コールセンターの顧客サービスは、長い待ち時間や非効率なチャットボットにより、多くの不満を生んできた。Ciscoは、こうした問題を解消するために、2024年のWebexOneで新しいAIエージェントを発表した。これにより、顧客対応がより迅速かつ効率的になることが期待されている。
Ciscoの新エージェントは、AIの会話能力を活用し、従来の「硬直した」自己対応を進化させる。AIと人間が協力し合い、最適な顧客体験を提供することで、顧客満足度を向上させることを目指している。
顧客サービスの現状と課題
現代のコールセンターや顧客サービスは、多くの問題を抱えている。待ち時間が長く、顧客は対応を待つ間にフラストレーションを感じることが多い。また、既存のチャットボットは「スクリプトに沿った」対応しかできず、柔軟性に欠けているケースが多い。これにより、顧客は自己対応システムに不満を持ち、最終的には人間の担当者に頼ることが頻繁に起こる。
しかし、担当者もまた大量の問い合わせを抱え、業務負担が増している。こうした環境では、顧客情報が適切に共有されないことも多く、対応が断片的になりがちである。Ciscoの調査によると、60%の顧客体験リーダーが自己対応が機能していないと回答しており、さらに同じ割合でエージェントが過労状態にあると指摘している。テクノロジーの進歩にもかかわらず、顧客体験の向上が停滞しているのが現状である。
Ciscoの新AIエージェントの導入と特徴
Ciscoは、新しいAIエージェントの導入によって、顧客サービスの問題を根本から解決することを目指している。このAIエージェントは、単なるチャットボットではなく、人間のエージェントと協力する仮想の同僚として機能する点が特徴である。例えば、「Webex AI Agent」では会話型AIと生成型AIを組み合わせた高度な対応が可能になる。
これにより、顧客が自己対応を避ける理由として指摘される「硬直的で使いづらい」システムの欠点を克服することが期待されている。また、AI Agent Studioという設計ツールを使えば、コンタクトセンターが独自のデジタルエージェントを迅速にカスタマイズし、展開することも可能になる。この柔軟性により、問い合わせの処理時間が短縮され、顧客満足度が向上すると見込まれている。
AIと人間の協力による新たなサービス体験
CiscoのAIエージェントは、顧客と人間のエージェントをつなぐ重要な役割を果たす。たとえば、顧客がAIから人間の担当者に引き継がれる場合、AIが自動で会話の要約や背景情報を提供し、担当者が迅速に状況を把握できる仕組みが整っている。これにより、顧客が何度も同じ情報を説明する必要がなくなり、シームレスな体験を実現する。
さらに、顧客満足度(CSAT)スコアの自動計測や、会話の記録と復元が可能となるため、落ちた電話の再開もスムーズになる。加えて、エージェントの負荷を軽減するための「エージェントウェルネスプラットフォーム」も導入され、必要に応じて休憩をスケジュールしたり、対応するチャネルを自動調整することで、業務効率を最大化することができる。
責任あるAIと技術的限界への対応策
Ciscoは、AI技術の導入に際して「責任あるAI」の実現に注力している。同社はAIシステムの透明性、公平性、信頼性、セキュリティ、プライバシーに関するガイドラインを策定し、各モデルがどのように機能し、どのようなデータで訓練されたかを顧客に説明することを重視している。
また、AIがその限界を理解することも不可欠であり、不慣れなタスクへの対応を回避する仕組みが備えられている。たとえば、AIが対応できないタスクの場合は、丁寧なメッセージで顧客にその旨を伝え、IT部門など適切な部署への案内を行う。
さらに、AIが会話中に発生する突然の質問変更にも柔軟に対応できるよう、音声の自然さとリアルタイムの処理能力を向上させている。Ciscoは顧客からのフィードバックをセキュリティインシデントと同様に扱い、即時対応する体制を整えている点も、責任あるAI運用の一環として評価されている。