2024年10月、モントリオールで開催されたX.Org Developer’s Conference(XDC2024)にて、オープンソースのRadeon「RADV」VulkanドライバがWindows 11上で動作するデモが披露された。

この試みは、CollaboraのFaith Ekstrand氏によるもので、AMDのWindows Driver Display Model 2(WDDM2)のリバースエンジニアリングを活用して実現された。実験は成功したものの、ドライバの完全な動作には多くの課題が残されている。

ゲーム開発者向けに強力なデバッグツールとして期待されるRADVだが、Windows上での公式リリースはまだ未定である。

XDC2024で披露されたRADVのWindows対応

2024年10月にモントリオールで開催されたX.Org Developer’s Conference(XDC2024)にて、オープンソースのRadeon「RADV」VulkanドライバがWindows 11上で動作するという驚きのデモンストレーションが行われた。このデモは、CollaboraのFaith Ekstrand氏が進めてきたプロジェクトの成果であり、RADVをWindowsで動作させるという挑戦的な試みが披露された。

RADVは本来Linux上での動作を前提に開発されてきたVulkanドライバであり、Windows上での運用はこれまで考えられていなかった。しかし、Ekstrand氏はAMDのWindows Driver Display Model 2(WDDM2)をリバースエンジニアリングし、Windows Subsystem for Linux(WSL2)などの技術を活用することで、このドライバをWindowsに移植することに成功した。

この発表により、オープンソースコミュニティは新たな可能性を手に入れた。特にゲーム開発者にとって、RADVのWindows対応は大きな利点となり得ると期待されている。

Windows上でRADVを実現するための技術的挑戦

WindowsでのRADV動作は、簡単に実現できるものではなかった。Faith Ekstrand氏は、AMDのWindows Driver Display Model 2(WDDM2)の公開ドキュメントを活用しつつ、多くの部分でリバースエンジニアリングを行い、Windows Subsystem for Linux(WSL2)や他のWSLコンポーネントを駆使して、この複雑な移植を実現した。

AMDのプロプライエタリなカーネルドライバとRADVが連携するためには、様々な技術的な障害が存在した。特に、ドライバ間の互換性やVulkan APIの実装部分での不安定さが問題となった。Ekstrand氏は、これらの課題に挑戦し、現段階では動作が可能な状態までたどり着いているが、全ての機能が完全に動作するわけではないと述べている。

例えば、Vulkanの標準テストスイートであるCTSを実行すると、5分間ほどは動作するものの、その後は不安定になる状況が続いている。これらの技術的な挑戦は、今後のRADVの改善において重要な課題となるだろう。

RADVが提供する利点と課題

RADVがWindows上で動作することにより、ゲーム開発者やグラフィックエンジニアにとって新たな選択肢が広がることになる。Ekstrand氏によれば、RADVはAMDの公式Vulkanドライバよりも多くの機能を提供し、パフォーマンスも優れているという。そのため、特にオープンソースのメリットを活かしたデバッグ機能は、ゲーム開発者にとって有用であると考えられている。

しかしながら、課題も多い。まず、AMDがこのドライバの開発に公式に関与していないため、プロプライエタリなカーネルドライバとの連携が不安定な部分がある。さらに、リバースエンジニアリングに基づく部分が多いため、今後のサポートやアップデートに関しては不透明な部分も残されている。

これらの問題を解決しつつ、RADVがより安定したドライバとしてWindowsで普及するためには、技術的な改良とともに、コミュニティの支援が不可欠である。

今後のRADVの展望とAMDの動向

現時点では、AMDがRADVをWindows向けに公式にサポートする計画はない。Faith Ekstrand氏の取り組みはあくまで実験的なものであり、正式なリリースやサポートの見通しは立っていない。それでも、この試みが成功したことで、今後の可能性が大きく広がることは間違いない。

AMDがRADVをWindows上で公式に採用する場合、ドライバの安定性やライセンスに関する問題がクリアされる必要がある。また、現時点での実装は一部の機能に制限があり、完全なVulkanサポートを実現するためにはさらなる技術的な開発が求められる。

一方で、RADVがLinuxだけでなくWindowsでも使用できるようになることで、オープンソースドライバの利用が広がる可能性がある。ゲーム開発者にとっては、クロスプラットフォームでの開発が容易になると同時に、デバッグ機能の向上が期待される。今後のAMDの動向とRADVの発展が注目される。