2020年、PCゲーム業界はチート対策に苦しんでいたが、ライアットゲームズの『Valorant』は画期的なアンチチートシステム「Vanguard」によって事態を一変させた。特に、カーネルレベルで稼働するVanguardは、エイムボットやウォールハックといったチート行為をほぼ根絶し、ゲーム内の公平性を守り続けている。
また、専用ハードウェアを用いた新手のDMAチートへの対策も強化され、チーターは次第にゲーム内から姿を消しつつある。ライアットの取り組みは『League of Legends』にも拡大しており、チーターの数は大幅に減少している。
Vanguardがもたらしたゲームの公平性とその革新
Valorantに搭載されているアンチチートシステム「Vanguard」は、従来のPCゲームにおけるチート行為をほぼ完全に排除する革新として注目されている。その大きな特徴は、カーネルレベルで動作することにより、PCの起動と同時に不正なアクセスを監視する点にある。
これにより、一般的なエイムボットやウォールハックといったチートは容易に検出され、プレイヤーはチートの影響を受けない環境でゲームを楽しむことができるようになった。
ライアットゲームズのアンチチートディレクターであるフィリップ・コスキナス氏によれば、Vanguardの導入によって、チート行為が物理的に難しくなっただけでなく、チート開発者たちも新たな手段を考え出さざるを得なくなったという。
この結果、PCゲーム業界での公平性は飛躍的に向上したといえる。しかし、チーターとの攻防が続く中で、プレイヤーたちが完全に安心できる環境が確立されるには、さらなる技術的進化が求められるであろう。
Vanguardが対応する新たなチート手法 DMAチートの台頭
チート行為がVanguardによって抑え込まれた結果、チーターは新たな手法としてDMA(ダイレクトメモリアクセス)チートに目を向けるようになった。この手法では、PCIeカードを用いて別のPCからメモリを読み取り、ゲーム内の状況を把握することが可能となる。
この方法により、専用のセカンダリPCを活用して敵の位置を特定し、あたかもゲーム内の「レーダー」のように視覚化することができるようになった。この手法は、Valorantのような隠密性が求められるゲームにおいては特に強力で、プレイヤーの位置取りや作戦に悪影響を与える。
しかし、ライアットゲームズはこの新たなチートに対しても対応を開始している。Vanguardは疑わしいデバイスからのメモリアクセスを検出し、ブロックする機能を備えた。これにより、DMAチートも次第に封じ込められつつある。Vanguardの進化により、PCゲーム内での安全性がさらに高まり、プレイヤーにとって安心できる環境が少しずつ整備されてきている。
Vanguardと他ゲームのチート対策の違い ライアットゲームズの戦略
ValorantのVanguardは、他のPCゲームに見られるアンチチートシステムとは異なる特性を持つ。例えば、Activisionの『コール オブ デューティ:ウォーゾーン』で使用されているRicochetは、依然として高度なチートに対して効果が限定的である。
バーミンガム大学の調査では、安価なチートがウォーゾーンで利用可能であり、完全な対策は難しいとされている。Ricochet開発チームも問題意識を持ちながらも、十分な資金や自由が与えられていないと指摘している。
一方で、ライアットゲームズはVanguardの強化を継続している。Microsoftとの協力も進んでおり、Windows 11のセキュリティ機能を活用することで、今後のVanguardの展開が期待されている。もしWindowsが新たなセキュリティプロトコルを採用すれば、Vanguardはさらに強固なチート対策システムとして進化し、PCゲーム全体におけるチート抑制のモデルケースとなる可能性があるだろう。