Androidのオートフィル機能は、パスワードマネージャーを使いやすくするために導入されたが、現実には多くの不満が寄せられている。
アプリ間での互換性の問題や、Google Chromeとの衝突によって、ユーザーはスムーズにログインできず、ストレスを感じることが多い。
AppleのiOSと比較しても、Androidのオートフィル体験は依然として不安定であり、改善の余地が残されている。

オートフィル機能の誕生とその意図

Androidのオートフィル機能は、Android 8.0(Oreo)で初めて導入された。パスワードマネージャーの利便性を向上させることを目的としており、ユーザー名やパスワードの入力を自動化することで、セキュリティの強化と利便性の両立を図っている。この機能は、ウェブサイトやアプリにおけるログインをよりスムーズに行うために設計されており、GoogleのキーボードアプリであるGboardと連携して、より直感的にパスワードを入力できるようになっている。

しかし、オートフィル機能はその導入当初から一部のユーザーにとっては不安定な存在であった。特に、異なるパスワードマネージャーを使用する際に、その互換性が問題視されている。多くのユーザーは、パスワードがうまく入力されない、またはログイン情報が正しく保存されないといった不具合に悩まされている。オートフィル機能が本来持つ「便利さ」が実現されていない現状がある。

この機能が広く普及した今もなお、Androidにおけるオートフィルの運用は改善の余地が残されており、より安定した動作が求められている。

アプリによって異なるオートフィルの互換性

オートフィル機能の問題点として、アプリごとにその互換性が異なることが挙げられる。一部のアプリでは、ユーザー名とパスワードの入力画面が一体化しているため、オートフィルがスムーズに動作する。しかし、複数の画面に分かれたログインシステムを持つアプリでは、オートフィルが正しく動作しないことが多い。

例えば、Twitter/Xのように二要素認証を導入しているアプリでは、オートフィル機能が一部しか機能しない。ユーザー名の入力はスムーズに行えるが、パスワードや二要素認証コードの入力は手動で行う必要がある。このような手間が増えることで、パスワードマネージャーの利便性が大幅に損なわれる結果となっている。

さらに、Disney+のような一部のアプリでは、そもそもオートフィル機能が無効化されており、全く使えないという問題がある。このようなアプリ側の仕様が、オートフィル機能の利用を妨げており、ユーザーの不満を引き起こしている。オートフィルの一貫性の欠如は、Androidが抱える大きな課題である。

Google Chromeとの衝突―パスワードマネージャーをめぐる問題

Androidのオートフィル機能のもう一つの問題は、Google Chromeとの衝突である。Google Chromeは独自のパスワード管理システムを持っており、これがユーザーが選択したパスワードマネージャーの動作を妨げることがある。Chromeは、デフォルトでGoogleのパスワードマネージャーを優先するため、他のパスワードマネージャーが正しく動作しない場合がある。

具体的には、Googleのパスワードサービスが優先され、1PasswordやLastPassといったサードパーティ製のパスワードマネージャーを利用する際に、スムーズにログインできないことがある。この問題は、Chromeがオートフィルの設定をユーザーが変更できるようにしていない点に起因しており、ユーザーにとって大きな不便を引き起こしている。

さらに、Google ChromeはAndroidシステム全体に影響を与えており、他のブラウザやアプリと連携している場合でも、Chromeが優先される傾向にある。このため、パスワードマネージャーの利用が一層複雑化し、オートフィル機能の効果が発揮されない状況が続いている。

iOSに学ぶべきポイントとGoogleの今後の展望

iOSと比較すると、Androidのオートフィル機能は非常に不安定である。AppleのiOSでは、パスワードマネージャーの利用が非常にシンプルで直感的であり、ユーザーはログイン画面に到達する前にパスワードが自動的に入力されることが多い。これは、iOSがユーザーの利便性を第一に考え、アプリケーションとパスワードマネージャーの統合をスムーズに行っているためである。

一方、Androidでは、パスワードマネージャーが適切に機能しない場合が多く、ユーザーは手動でパスワードを入力せざるを得ない状況が発生している。この点で、GoogleはiOSのようなシンプルかつ一貫した体験を提供する必要がある。特に、パスワードマネージャーの呼び出しやオートフィルの動作に関して、ユーザーが一度のタップで操作を完了できるような仕組みが求められている。

Googleは今後、パスワードマネージャーに代わる「パスキー」技術に注力しているが、現状のオートフィル機能の不備を放置している限り、ユーザーの不満は続くであろう。iOSから学び、オートフィルの改善を図ることが、Androidにとって急務である。