Intelが最新プロセッサ「Core Ultra Series 2」に新たなセキュリティエンジン「Partner Security Engine」を搭載することを正式に発表した。このセキュリティエンジンは、MicrosoftのPluton技術をサポートし、CPUキャッシュやDRAMへのサイドチャネル攻撃を防ぐ設計となっている。さらに、OEM向けの高度な制御機能を提供し、セキュリティ設定の柔軟性を高める。
PlutonはAMDプロセッサで初めて導入され、Linuxコミュニティで大きな議論を呼んだ経緯がある。Intelの採用により、Plutonの普及が加速する可能性があるが、これがオープンソース環境に与える影響については依然として注目が集まる。
新エンジンは、Intel SoC内のIPとサードパーティのコードを分離し、安全なブート環境を確保する役割も持つ。独自の「Root of Trust」を採用し、従来のIntel Silicon Security Engineとは異なる設計が取られている点も特徴的だ。OEM向けにリプレイ攻撃の防止機能やファームウェアの柔軟な運用が可能になる仕組みも導入され、今後のセキュリティ強化の方向性が示された。
Intel Partner Security Engineの仕組みとPluton対応の影響
Intelの「Core Ultra Series 2」に搭載される「Partner Security Engine」は、MicrosoftのPluton技術をサポートすることで、従来のIntel製プロセッサとは異なるセキュリティ設計を採用している。このエンジンは、CPUキャッシュやDRAMへのサイドチャネル攻撃を防ぐだけでなく、SoC内のさまざまなコンポーネント間のデータ保護にも貢献する。
特に注目すべき点は、このエンジンが独自の「Root of Trust(信頼の基点)」を持ち、「Intel Silicon Security Engine」に依存しない点である。従来のIntelプロセッサでは、ハードウェアレベルでのセキュリティ機能は主にIntel独自の仕組みで制御されていたが、今回の「Partner Security Engine」では、MicrosoftのPlutonと連携することで、セキュリティの管理方法が変化している。
さらに、このエンジンはリプレイ攻撃対策や鍵分割(Key Split)などの新機能を備えており、外部からの攻撃だけでなく、ファームウェアの改ざん防止にも寄与する。加えて、OEM向けに提供される柔軟なセキュリティ設定により、デバイスメーカーは独自のセキュリティポリシーを適用しやすくなる。
このように、「Partner Security Engine」はIntel製チップのセキュリティ基盤に新たな選択肢をもたらす技術となっている。
Plutonの普及がもたらすセキュリティとオープンソースの課題
MicrosoftのPlutonは、もともとXboxやAzure Sphereでセキュリティ向上を目的に開発され、その後、AMDプロセッサに組み込まれたことで一般PC市場にも浸透した。今回、Intelの「Core Ultra Series 2」にPluton対応が組み込まれたことで、主要なプロセッサメーカーが同技術を採用する流れが確立されたといえる。
Plutonはセキュリティ面での強化が期待される一方で、オープンソース環境との相性については懸念がある。特にLinuxコミュニティでは、Plutonがファームウェアレベルでデバイスを制御することに対する警戒感が根強い。PlutonはWindows環境向けに最適化されているため、オープンソースOSとの互換性に関する議論が今後も続くと考えられる。
また、Plutonはセキュリティの一元管理を強化することを目的としており、ハードウェアレベルでの信頼性向上が期待される。しかし、これによりユーザーの自由度が制限される可能性も否定できない。
例えば、特定のカスタムファームウェアの導入が難しくなるなど、一部の用途において制約が発生することが考えられる。IntelのPluton対応が今後どのように運用されるかによっては、セキュリティと自由度のバランスが問われることになりそうだ。
Intelのセキュリティ戦略と今後の展開
Intelは近年、ハードウェアレベルでのセキュリティ強化を重視しており、「Core Ultra Series 2」でもその傾向が顕著である。今回の「Partner Security Engine」導入とPluton対応は、そうした戦略の一環といえる。
これまでIntelは、ソフトウェアとハードウェアの連携によるセキュリティ強化を進めてきたが、Plutonの採用はこれまでの方針とは異なる側面も持つ。特に、Microsoftとの連携が深まることで、Intel独自のセキュリティ技術がどのように発展していくかが注目される。
既存の「Intel Platform Security Engine」や「Intel Management Engine」とのすみ分けについても、今後の公式発表が待たれる。また、OEM向けの柔軟なセキュリティ管理機能がどの程度カスタマイズ可能なのかも重要なポイントだ。
企業やエンドユーザーが独自のセキュリティ設定をどこまで調整できるかによって、「Partner Security Engine」の実用性が決まる。特に、カスタムファームウェアを利用する開発者や、セキュリティ重視の企業ユーザーにとっては、その自由度が大きな関心事となるだろう。
今後、IntelがPluton対応の範囲をどこまで広げるのか、またLinuxやその他のOSとの互換性をどのように確保するのかが焦点となる。「Core Ultra Series 2」を皮切りに、Intelのセキュリティアーキテクチャがどのように変化していくのか、引き続き注目していきたい。
Source:Phoronix