Microsoftは、Copilot+ AI PC向けに開発中の「Windows Recall」機能のプレビューリリースを、セキュリティとプライバシー対策の強化を理由に12月まで延期した。10月のリリースを目指していたが、顧客からのプライバシー懸念に対応するための追加テストが必要と判断したためである。
Windows RecallはAI技術を用いてユーザーのアクティブなウィンドウを数秒ごとに記録し、自然言語での指示により簡単に過去のスクリーンショットを検索できる機能だが、データの悪用やプライバシー侵害のリスクを指摘する声も上がっている。
Microsoftは、Recallを使用するにはオプトインとWindows Helloによる認証が必要であるとし、さらに機密情報のフィルタリングや特定アプリの除外などのセキュリティ対策を実装する予定である。
AI搭載のWindows Recallが提供する新たな利便性とその技術的特徴
Windows Recallは、ユーザーのアクティブなウィンドウを自動で数秒ごとに記録する機能を持つ。このスクリーンショットの記録はAIモデルとニューラルプロセッシングユニット(NPU)によりローカルデバイス内で即座に処理され、データはSQLiteデータベースに格納される。これにより、ユーザーは自然言語による指示でスクリーンショットを迅速に検索可能になるため、従来のファイル探索のような手間を大幅に削減できる。
一連の技術的仕組みは、Microsoftが5月に発表した際に話題を呼んだ。Recallのような機能は、複数のタスクを同時に扱う場面で、過去の作業を簡単に参照できる点で効率性を高める。しかし、この利便性が個人データの保護とどのように両立されるかは、今後も注目が集まるであろう。
顧客の懸念とMicrosoftの対応 - プライバシー保護の実装
Recallの公開をめぐり、プライバシーとセキュリティに対する強い懸念がユーザーやセキュリティ専門家から寄せられている。悪意ある攻撃者がこの機能を悪用する可能性が指摘されているため、MicrosoftはユーザーがRecallをオプトイン制で選択できる仕組みを導入。また、Windows Helloでの本人確認により、機密データへの不正アクセスを抑制するという。
MicrosoftのWindowsシニアプロダクトマネージャー、Brandon LeBlanc氏も、Recallのプライバシーアーキテクチャの強化を公式ブログで紹介。さらに、機密情報をフィルタリングし、指定したアプリやサイト、プライベートブラウジングを自動で除外する機能も搭載予定である。これにより、より安心して利用できる環境が整えられつつあるが、プライバシー保護と利便性の両立には、今後も改良が重ねられると考えられる。
プレビュー延期の背景と今後の課題
The Vergeの報道によれば、Microsoftは当初のリリース計画を延長し、Recallの追加テストを進めることにした。これは、顧客からのプライバシーに関するフィードバックを反映し、安全性を一層高めるための判断である。Recallは、AIが個人情報を直接扱う機能を持つため、プライバシーやセキュリティが極めて重要視される領域であることが改めて浮き彫りとなった。
Microsoftは「Recallが安全で信頼性のある体験を提供することを目指している」と述べており、顧客の期待と要望に応えるためにテスト工程を追加するなど柔軟に対応している。今後は、顧客の懸念を反映したさらなる改良が期待されるが、こうしたAI機能をより安心して利用できる環境を整備するための取り組みが続くと予想される。