Nvidiaが次世代GPU「GeForce RTX 5090D」を中国市場に向けて投入する計画を進めている。このGPUは通常版のRTX 5090と同一のハードウェアを採用しつつ、ファームウェアやBIOSで性能を制限する可能性があるという。背景には米国の輸出規制があり、以前のRTX 4090Dが約11％性能を抑えられたことからも同様のアプローチが予測される。
この仕様の選択には2つの戦略的意図が見える。1つ目は、同一設計による製造コスト削減。2つ目は、制限を突破する手段を消費者が独自に見つける可能性を残すことで市場の需要を喚起することだ。最大600WのTGPと32GBのGDDR7メモリを備えたこのカードの実力は、制限解除の手法が解明されるか否かで大きく変わるだろう。
RTX 5090Dの導入背景と米国輸出規制の影響
Nvidiaが中国専用GPU「RTX 5090D」を開発する背景には、米国の輸出規制の影響がある。これまでの事例では、RTX 4090Dが性能を11％制限された形でリリースされた。この制約は米国の規制基準を満たすためであり、今回のRTX 5090Dも同様の措置が取られる可能性が高い。
輸出規制の中心には、AI関連技術が持つ戦略的重要性がある。GPUは高性能なAI計算を支える基盤であり、中国市場での利用が特定の分野に影響を及ぼすと懸念されている。これにより、通常版RTX 5090が中国で販売されることが制限される見込みである。
一方、Nvidiaにとってこの状況はビジネス機会を意味する。RTX 5090Dのような限定モデルを通じて、中国市場の需要に応えながら米国政府との摩擦を回避する狙いがうかがえる。さらに、通常版と同一の設計を採用することで、製造ラインの統一によるコスト削減も達成できる。このアプローチは規制下での柔軟な市場対応を示しているが、その実現には新たな課題も生じるだろう。
RTX 5090Dの性能制限が意味するもの
RTX 5090Dの性能制限は、主にファームウェアやBIOSによる調整が想定されている。これにより、通常版と同じハードウェアを使用しながら、ソフトウェア的に性能を抑える形となる。これは過去にNvidiaが採用したLite Hash Rate（LHR）技術に近い方法であり、GPUの潜在能力を完全に利用することを阻むものである。
具体的には、AI性能の抑制や電力供給の制限、ブーストクロックの引き下げが考えられる。これらの措置は、製品の競争力を損なう一方で、市場での活用範囲を明確に限定する。加えて、ユーザー側で制限を解除する方法が見つかれば、Nvidiaが意図した以上の性能が引き出されるリスクも含んでいる。
しかし、これらの制限にはもう一つの目的があると考えられる。それは、消費者にとって「アンロック」という魅力的な可能性を提供することだ。過去のAMD Phenom II X3のように、制限を解除することで得られる性能向上が市場で話題を呼び、製品価値の向上に寄与する可能性がある。Nvidiaがこの点をどのように管理するかが、RTX 5090Dの評価を左右する要素となるだろう。
GeForce RTX 5090Dが示す次世代GPUの方向性
GeForce RTX 5090Dの設計には、Nvidiaが次世代GPUで追求する方向性が反映されている。同カードは21,760個のCUDAコアと32GBのGDDR7メモリ、512ビットバスを搭載することが予想され、600WのTGPを実現する設計となっている。さらに、新型12-2×6電源ケーブルを採用し、高い電力効率を目指している。
これらの仕様は、AI演算能力のさらなる向上を示している。特に、GDDR7メモリの採用は、データ転送速度を大幅に引き上げ、リアルタイムレンダリングやAIモデルのトレーニングにおける性能向上が期待される。一方で、600Wという高い消費電力は、冷却技術や電力供給のインフラに新たな課題を提示する。
RTX 5090Dはまた、ハードウェアの再利用性という観点からも注目される。同一の設計を世界市場と中国市場で共有することで、Nvidiaは多様な市場ニーズに対応しつつ、製造効率を最大化する戦略を取っている。この設計思想は、GPU業界全体の標準として他社に影響を与える可能性がある。RTX 5090Dは単なる製品ではなく、Nvidiaの未来を示す重要な一歩といえるだろう。