素は、消費者だけでなく企業ユーザーにとっても重要な判断基準となるだろう。