AMDがCES 2025で発表した新世代アップスケーリング技術「FSR 4」は、最新の「RX 9070シリーズ」GPU専用であることが判明した。この技術は、AIを活用してゲームのグラフィックス向上とモバイル機器のバッテリー持続性向上を目指しているが、従来の幅広い互換性は失われた。
現時点で対応するのは「RX 9070」と「RX 9070 XT」のみで、サポートされるゲームには「Black Ops 6」も含まれる可能性が示唆されている。AMDは技術革新によりゲーム体験を向上させるが、古いハードウェアの利用者には厳しい現実が待っている。
AMDの新GPUに求められる互換性とその狙い
AMDがCES 2025で発表した「FSR 4」は、「RX 9070シリーズ」に限定されることで、従来の「FSR」シリーズの幅広い互換性を大きく見直した点が際立つ。これまで「FSR」技術はAMD以外のGPUでも使用できることで高い評価を得ていたが、新バージョンではその柔軟性が失われた。
この背景には、新世代GPUの性能を最大限に引き出すことを目的とした最適化があると考えられる。AMDは公式スライドで、「FSR 4はRX 9070グラフィックスカードでのみ最大のパフォーマンスを発揮する」と説明しており、技術的には「AIによるリアルタイム処理の向上」が特徴である。
これは、高負荷な処理を効率化することでフレームレートを安定させるが、従来GPUの処理能力では十分な効果が得られないためと見られる。このような専用化により、高品質なビジュアル体験を提供する一方で、互換性を犠牲にする選択がなされたことは、ゲーム市場のユーザー層に明確な影響を及ぼすだろう。
AI技術の進化がもたらす新たなゲーム体験
FSR 4において注目すべき点は、従来のバージョンよりも高度なAI処理が実装された点である。AMDは以前から「AIの導入によって従来の描画性能を劇的に改善する」と述べていたが、今回の技術発表はその方向性を具体化したものだ。
特に、「RX 9070 XT」の高性能コアにより、AIがリアルタイムで画面上のピクセル情報を解析し、ノイズ除去やディテール補完を実行する。これにより、プレイヤーはより滑らかで臨場感のある映像を体験できる。また、AMDは「Steam Deckのような携帯型デバイスにおけるバッテリー寿命向上にも寄与する」としており、GPUにかかる負担を軽減しつつ、消費電力を抑える技術としても注目されている。
しかし、現行モデルでは対応が難しいため、今後、ポータブル機器向けの新しいGPU開発が期待される。このような進化は、ゲームプレイ時の没入感を新たなレベルへと引き上げるが、次世代GPUを購入しなければ体感できないという現実もある。
最新技術導入に伴う市場の課題
新たな技術革新が歓迎される一方で、市場全体にとっては課題も残されている。「RX 9070シリーズ」のようなハイエンドモデルの価格は高額になることが予想され、多くのユーザーにとっては負担となり得る。特に、既存の「RX 6000」や「RX 7000」シリーズを使用しているユーザー層が新GPUに乗り換えるには慎重な検討が必要だろう。
さらに、AMDが示唆した「Black Ops 6」でのFSR 4対応が本格化する場合、同様の最新技術を他タイトルでも求められることは確実である。しかし、すべてのゲームが迅速にFSR 4に対応できるわけではないため、技術導入のスピード感とゲーム開発企業との連携も重要な課題となるだろう。これにより、AMDは単なる技術提供にとどまらず、市場全体のバランスをどのように調整するかが問われる状況となる。
AMDが技術革新を続ける中で、GPU市場全体の競争は一段と激化しており、ユーザーが選択する基準も変わりつつある。企業の発表と市場の反応を注視し、技術の恩恵を享受できる環境が整うかどうかが今後の焦点となる。