Appleがサプライズ発表したiPad mini 7は、期待されていたアップグレードが含まれている一方で、一部の仕様がユーザーにとっては少し物足りないかもしれない。最新のA17 Proチップを搭載しているものの、iPhone 15 Proに比べると若干の性能ダウングレードが見られる。

また、60Hzのリフレッシュレートのディスプレイが引き続き採用され、120HzのProMotionを期待していたユーザーにとっては少々残念な点となっている。その一方で、eSIMの導入やUSB-Cケーブルの改善など、小型タブレットとしては依然魅力的な選択肢であることは間違いない。

ダウングレードされたA17 Proチップ

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iPad mini 7は、A17 Proチップを搭載しており、これは前モデルと比べて確実に性能が向上している。しかし、このA17 ProはiPhone 15 Proに搭載されたものとは完全に同一ではない。iPhone 15 Proには6コアのGPUが搭載されているが、iPad mini 7は5コアのGPUにとどまっている。

この違いが実際の使用感にどれほど影響を与えるかは微妙なところだが、より長期間の利用を考えると、最新のA18やA18 Proチップを搭載していたほうが未来への対応力が高まったはずだ。特に、グラフィック性能を重視するユーザーや最新のゲームやアプリを快適に使いたい層には、やや物足りなさを感じさせる仕様である。

また、Appleは以前にもiPad Air M2で同様のコア数ダウンを行っており、これはコスト抑制や製品ラインアップの差別化の一環だと考えられる。性能向上はあるものの、よりハイエンドのiPadモデルとの差別化が明確に残されている点は否めない。

60Hzディスプレイへの失望

iPad mini 7のディスプレイは、リフレッシュレートが60Hzのままであり、これは一部ユーザーにとっては失望を招くポイントである。特に、一部のリーク情報では120HzのProMotionディスプレイが搭載されるとの噂があったため、期待外れと感じるユーザーも少なくない。

リフレッシュレートが60Hzの場合、スクロールやアニメーションの滑らかさに若干の違和感を覚えることがある。120HzのProMotion技術は、よりスムーズな動作を実現するため、高性能なディスプレイを求めるユーザーにとっては重要な要素であった。特にクリエイティブな作業やゲーミング用途では、その差が顕著に現れることがある。

また、前モデルのiPad mini 6では、縦向きでの「ゼリースクロール」問題が指摘されており、今回のモデルでこの問題が解消されているかどうかも注目点である。Appleは、この現象を液晶スクリーンの「通常の動作」と説明しているが、引き続きユーザーの関心を集める問題となりそうだ。

Touch IDの継続とFace IDの欠如

iPad mini 7は、前モデルと同様にTouch IDを採用している。これは一部のユーザーにとって歓迎される一方、最新のiPad ProやiPhoneのようにFace IDへのアップグレードを期待していた層には物足りなさを感じさせる要素である。

Touch IDは、指紋認証でロック解除やApple Payの決済を行う技術であり、セキュリティ面では十分な機能を提供する。しかし、顔認証であるFace IDが一般化している現在、タブレットにおいてもより直感的な認証方法が求められる傾向にある。特にiPhoneでFace IDを使用しているユーザーにとっては、Touch IDに戻ることが煩わしく感じられることがある。

ただし、Face IDはiPhoneに比べてiPadでは動作がやや鈍く感じられるという声もあり、Touch IDを好むユーザーも一定数存在する。特に、横向きや特定の角度での利用が多いタブレットでは、指紋認証の方が利便性が高いと感じるケースもあるだろう。Face IDの欠如はデメリットと感じるかどうかは、利用者の好みによるところが大きい。

物理SIMスロットの消滅とeSIMの導入

iPad mini 7では、物理SIMスロットが廃止され、代わりにeSIMのみがサポートされる仕様となっている。これは、今年発売された他のiPadモデルでも採用された変化であり、Appleが物理SIMカードからの脱却を進めている兆候である。

eSIMは、デバイスに内蔵されたデジタルSIMで、物理的なカードを必要とせず、ソフトウェア上で携帯電話ネットワークに接続することができる。これにより、物理SIMカードの入れ替えを必要とせず、より簡単にプロバイダーの切り替えや複数回線の管理が可能になる。

ただし、物理SIMに慣れ親しんだユーザーにとっては、eSIMのみの仕様はやや不便に感じられるかもしれない。特に、複数のデバイス間でSIMカードを頻繁に入れ替えて使用するユーザーや、eSIM対応のプロバイダーが限られている地域では、依然として物理SIMの方が利便性が高いケースもある。また、eSIMの移行プロセスが煩雑な場合、ユーザーのフラストレーションを招く可能性も否定できない。