Valveは、Steam Deck向けの最新OS「SteamOS 3.6」を正式にリリースした。長期間のテストを経て完成した今回のアップデートでは、パフォーマンスの向上やシステム全体の安定性が大幅に強化されている。特に、グラフィックドライバの更新やBluetooth機能の改良、そして「Mura Compensation」によるディスプレイの改善が注目されるポイントである。

最新のグラフィックドライバとパフォーマンスの向上

SteamOS 3.6では、最新のグラフィックドライバであるMesa 24.1が導入され、多くのゲームにおいて性能が向上している。これにより、特に高負荷の場面やメモリの圧迫状況下でも、パフォーマンスの安定性が大幅に改善された。また、Steam UIの応答性も向上し、操作の滑らかさが増している。

さらに、これまでのバージョンで発生していた一部のゲームセッションにおけるクラッシュや、長時間プレイ時に見られるメモリ関連の不具合も解消された。ELDEN RINGのような重いゲームでも、起動初期のクラッシュが防がれるようになり、安定したプレイが可能となっている。冷起動時間もわずかに短縮され、デバイスの起動がよりスムーズになった。

このようなアップデートにより、Steam Deckは高性能なゲームデバイスとしての評価をさらに高めている。特に、複数のタイトルでフレームレートの向上やロード時間の短縮が見られ、ゲーム体験が一層快適になる点がユーザーにとって大きなメリットとなるだろう。

ディスプレイとBluetoothの改良—ユーザー体験の改善

SteamOS 3.6では、ディスプレイ性能が大幅に改善されている。特に、Mura Compensation機能が新たに追加され、画面のムラや色の不均一さが抑えられた。また、特定の状況下で発生していた緑がかった色合いが低輝度時に改善され、さらに均一な色表現が可能になっている。

ディスプレイ関連では、OLEDモデル限定のリフレッシュレート調整の不具合も修正され、外部ディスプレイ接続時に画面が空白のままになる問題も解消された。特に、外部ディスプレイの復帰時や接続解除後に見られたフレームレートの異常な制限といったトラブルがなくなり、よりスムーズな画面切り替えが実現されている。

Bluetooth機能についても、接続速度の向上や安定性の強化が図られた。特にApple AirPodsとのペアリングが改善され、接続がスムーズになったことは、ユーザーにとって大きな利便性の向上といえる。これにより、Steam Deckの外部機器との連携がさらに快適なものとなっている。

新機能「Mura Compensation」と色補正

SteamOS 3.6の目玉機能の一つとして、「Mura Compensation」が挙げられる。この機能は、特にディスプレイのムラや色のばらつきを低減し、より均一な画質を提供するものだ。これにより、特定の条件下で発生していた色のムラや緑の色合いが低輝度時に改善され、より自然で目に優しい表示が可能となった。

加えて、画面の色補正においても改善が図られ、黄色味がかったガンマ調整が行われている。この調整により、より正確な色再現が可能となり、特に映画やグラフィック重視のゲームにおいて、その効果が顕著に表れている。

また、OLEDモデルでのリフレッシュレートの適用に関する問題も修正され、外部ディスプレイ使用時における画面表示の不具合がなくなった。これにより、Steam Deckを外部ディスプレイに接続しても、遅延や画質の劣化が発生することなく、高品質な映像を楽しむことができる。

デスクトップモードと周辺機器の強化

SteamOS 3.6では、デスクトップモードの改善が大きな焦点となっている。特に、KDE Plasmaがバージョン5.27.10に更新され、操作性や安定性が向上した。このアップデートにより、デスクトップ環境でのマルチタスクやファイル管理がよりスムーズに行えるようになっている。

さらに、デスクトップモードでの動画サムネイルプレビュー機能が追加され、ユーザーの利便性が向上している。これにより、ファイル管理が直感的に行えるようになり、特に動画編集やメディア管理を行うユーザーにとって有益な機能と言えるだろう。また、外部ディスプレイとの接続時の安定性も強化されており、複数のモニターを使用した際のトラブルが解消された。

周辺機器のサポートも拡充されており、ASUS ROG Raikiri ProやMachenike G5 Proコントローラーなど、新しいデバイスが追加されている。これにより、Steam Deckはゲーム機としてだけでなく、デスクトップPCとしての利用価値も高まり、さらなる拡張性が期待される。