2024年のPCハードウェア市場は、多くの期待を裏切る結果となった。特に、次世代GPUの遅延やインテルのCPU不安定問題、そしてAMDの新しいRyzen 9000シリーズの性能不足が大きな失望を招いた。PCゲーマーやハードウェア愛好家にとって、今年は新しい技術革新を待ち望んでいたが、そのほとんどが期待には応えなかった。

次世代GPUの遅延と高騰

2024年に期待されていた次世代GPUの発売が、主要メーカーによって2025年に延期されたことは、大きな衝撃を与えた。NvidiaのRTX 50シリーズやAMDのRX 8000シリーズは、多くのユーザーが待ち望んでいたが、これらの製品は年内に発売される見込みがなくなった。これにより、PCゲーマーやクリエイターは、旧世代の製品を使い続けるか、高騰した価格で既存のGPUを購入せざるを得なくなっている。

さらに、Nvidiaは新しいRTX 5090や5080の価格を大幅に引き上げることが報じられており、特に高性能モデルに対する値上げが顕著である。AMDも、ハイエンドモデルのリリースを見送る方針を固めており、Nvidiaに対抗する新製品を投入しない。このため、Nvidiaが事実上市場を独占し、価格設定の自由度が広がっている。これにより、次世代GPUの到来が遅れるだけでなく、価格の高騰も懸念される状況だ。

GPU市場においては、これまで2年ごとに新しいアーキテクチャが登場するサイクルが一般的だった。しかし、2024年は例外となり、ハードウェアの進化が停滞している。PCハードウェア市場全体が苦境に立たされている中、ユーザーの期待は2025年のCESに向けられている。

インテルの不安定なCPUと失敗

インテルの2024年は、同社の13世代および14世代のRaptor Lake CPUに対する不安定性の問題が大きく浮上した年であった。特に高性能モデルにおいて、Vminシフト不安定性と呼ばれる致命的な不具合が発覚し、多くのユーザーが不満を抱いた。この問題に対処するために、マザーボードメーカーはBIOSアップデートを急遽提供し、インテル自身も原因を究明した。

この不安定性の根本原因は、マザーボードの電源供給がインテルの推奨を超えてしまい、CPUの電圧が上昇していたことである。これにより、多くの高性能CPUが損傷し、インテルはCore i9だけでなく、Core i7やCore i5にも影響が及ぶとして、保証期間を延長した。消費者に対しては、該当するCPUの交換を提供する事態にまで発展している。

インテルにとって、2024年は製造部門の大幅な再編や従業員の大規模な解雇が行われ、株価も低迷した厳しい一年であった。しかし、同社は年末にArrow LakeデスクトップCPUの発表を控えており、これが一筋の希望となる可能性がある。Arrow Lakeが成功すれば、インテルの市場における信頼を回復する契機となるだろう。

AMD Ryzen 9000シリーズの期待外れ

AMDのRyzen 9000シリーズは、2024年に大きな期待を背負って登場したものの、その性能は期待を大きく下回った。特に、AMDが事前に謳っていたゲーミング性能の向上や電力効率の改善は、実際のところ非常に限定的であり、多くのユーザーにとって失望の対象となった。ゲームにおけるパフォーマンス向上はわずか2~3%にとどまり、電力消費も予想以上に高かった。

AMDは、Ryzen 7000シリーズと比較して大幅な性能アップを宣伝していたが、実際の製品はこれに応えられなかった。このため、同社の新製品は市場において苦戦を強いられている。特に、電力効率が期待されたZen 5アーキテクチャも、前世代のZen 4に劣る結果となった。これにより、消費者の間ではAMDへの信頼が揺らいでいる。

AMDは、性能不足を一部取り戻すために、BIOSアップデートやWindowsの最適化を進めているが、根本的な問題解決には至っていない。10月下旬から11月にかけて発売が予定されているRyzen 9000X3Dシリーズが、どこまでこの状況を改善できるかが注目される。現行のRyzen 7 7800X3Dを上回る性能を発揮できるかが、今後の鍵となるだろう。

混乱を招くAM5マザーボードのリリース

AMDは、Ryzen 9000シリーズに対応する新しいAM5マザーボードを発表したが、そのラインナップは混乱を招いている。特に、X870EやX870、B850といったモデルは、前世代のX670EやB650の単なるリフレッシュ版に過ぎないにもかかわらず、名称変更が行われたため、ユーザーに誤解を与える恐れがある。このような混乱した命名規則は、消費者にとって大きな問題となっている。

さらに、B840チップセットは、実際には旧世代のA620チップセットと非常に類似している。どちらもCPUオーバークロックをサポートしておらず、PCIe 5.0 M.2スロットも搭載されていない。このため、B840チップセットは「B」クラスのマザーボードとしては不適切であり、本来であれば「A820」として発売されるべきだったとされている。

このような混乱したマザーボード市場は、PCのアップグレードを考えている消費者にとって大きなリスクとなっている。特に、Ryzen 7000シリーズから9000シリーズへの移行を検討しているユーザーは、既存のマザーボードが引き続き新CPUをサポートするため、慎重な判断が必要である。