サムスンが開発中の「Project Moohan」とされるAndroid XRヘッドセットは、AppleのVision Proと同等、もしくはそれ以上の価格になる可能性が浮上している。搭載される1.3インチの「OLEDOS」パネルは3,800 PPIの超高密度ディスプレイで、Apple Vision Proの3,400 PPIを上回る。この高精細なディスプレイはソニーが製造しており、2023年に発表された4K OLEDパネルの価格が1,000ドルを超えていたことから、ヘッドセット全体のコストが跳ね上がると予想される。

サムスンの「Project Moohan」 高精細ディスプレイが示す新たな可能性

サムスンのAndroid XRヘッドセット「Project Moohan」には、1.3インチの「OLEDOS(OLED on Silicon)」パネルが採用されると報じられている。このパネルの画素密度は3,800 PPIで、Apple Vision Proの3,400 PPIを上回る。この数値は、一般的なVRヘッドセットのディスプレイ技術と比較しても圧倒的に高く、没入感の向上が期待される。

現行のMeta Quest 3は1,200 PPIとされており、サムスンのXRヘッドセットがどれほどの精細な映像を提供するかがわかる。一方で、高密度ディスプレイは生産コストを押し上げる要因にもなり、これが製品価格にどのように反映されるかが焦点となる。Vision Proが3,500ドルで販売されていることを考えると、サムスンのヘッドセットもそれに匹敵する価格になる可能性がある。

高密度ディスプレイがもたらすのは単なる解像度の向上だけではない。XR体験において、ピクセルの粒状感が少なくなれば、より自然な映像表現が可能になる。しかし、それに伴い発熱や消費電力の問題が生じる可能性もある。現時点では詳細なスペックは明らかになっていないが、こうした課題にどう対処するかがサムスンにとっての重要なポイントとなるだろう。

Google AI「Gemini」搭載がもたらす新たな体験

サムスンのXRヘッドセットには、GoogleのAI「Gemini」が統合されると報じられている。これは単なる音声アシスタントではなく、ヘッドセットの外部カメラを活用し、ユーザーが見ている環境を認識してリアルタイムで情報を提供する仕組みを備えている。

YouTuber Marques Brownlee(MKBHD)が公開したデモ映像では、ユーザーがある写真をヘッドセットに見せると、Googleマップが自動的に開き、該当する場所の衛星画像を表示する機能が紹介された。このように、視界に入る情報を即座に解析し、関連するデータを提示できる点は、従来のXRデバイスにはない新しい体験をもたらす可能性がある。

ただし、この機能がどこまで実用的なのかは未知数だ。視覚認識AIは急速に進化しているものの、正確な情報を提供できるかどうかは利用環境に左右される。Geminiがどの程度の精度でユーザーの視界を認識し、適切な情報を提示できるのか、実際の使用感が気になるところだ。また、AI機能の活用が増えることで、プライバシーやデータ管理の面での課題が浮上する可能性もある。

高価格帯XRデバイスの未来 市場の受け入れはどうなるか

Vision Proの3,500ドルという価格が市場に与えた影響は大きい。Appleは「空間コンピューター」という新たなカテゴリを提案したが、高額な価格設定のため、一般消費者の手に届きにくい状況が続いている。これを踏まえると、サムスンのXRヘッドセットが同様の価格帯で発売された場合、消費者にどれほど受け入れられるかが課題となる。

現在、Metaの500ドルのQuest 3や、300ドルのQuest 3sといった製品が市場を席巻している。これらは手頃な価格と十分な性能を兼ね備え、多くのユーザーに支持されている。一方、Vision Proのような超高額なXRデバイスは、発売当初の注目度は高かったものの、販売は低迷し、生産規模の縮小が報じられている。

サムスンのヘッドセットは高性能なディスプレイやAI統合などの新技術を武器にしているが、それが価格に見合う価値を生み出せるかは未知数だ。高額なXRデバイスが市場で定着するには、ゲームやエンターテインメント用途だけでなく、より実用的なシナリオでの活用が求められる。サムスンがどのような差別化を図るのか、今後の展開が注目される。

Source:Gizmodo