SamsungがPCIe 5.0対応のハイエンドSSD「9100 Pro」を発表した。最大14.8GB/sのシーケンシャルリード速度を誇り、現在市販されているコンシューマー向けSSDの中で最速クラスの性能を実現している。搭載される「Presto」SSDコントローラーと最新のTLC V8 V-NANDフラッシュが、従来モデルを大幅に超える処理能力を支える。

本製品は1TBから8TBまでの4種類のモデルを展開し、それぞれの容量に応じた高速なランダムアクセス性能を備える。また、AES 256ビット暗号化やNVMe 2.0プロトコルのサポートにより、データセキュリティと互換性も強化されている。価格は199.99ドル(約3万円)からで、5年間の保証が付属。SamsungのPCIe 5.0 SSD市場本格参入により、次世代ストレージの競争がさらに加速しそうだ。

PCIe 5.0の真価を引き出す9100 Proの技術的進化

Samsungの9100 Proは、これまでのSSDと一線を画す技術的進化を遂げている。最大14.8GB/sという圧倒的な読み取り速度を実現するために、PCIe 5.0の4レーンをフル活用し、新たに設計された「Presto」SSDコントローラーを搭載。このコントローラーは、Samsung独自の最適化が施され、従来のPCIe 4.0 SSDと比較してより高効率なデータ転送を可能にしている。

また、V8 TLC V-NANDフラッシュメモリを採用し、大容量キャッシュとの組み合わせにより、ランダムアクセス性能も大幅に向上。1TBモデルであっても、ランダムリード1,850K IOPS、ランダムライト2,600K IOPSという数値を実現しており、これは一般的なハイエンドPCIe 4.0 SSDを超えるレベルだ。

さらに、NVMe 2.0プロトコルに対応することで、最新のOSやプラットフォームとの互換性も強化されている。これにより、単なる速度向上だけでなく、システム全体の安定性やデータ処理能力の向上にも寄与している。Samsungが今回、PCIe 5.0 SSD市場に本格参入したことで、今後他社の製品開発にも大きな影響を与える可能性がある。

消費電力と発熱問題への対策 省エネ設計の実力

超高速SSDにとって、消費電力と発熱の管理は極めて重要な課題である。9100 Proでは、特にこの点に対する工夫が見られる。例えば、1TBモデルの消費電力は最大7.6W、4TBモデルでも9.0Wに抑えられており、同クラスの他社製PCIe 5.0 SSDと比較して低めに設定されている。

また、デバイススリープモード(L1.2)を搭載することで、アイドル時の消費電力も削減。例えば、1TBモデルでは4.0mW、4TBモデルでも6.5mWに抑えられており、一般的なノートPCや省電力が求められる環境でも使いやすい設計となっている。

発熱対策としても、Samsung独自のサーマルスロットリング技術を採用。高負荷時の温度上昇を抑え、持続的なパフォーマンスを確保する仕組みが導入されている。特にPCIe 5.0 SSDは放熱対策が必須だが、9100 Proでは過度な温度上昇を防ぐ設計が施されており、長時間の高負荷使用でも安定した動作が期待できる。

既存の最速SSDを超えるか Crucial T705との比較

Samsungの9100 Proは、現在市場で最速とされるCrucial T705(最大14.5GB/sのリード速度)をわずかに上回る性能を持つ。特に4TB・8TBモデルでは、最大14.8GB/sのリード速度を実現しており、実質的にコンシューマー向けSSDのトップクラスに位置する。

ただし、実際の使用環境ではシーケンシャル速度だけがすべてではない。ランダムアクセス性能や持続的な書き込み速度、サーマルスロットリングの影響などが、総合的なパフォーマンスを左右する要素となる。Crucial T705も優れた冷却設計を採用しており、持続的な速度維持に定評があるため、9100 Proがどの程度の競争力を発揮するかは、実際のベンチマーク結果を待つ必要がある。

それでも、Samsungが本格的なPCIe 5.0 SSD市場に参入し、最速クラスの製品を投入した意義は大きい。従来の990 EVOや990 EVO PlusはPCIe 5.0 x2またはPCIe 4.0 x4の制約を受けていたが、9100 Proは完全なPCIe 5.0 x4 SSDとして設計されており、そのパフォーマンスが最大限に引き出されている。今後、他メーカーもさらなる高速化を図ることで、次世代ストレージ市場の競争はさらに激化していくことになりそうだ。

Source:Tom’s Hardware