インテルが近く発売予定のArrow Lake CPUは、省電力性に大きな期待が寄せられているが、初期ベンチマーク結果では依然として高い電力消費が確認されている。特に、Core Ultra 9 285KはCinebench R23で370Wに達する消費電力を示しつつ、他のハイエンドCPUを凌駕するスコアを記録した。この結果は、パワーリミットを解除した際に現れるもので、通常設定ではやや抑制される見込みだ。

Arrow Lakeの省電力性への期待と現実

インテルはArrow LakeシリーズのCPUにおいて、省電力性を大々的に強調している。このシリーズは、最新のアーキテクチャを採用し、パフォーマンスと効率のバランスを取ることを目指している。しかし、初期のベンチマーク結果からは、期待されていたほどの省電力性は確認されていない。特に、パワーリミットを超えた動作では、電力消費が大きく増加することが明らかとなった。

実際、Core Ultra 9 285Kの消費電力は、Cinebench R23でのテスト中に最大370Wに達している。この数値は、通常のデスクトップ環境では過剰とされるレベルであり、省電力性を求めるユーザーにとっては懸念材料となるだろう。特に、標準的な使用環境では、インテルの目指すエネルギー効率の向上がまだ十分に実現されていないことが示唆されている。

とはいえ、パワーリミットの設定次第では、消費電力を抑えつつ高い性能を発揮する可能性がある。これにより、効率性を重視するユーザーと、最高のパフォーマンスを求めるユーザーの双方に適応できる製品となる可能性がある。

Cinebenchでの高電力消費と驚異的なスコア

Arrow LakeシリーズのCPUは、そのパワーリミットが解除された状態でのテストでは、非常に高い電力消費を示す一方、驚異的な性能を発揮している。Core Ultra 9 285KのCinebench R23でのスコアは46,289ポイントであり、これはAMDの最新Ryzen 9 9950Xの42,707ポイントを大きく上回る結果となった。

特筆すべきは、このスコアが得られた状況で、Core Ultra 9 285Kは24コアを持つに過ぎない点である。対して、Ryzen 9 9950Xは32コアを搭載しているにもかかわらず、スコアではインテルのArrow Lakeが優位に立っている。この差は、Arrow Lakeの新しいアーキテクチャとインテルの最適化技術によるものと考えられる。

ただし、この高スコアは、パワーリミットを解除した場合のみに得られるものであることに留意すべきである。標準設定でのテスト結果は若干低く、スコアは42,000ポイント強になると予想されている。これは依然として高性能ではあるが、電力消費とのバランスを考慮した数値となる。

パワーリミットを解除した場合の性能向上

Arrow LakeシリーズのCPUは、パワーリミットを解除した際に顕著な性能向上を見せることが特徴である。Core Ultra 9 285Kのベンチマーク結果からも、パワーリミット解除後に非常に高い性能を発揮することが確認されている。この結果は、主にハイエンドシステムを構築しているユーザーや、冷却性能に余裕のあるシステムを使用しているユーザーにとって朗報となる。

インテルは、Core Ultra 9 285KのパワーリミットをPL1=PL2と定義しており、通常の動作での最大消費電力は250Wに設定されている。しかし、マザーボードメーカーが提供するBIOS設定により、このリミットを解除することが可能である。リミットを解除した場合、特にマルチコアの負荷が高い作業において、劇的な性能向上が期待できる。

一方で、リミット解除による高電力消費は冷却性能に大きく依存する。冷却が不十分な環境では、システムの安定性に影響を及ぼす可能性があるため、パワーリミット解除は慎重に行うべきである。適切な冷却とパワー管理を行えば、Arrow Lakeは非常に高いパフォーマンスを提供できるプロセッサとなる。

インテルの過去の不安定性問題とArrow Lakeの未来

インテルは過去に、Core i9-13900KやCore i9-14900Kにおいて、不安定性の問題に直面してきた。これらのプロセッサでは、パワーリミットが無制限に設定された場合、システムが過熱し、長期間にわたって不安定な動作を示すことがあった。この問題は、特にハイエンドユーザーにとって深刻な懸念材料となっていた。

Arrow Lakeでは、インテルはこうした問題に対処するため、BIOS設定の適切な運用を推奨している。特に、デフォルトの設定ではパワーリミットを厳格に管理することで、消費電力と性能のバランスを最適化する方向性を示している。この方針により、Arrow Lakeは安定性を重視した運用が可能となる見込みである。

インテルが抱える課題は、性能向上と省電力性、そして安定性の三つ巴のバランスをいかにして取るかにある。Arrow Lakeシリーズは、このバランスを取るための重要な一歩となる製品であり、今後のインテルのCPU開発においても、さらなる最適化が期待されている。