Intelの新世代モバイルSoC「Lunar Lake」とAMDの「Strix Point」の性能が、Linux環境で比較された。特に注目されたのは、ACPIプロファイルによるパフォーマンスと電力効率の違いである。この記事では、最新のLinuxカーネルを使用したベンチマーク結果を基に、Lunar Lakeの現状と今後の改善可能性を探る。

Lunar LakeとStrix PointのACPIプロファイルによる性能差

IntelのLunar LakeとAMDのStrix Pointは、ACPIプロファイルによる性能変動が大きな注目を集めている。ACPIプロファイルは、システムの電力とパフォーマンスのバランスを制御する機能であり、特にモバイルデバイスにおいて重要な役割を果たす。Lunar LakeとStrix Pointの比較では、パフォーマンス向けの設定と省電力向けの設定で大きな違いが現れた。

Lunar Lakeでは、パフォーマンスモードでピーク性能が向上するものの、消費電力が大きく増加する。一方、Strix Pointはバランス型プロファイルでも高い性能を維持しながら、より効率的に電力を抑えることができる点で優れていた。特に、Ryzen AI 300シリーズが持つZen 5 CPUコアがマルチスレッド性能においてLunar Lakeを上回っている。これにより、クリエイターやプログラマーにとっては、Strix Pointがより魅力的な選択肢となるだろう。

また、電力節約モードでは、Strix PointがLunar Lakeよりも効率的であることが確認された。これは、特にバッテリー駆動のモバイルデバイスでは、ユーザーにとって大きな利点となる。結果として、ACPIプロファイルにおける性能と電力効率のバランスにおいて、AMDのStrix Pointが優勢であることが示された。

Xe2グラフィックス性能の問題とその解決策

IntelのLunar Lakeに搭載されたXe2グラフィックスは、Linux環境において期待を下回る性能を示した。特に、ASUS Zenbook S 14でのベンチマークでは、前世代のMeteor Lakeグラフィックスよりも遅く、AMDのRDNA3.5グラフィックスには太刀打ちできない結果となった。この問題の原因は、Linux上で「Whisper」モードが標準動作として維持されることにある。

「Whisper」モードは、Windows 11ではASUSのソフトウェアによって「Standard」モードに自動的に切り替わる。しかし、Linuxではこの切り替えが行われず、約5ワットの消費電力差が発生している。Intelはこの問題を認識しており、現在ASUSと協力してドライバの修正に取り組んでいる。これにより、Linux上でも「Standard」モードでの動作が可能となり、性能改善が期待されている。

一方、Xe2グラフィックスのOpenCL性能についても問題が報告されている。Intelはこの点に関しても別途修正を行う予定であり、近い将来のパッチで解決される見込みである。これらの対応が完了すれば、Lunar Lakeのグラフィックス性能はWindows環境に近づくことが期待されているが、現時点ではAMDのグラフィックスが優勢である。

CPU性能比較:シングルスレッド vs マルチスレッド

Lunar LakeとStrix PointのCPU性能をシングルスレッドとマルチスレッドの観点で比較すると、用途によって優劣が分かれる。Lunar LakeのCore Ultra 7は、シングルスレッドの作業において非常に優れたパフォーマンスを発揮しており、単一のタスクを高速に処理する場面では効果的である。特に、軽量なプログラムやWebブラウジングなどの一般的な用途では、高い応答性を示す。

一方で、マルチスレッドの作業、特にクリエイティブなプロジェクトやプログラミングといった負荷の高いタスクでは、AMDのRyzen AI 9 365がLunar Lakeを上回るパフォーマンスを発揮している。Zen 5 CPUコアを搭載するRyzen AI 300シリーズは、複数のスレッドを効率的に処理する能力に優れており、マルチタスク環境での優位性を持つ。この違いは、特にコンテンツ制作や開発環境において重要な要素となる。

そのため、ユーザーが求める用途によって、最適な選択が異なる。シングルスレッド性能を重視するユーザーにとってはLunar Lakeが優れた選択肢となるが、マルチスレッドでのパフォーマンスを最大化したい場合にはStrix Pointが適している。

Linux環境での将来的なパフォーマンス改善の見通し

現在、Lunar LakeのLinux環境での性能にはいくつかの課題が残されているが、Intelは今後の改善に向けて積極的に対応を進めている。特に、Xe2グラフィックスの「Whisper」モードの問題が解決されれば、グラフィックス性能は大幅に向上する可能性がある。また、OpenCL性能の修正が完了すれば、クリエイティブな作業におけるLunar Lakeの実用性も高まるだろう。

一方、AMDのStrix Pointも今後さらなる性能向上が期待されている。AMDは、Ryzen AI 300シリーズのLinux対応においても積極的な姿勢を示しており、最新のカーネルやドライバ更新を通じて性能を最大化するための取り組みを進めている。現時点では、Linux環境でのパフォーマンスにおいてStrix Pointが優位に立っているが、Lunar Lakeも今後の改善によりその差を縮めることが予想される。

Linuxユーザーにとっては、これらの改善がどの程度実現されるかが注目点であり、今後のアップデートによって選択肢が変わる可能性が高い。