Intelが開発中の次世代モバイルCPU「Arrow Lake-H」シリーズが、ベンチマークデータを通じてその性能を一部明らかにした。Bapco CrossMarkでテストされたCore Ultra 9 285HとUltra 5 225Hは、それぞれ前世代モデルと比較して11%から23%の性能向上を記録。特に生産性と創造性の分野で大幅な改善が確認された。
285Hは16コア16スレッド構成で、Hyper-Threading非対応ながらもアーキテクチャの進化により高い効率性を発揮。さらに、内蔵GPUも刷新され、Arc 140TとArc 130Tが採用されている。これらのデータは、来年初頭に正式発表が期待されるArrow Lakeシリーズが、ノートPC市場で新たな標準を打ち立てる可能性を示唆している。
次世代アーキテクチャ「Arrow Lake」の設計進化とその背景
IntelのArrow Lake-Hシリーズは、前世代と同じコア構成を維持しながらも、LionCove/Skymontアーキテクチャの採用により、効率性と性能を大幅に向上させている。特に、ハイパースレッディングを排除した設計は一見非効率に見えるが、実際にはマルチタスク処理の最適化や消費電力の削減を目指した戦略と考えられる。この選択により、同じ16コア構成でも前世代よりも11%の性能向上を実現した。
さらに、クロック速度に関しては5.0GHzから5.4GHzと予想されており、これは高性能ノートPC市場における競争力を維持するための重要な要素といえる。これらの設計変更は、Meteor Lakeからの進化だけでなく、AMDやAppleとの競争を強く意識した結果である可能性が高い。こうした背景を考慮すると、Arrow Lakeは単なる性能向上を超えた、戦略的な転換点を示すモデルと言えるだろう。
Arrow Lakeのグラフィックス性能が示すモバイル市場の新潮流
Arrow Lake-Hシリーズに搭載されるArc 140TとArc 130Tは、内蔵グラフィックスの性能強化を明確に意識した設計となっている。特に、XMX命令を統合したXe-LPG+ GPUアーキテクチャの採用は、AI処理やクリエイティブなタスクにおける性能を高める要因として注目される。この進化は、従来の統合型GPUが持つ限界を打ち破る試みといえる。
Core Ultra 5 225Hに7つのXeコアが搭載される一方で、285Hは8コアを持つフル構成となっているが、これらの差異はコストパフォーマンスとターゲット市場に応じたラインナップ戦略を反映している。
ノートPC向けCPUでグラフィックス性能が強化される流れは、ゲーミングやコンテンツ制作だけでなく、モバイルデバイス全般における汎用性の向上を目指したものと推測される。Intelのこうした動きは、モバイル市場での存在感を再び強化する一手となるだろう。
CESでの正式発表が示唆するArrow Lakeの市場展望
IntelがArrow Lake-Hシリーズを正式発表するとされる2025年のCESは、この新世代CPUの詳細な性能や価格、さらには市場戦略を確認する場となる可能性が高い。同社が従来からCESを重要な発表の場と位置付けている点を踏まえると、今回のArrow Lakeも例外ではないだろう。
現在リークされた性能データや設計情報から考えると、Arrow LakeはハイエンドノートPC市場だけでなく、より幅広いモバイル市場への対応を目指した製品群といえる。
その背景には、競合他社の製品戦略や市場動向への対応があると考えられる。CESでの正式発表後、消費者やメーカーがこれらのCPUをどのように評価するかが、Intelのモバイル市場における今後のポジションを大きく左右するであろう。