AMDは静かに新しいEPYC Embedded 8004シリーズのプロセッサを発表した。このシリーズは高い効率性とパフォーマンスを求めるネットワークやストレージ、産業用エッジ環境に向けた設計となっている。特に16コアの8124Pと24コアの8224Pは、それぞれ125Wおよび180WのTDPで、電力効率とコストパフォーマンスを兼ね備えた注目の製品である。

「Zen 4c」アーキテクチャ採用のEPYC 8004シリーズとは

AMDが発表したEPYC Embedded 8004シリーズは、「Zen 4c」アーキテクチャを採用した新世代のプロセッサである。このアーキテクチャは、従来の「Zen」シリーズを基盤にしながらも、省電力かつ高効率なパフォーマンスを発揮することを目指して開発された。特に、この新シリーズはネットワークやストレージ、産業用エッジなど、高いパフォーマンスが求められる分野での使用が想定されている。

EPYC 8004シリーズのコア数は8から64までの範囲が用意されており、幅広いニーズに対応できる点が特徴である。また、DDR5メモリに対応し、最大1.152TBまでのメモリサポートが可能となっている。TDP(Thermal Design Power)は70Wから225Wの範囲で設定されており、省電力性と高性能のバランスを取った製品展開が行われている。

このシリーズは、AMDの既存プラットフォーム「Siena」に基づいており、今後さらに多様な組み込み用途での活用が期待されている。

16コア8124Pと24コア8224Pの特徴

EPYC 8004シリーズの中でも、特に注目されるのが16コアの8124Pと24コアの8224Pである。8124Pは、125WのTDPで動作し、マルチスレッドアプリケーションにおいて効率的な処理を提供する。一方、8224Pは、180WのTDPであり、より多くのコアを活用するアプリケーションに最適化されている。

8224Pは、特に「Threadripper Lite」と呼ばれる代替製品としての役割を果たす。これにより、エンタープライズ向けの高性能プロセッサとしてだけでなく、コストを抑えつつ高いパフォーマンスを必要とする用途に適している。一方、8124Pは、電力消費を抑えつつ多コア処理を実現する点で、コストパフォーマンスに優れた選択肢となっている。

また、これらのプロセッサは、非透明ブリッジ(NTB)やDRAMフラッシュなど、データ保護とシステムの信頼性を高める機能も搭載しており、データ保持が重要な環境に適している。

組み込み市場に適応した「Siena」プラットフォーム

EPYC 8004シリーズは、「Siena」と呼ばれるAMDの組み込み向けプラットフォームを基に設計されている。この「Siena」プラットフォームは、コスト効率を重視しつつ、多くのコア数を持つプロセッサを提供することに特化している。これにより、EPYC 9004シリーズに比べて低コストでありながら、より柔軟な拡張性を持つことが特徴である。

「Siena」プラットフォームは、特に接続性の強化に力を入れており、クロックスピードの向上よりも、多様なデータのやり取りを効率的に行うことを重視している。また、システムの省スペース化も実現しており、SP6ソケットを採用することで、19%の小型化を達成している。これにより、スペースが限られた環境でも十分に性能を発揮できる。

EPYC 8004シリーズは、7年間のライフサイクルサポートが提供されるため、長期間にわたって信頼性の高い運用が可能である。

システム効率とコスト効果を両立する新プロセッサ

EPYC 8004シリーズは、システム効率とコスト効果を両立するために設計された。特に、データセンターや産業用のエッジコンピューティングなど、厳しいコスト制約のある環境において、その性能が最大限に発揮される。8224Pや8124Pのようなモデルは、TDPとコア数のバランスが取れており、パフォーマンスとコストの両方に優れた選択肢を提供する。

また、このシリーズはYoctoフレームワークにも対応しており、Linuxベースのシステムでのカスタマイズが可能である。これにより、組み込みシステムにおいても、柔軟で効率的なソリューションが実現できる。組み込み市場においては、特に電力消費が課題となるケースが多いため、EPYC 8004シリーズの省電力性がその強みとなる。

コストを抑えながらも、拡張性と効率性を高めたこのシリーズは、AMDが組み込み市場でさらなるシェア拡大を狙う重要な一歩である。