中国テクノロジー大手ファーウェイは、2025年からすべての新スマートフォンに独自開発の「HarmonyOS Next」を標準搭載する計画を発表した。同OSはAndroidアプリに対応せず、独自のアプリエコシステム拡大が急務となる。これまでのハイブリッドOSからの脱却は、米国技術への依存を減らす中国企業の広範な動きの象徴である。
2024年11月には、Android基盤の最終バージョン「HarmonyOS 4.3」を搭載した「Mate 70」シリーズを発表。これを皮切りに、翌年初頭には完全独立型OSへの移行を開始する。同社は、中国市場での優位性を背景に、16%の国内シェア拡大を達成したと報じられているが、国際市場での反応は未知数だ。
ファーウェイの戦略は、技術的挑戦とリスクを伴うが、世界のスマートフォン市場に新たな潮流をもたらす可能性を秘めている。
ファーウェイ独自OSの成長戦略とその背景
ファーウェイは「HarmonyOS Next」の導入により、米国技術からの脱却を加速させている。2019年の輸出禁止リスト入りを契機に、同社はGoogleのサービスを失ったが、その危機を機会に変え、自社エコシステムの構築を進めてきた。これまでAndroidベースの「HarmonyOS」を使用していたが、次世代OSでは完全に独立したプラットフォームとして進化させる計画だ。
Bloombergの報道によれば、同社の「Mate 70」シリーズは一時的にAndroid基盤の最終バージョンを搭載するが、2025年初頭には完全に移行する。この戦略は、中国国内市場を中心に進められており、現在中国市場でのスマートフォンシェア16%を占めている。これにより、ファーウェイは世界市場ではなく、国内市場での競争力強化に重点を置いていると考えられる。
ただし、HarmonyOS NextはAndroidアプリ非対応であるため、短期間でのアプリエコシステムの拡大が必須となる。同社は現在10,000の互換アプリを保有し、2025年までにその数を10倍に増やすと発表している。この大胆な目標を達成できるかどうかが、同OSの普及とファーウェイの将来に大きな影響を与えるだろう。
国内市場を重視するファーウェイの挑戦
ファーウェイの新しい「Mate 70」シリーズは、中国市場での競争力を示す象徴的な製品である。このシリーズは価格を5,499元(約760ドル)から設定し、性能面では前世代比40%の向上を掲げる。また、搭載される独自のKirinプロセッサーは米国技術への依存をさらに減少させるものであるが、現時点でクアルコムやメディアテックのトップチップには及ばないとされる。
Techloyの報道によると、ファーウェイは中国本土での出荷台数を大幅に増加させ、2024年第3四半期には1,080万台を記録した。同社は昨年の13%の市場シェアから16%に成長を遂げており、この傾向が続く可能性が高い。一方で、同社の新たな戦略が国際市場でどのように受け入れられるかは未知数である。
しかし、国内市場の強化は、米中対立の影響を受ける企業にとって現実的な選択肢であり、ファーウェイもその例外ではない。この動きはXiaomiをはじめとする他の中国企業が独自プロセッサーを開発する流れとも一致している。国内市場を基盤とした成長モデルが、どの程度持続可能であるかが注目されるポイントとなる。
独自OS移行のリスクと可能性
ファーウェイのHarmonyOS Nextへの移行は、業界全体に新たな議論を巻き起こすだろう。同OSはAndroidアプリを完全に排除するため、従来のユーザーが抱く利便性への期待を損なうリスクがある。特に国際市場では、アプリの選択肢が限られることで競争力を失う可能性があると懸念されている。
一方で、ファーウェイは短期的なリスクを承知の上で、この移行を進めている。これは単なる生き残り戦略ではなく、独自のテクノロジー基盤を持つことで主導権を握る意図があると考えられる。中国市場での確固たる地位を背景に、アプリ数の拡大やKirinプロセッサーの性能向上が進めば、国際市場でも競争力を取り戻す可能性がある。
さらに、2024年に発売されたトリプルフォールド型スマートフォン「Mate XT」など、新しいカテゴリー製品での挑戦も続けている。これらの取り組みが、変化の激しいテクノロジー市場においてファーウェイの優位性を築く鍵となるだろう。